名古屋Zephyr Hallで日本初導入!JBL PROFESSIONAL SRX910LAパワード・ラインアレイ徹底レポート

Zephyr Hallのホール全景。キャパシティは700人前後。アイドルのライブを中心に、連日熱狂を生み出している

Zephyr Hallのホール全景。キャパシティは700人前後。アイドルのライブを中心に、連日熱狂を生み出している

2023年7月1日、名古屋市にオープンしたライブ・ハウスZephyr Hall。700人前後を収容する同ホールは、メイン・スピーカーにJBL PROFESSIONALのパワード・ラインアレイSRX910LAを採用。SRX910LAは2023年1月に発売されたモデルで、日本のライブ・ハウスに導入されるのは同店が初となった。

写真 • 安田典謙(※を除く)、小原啓樹(※)

Zephyr Hallに設置されたSRX910LAとサブウーファーSRX928S。店長の中山智皓氏曰く「お客さんがいない状態とパンパンに入った状態で比べると音が吸われているのは分かりますがサウンドにそこまでの違いがない。本番中も、客席やブースなど違う場所で音を聴きますが聴こえ方の差があまりないという印象です」とのこと

Zephyr Hallに設置されたSRX910LAとサブウーファーSRX928S。店長の中山智皓氏曰く「お客さんがいない状態とパンパンに入った状態で比べると音が吸われているのは分かりますがサウンドにそこまでの違いがない。本番中も、客席やブースなど違う場所で音を聴きますが聴こえ方の差があまりないという印象です」とのこと

店のコンセプトとスピーカー選び

 Zephyr Hallのオープンにあたって機材の選定を行ったのは、音響/照明のエンジニアリングを手掛ける株式会社00worksの星野幸一氏。星野氏はPAエンジニアとしてさまざまなライブ・ハウスやホールでの音響オペレートを行っており、その知見を生かす形で選定に臨んだ。

 「最初にご相談いただいたときにお店のコンセプトはしっかり決まっていて、アイドルのライブを中心にやっていくとのことでした。アイドルのライブはバンドのライブと違ってオケを鳴らすケースがほとんどですので、いかに音源を忠実に再現するかが大事になってきます。そして、一口にアイドルと言っても音楽ジャンルはさまざまです。アニソンからロック、ヘビメタまで幅広い。そういった幅広さに対応できるオールラウンドさも求められます」

取材にご協力いただいた00worksの代表取締役肥田氏(左)と、エンジニアの星野幸一氏(※)

取材にご協力いただいた00worksの代表取締役肥田氏(左)と、エンジニアの星野幸一氏(※)

 星野氏の頭にJBL PROFESSIONALの文字が浮かんだ。

 「いろいろなライブ・ハウスで仕事をさせていただく中で、JBL PROFESSIONALのスピーカーは多くの店で使用されスタンダードとして根付いている印象を持っていて、求められているものに合うだろうと考えました。ちょうどSRX910LAが発表されたタイミングで、早速検討を始めたところ、近いスペックのラインアレイの中で飛び抜けてコストパフォーマンスが良かったことも決定の大きな要因になりました」

 SRX910LAのドライバー構成は10インチ・ウーファー×2に3インチ・ツィーター×1。周波数レンジは53Hz~19kHz、最大音圧レベルは135dB SPL。880Wのパワー・アンプを内蔵しながらも716×305×519mmとコンパクトで、質量も26.7kgに抑えられている。Zephyr Hallにはステージの左右にSRX910LAを4台ずつ、加えて18インチ×2のサブウーファーSRX928Sを2台ずつスタックしている。SRX928Sは2,500Wのパワー・アンプを内蔵し、最大音圧レベルは140dB SPLだ。

ステージの左右にSRX910LAを4台ずつ設置。天井の高さと強度を考慮し、スタックが選ばれた

ステージの左右にSRX910LAを4台ずつ設置。天井の高さと強度を考慮し、スタックが選ばれた

SRX910LAのリア。パワードをチョイスしたことで別途パワー・アンプを用意する必要がなくなり、スペースと運用の面でアドバンテージとなっている

SRX910LAのリア。パワードをチョイスしたことで別途パワー・アンプを用意する必要がなくなり、スペースと運用の面でアドバンテージとなっている

サブウーファーはステージの左右にSRX928Sを2台ずつ設置。ふくよかな低域が豊かなライブ体験につながる

サブウーファーはステージの左右にSRX928Sを2台ずつ設置。ふくよかな低域が豊かなライブ体験につながる

 「天井の高さと強度の都合でフライングよりもスタックの方が良いと考えスタックにしました。コンパクトなのでスタックしてもスペースが小さくて済むのは助かります。サブウーファーは、低域をふくよかな音で聴かせてあげたいという思いでこの構成にしました。SRX910LAを含めキャパシティに対して余裕のある構成ですが、それも考えがあってのことです。というのも、トラブルの原因の多くが容量ギリギリの運用なんですよね。余裕のないシステムだと、例えばお客さんがたくさん入って音を大きくしたいときに負荷がかかりすぎてしまうのです。その点も考慮して余裕のある構成を勧めさせていただきました」

パワードのメリット

 SRX910LAは、パワードであることもZephyr Hallのコンセプトに合っていた。

 「アイドルは複数人のグループが多く、中にはかなり大人数のグループもあります。ライブ・イベントで何組かが出演する際には人の数が増えますので、ライブ・ハウスとしてはできるだけ楽屋やメイク・ルームにスペースを取りたい。そういう意味でも、アンプ・ラックを置くスペースを作らなくてもよいパワードはメリットが大きいですね」

 パワードのメリットについて00worksの代表者である肥田高志氏が続ける。

 「パワー・アンプが別になると、電源ケーブルやスピーカー・ケーブルなどで接触部分が増えるため、故障を防ぐためにケアしなければならない箇所も多くなる。そういった意味でも運用は楽になると思います」

 音の印象について星野氏に聞いたところ「JBL PROFESSIONALの上位モデルにあたるVTX Aシリーズの音が明瞭で好きなのですが、イメージが近いと思います」とのこと。

 「検討を始める前はパワードの音に懐疑的なところもあったのですが、払拭されました。パワード・スピーカーの進化を感じましたね」

 Zephyr Hallのエンジニアである佐々木翔悟氏は「音がとてもきれいなことに驚いた」と言う。

 「音の分離がとても細かくて、音源の中のドラム、ベース、ギターの音が1つ1つしっかり聴こえてきます。乗り込みのエンジニアさんにも出音の反応が良いと好評です。元のサウンドが良いのでEQもそこまで使わないそうですが、EQやコンプをいじったときにはしっかり変化が分かるのでやりやすいとのことでした」

同じく取材にご協力いただいたZephyr Hallのエンジニア・佐々木翔悟氏(左)と、店長の中山智皓氏

同じく取材にご協力いただいたZephyr Hallのエンジニア・佐々木翔悟氏(左)と、店長の中山智皓氏

 SRX910LAは、JBL PROFESSIONALのサウンドを愛する音楽スペース運営者にとって新しいチョイスになるスピーカーだ。アンプ内蔵で運用しやすく、コンパクトでパワーもある。ラインナップとしてウーファー6.5インチ×2/ツィーター3インチ×1のSRX906LA、18インチ×1のサブウーファーSRX918Sも用意されていて、こちらは可搬性の良さもあり仮設の現場でも重宝されそうだ。今後SRX900シリーズを見かける機会が多くなるだろう。

Zephyr Hallのエントランス。レンガやサビの入ったトタンがビンテージな雰囲気を醸し出している

Zephyr Hallのエントランス。レンガやサビの入ったトタンがビンテージな雰囲気を醸し出している

◎本記事は『音響映像設備マニュアル 2025年改訂版』より転載しています。

 音響/映像/照明など、エンターテインメント業界で働く人たちに不可欠な知識を網羅した総合的な解説書で、2023年の改訂版から2年ぶりのアップデート。各分野の基礎知識をレクチャーする記事+プロの現場のレポート記事で、これから業界を目指す人や業界に入ったばかりの方に向けて展開します。

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