Revonic™テクノロジーを採用したShureの新しいボーカル用ダイナミック・マイク、Nexadyne™。その特徴をつまびらかにするとともに、既に導入しているエンジニアの生の声を伝える配信イベントが過日行われた。ここではその模様をレポート。下の動画でもご覧いただきたい。
イベントの動画はこちらからでご覧いただけます
2つのエンジンを備えたRevonic™
Nexadyne™は、1つのトランスデューサーの中に2つのダイアフラムを備えるShureの特許技術Revonic™テクノロジーを採用した全く新しいダイナミック・マイク。イベントの冒頭、Shure本社でNexadyne™をはじめとする数々のマイクを生み出してきたジョン・ボーン氏からのビデオ・メッセージが紹介された。
「SM58などで使用されているUnidyne™は2つのマイク・エレメントを組み合わせることなく、指向性の問題を解決した世界初の単一指向性ダイナミック・マイクですが、私たちはその理念を受け継ぎ、今日の世界にどのように技術を適用できるかを考えました。そして、私たちが持っている先進的な製造技術を駆使し、約3年間をかけてRevonic™テクノロジーを開発しました」
開発段階では数百もの試作品を製作。製造方法の検討を経て、発売前に世界中のステージで実際に使われていたという。
「Nexadyne™をすぐに使った人々は、以前はステージでのパフォーマンスで得られなかった“明瞭さ”をすぐに実感しました。エンジニアは、Nexadyne™を使用することで、EQやプロセッシングの時間が低減でき、アーティストの声が前面に立つようなミックスに集中できるようになったのです」
続いて、シュア・ジャパンの田中真梨恵氏による、Nexadyne™の特長解説が行われた。まずはもちろんRevonic™テクノロジーだ。
「2つのエンジンを備えることで、カートリッジ空間内でのチューニングが行いやすくなるのがRevonic™の特長です。周波数や指向性パターンをコントロールすることで、最低限のEQで非常にクリアな、ボーカルのサウンドに忠実な音が得られます。上下のエンジンのうち、上では明瞭度を得るとともに、下ではアコースティック・レスポンスをさらに管理して、ハンドリング・ノイズのような不要な音をキャンセルしています」
そのほか軽量な設計や、ソフト・シェルの新しいマイク・ケースが付属する点などがNexadyne™のポイントとして挙げられた。
フェーダー操作なしでも声が届く明瞭度
イベントのメインとして、ゲストにPAエンジニアの山寺紀康氏を招いてお話を伺った。尚美学園大学教授でもある氏は、サンレコでのレビューをきっかけにNexadyne™ 8/C(カーディオイド)を2本購入し、既に使用している。
「第一印象は、先程田中さんがおっしゃった軽さ。Nexadyne™ 8/Cは258gで、330gのSM58と比べてかなり軽量だという印象でした。もしかして音も軽いのかと思ったのですが、“ただ軽い”のではなくて、”すっきりしている”という言い方が当てはまるのかなと。バンド演奏も含め、さまざまなテストをしている中で、エンジニア志望の学が、“このマイク、声を迎えに来てもらっているような気がします”という感想を言っていました」
“声を迎えに来る”とはどういうことだろうか? さまざまなマイクを交換しながらテストする中で、その真意がつかめたと山寺氏。
「特に女性ボーカルの場合、Aメロでは声を抑えますし、音程も低いので、伴奏に潜ってしまうことがあります。そしてサビになると声も大きく出てパキッと張りがあることがあります。ですので、Aメロでフェーダー操作をしながら、コンプで飛び出た部分を抑えることが多いのですが、Nexadyne™ではそれを何もしなくて済んだ、というのが非常に特徴的でした。先ほど“すっきり”という言い方をしましたけれども、それが明瞭度なのだと気づきました。つまり大きな声を出さなくても言葉がはっきり見えてくるのです」
オフマイクでもオンマイクでも追従
そしてボーカル・マイク選びのポイントを山寺氏はこう語る。
「マイクと声との相性の難しさは、良いマイクが万人に合うとも限らないということ。SM58の方がNexadyne™より合うという方もいらっしゃると思います。ただ、SM58で中低域がはっきりしないと気になる場合があるのですが、Nexadyne™にはそういうことがなかったんですね。だから常にはっきりした音がする。ボーカリストが楽になるのはエンジニアにとって最も重要です。最初に試すマイクとしてSM58を使うことが多いですが、最近はNexadyne™がその次に試すマイクに、あるいは最初の一本になっています」
その後はShureへの質問コーナーへ。Nexadyne™のグリルとポップガードが取り外して清掃可能なことが紹介されたほか、KSM8に採用された一つのエンジン内に2つのダイアフラムを持つ技術Dualdyne™とRevonic™の違いなどが語られた。KSM8も所有している山寺氏は、最後にこう語った。
「KSM8はオフマイクでもついてくる感じがありますが、Nexadyne™はそのオフマイクでもついてくる感じがありつつ、オンマイクでも追従してくれる。先程言った“声を迎えに来てくれるマイク”というのが当てはまる一本だと思います」
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サウンドクルースタジオ(平和島)
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