
第4回 ダンス・ミュージック/リミックスに
役立つStudio Oneの機能について
皆さんこんにちは、Liniaです。今回はダンス・ミュージックやリミックスを作る際に僕がよく使うStudio One(以下S1)の機能を紹介したいと思います。
S1は波形編集が得意なので
リミックス作業に向いている
EDMなど近年のダンス・ミュージックには“リミックス的”なアプローチが多く用いられます。リミックス作品じゃなくても、またはクラブ・ミュージックじゃなくてもリミックス的な要素を持つ楽曲が増えてきていると思います。S1は波形編集が得意なDAWなので非常にリミックス作業に向いています。まずはオーディオ素材をスライス、チョップしてカットアップを行う方法を紹介しましょう。カットアップとは、フレーズ素材を細かく切って、連打したり並び替えたりして新しいフレーズにすることです。チョップと言ったりもします。
ボーカル・チョップはEDM系の間奏などでもよく耳にする“アッ、アアッ、アッアッアー”なアレです。Perfumeの「ポリリズム」では、“ポリループ、ループ、ループ〜プッ、プッ、プッ”となっているアレですね。
まずオーディオ素材としてVENGEANCEからリリースされているサンプル・パックの中から、ロング・フレーズのウォブル・ベースを用意しました(ボーカル、シンセやギターのアルペジオなどほかの素材を使うこともあります)。それを分割ツールで2拍ごとに16分割しました。

それをまとめて内蔵のサンプル・プレーヤー、Impactにドラッグ&ドロップすれば自動で配置してくれます。この辺りのスムーズさは素晴らしいです。そしてImpact側の設定のChokeで同時発音数を1にします。

その理由は、ボーカルのカットアップのように、さまざまなサンプルを切り替えるサンプラーっぽいフレーズや、重ねたくない低音パートなどは同時に1つのサンプルしか鳴らないよう設定した方が良い感じになるからです。
続いてオーディオ・リバースを解説しましょう。これはすごく簡単で、オーディオの波形を右クリック(Macの場合はcontrol+クリック)して、“オーディオ>オーディオの反転”を選択するだけ。ピアノやギターでのリバースは、アタックを削らず楽器の個性を残すことでよりリミックス感を出せます。

アタック/リリースの音が気に入らないときなどは、枠の両端の角にカーソルを持っていきフェード・イン/アウトを調整すれば良いでしょう。

S1内蔵のImpactやSample Oneはサンプラーの基本機能を備えていますが、僕は場面に応じてサード・パーティのプラグインも使用しています。例えばスネア・ドラムのピッチをオートメーションで動かす場合はNATIVE INSTRUMENTS Battery、ベースやメロディック・タム、ヒット系などのワンショット・サンプルに音階を付けて演奏する場合はFXPANSION Geist、NATIVE INSTRUMENTS Maschineで行うといった感じです。
ループ素材などを扱う際に役立つ
ブラウザー機能
次はテープ・ストップについて。レコードをストップさせたときに起こる“ギューン”と音程とスピードが下がっていくアレです。いろいろ試しましたが、オススメのプラグインはKIROHEARTSのTape Stopです。

ストップ具合をリアルタイムで操作したいときはiOSアプリ、HEXLER LIMITED TouchOSCでコントロールしています。自分でTape Stop用のパッチを作ったのですが、Wi-Fi接続でタイムラグもなく便利です。

また、使用個所以外はオートメーションでバイパスしています。これはギタリスト時代のクセでやっているのですが、どのプラグイン・エフェクトも多少なり音の変化があるので、使わない個所ではなるべく通しません。リミックス時などマスター段にエフェクトをインサートする場合は特に気をつけていますね。サンプラーのピッチ・ダウンで似た効果を出すこともできるので、いろいろと試しましたが、今はTape StopかWAVES Abbey Road Vinylで落ち着いています。また、KIROHEARTSから出ているリバース/ディレイ・プラグイン、Reverserもいい感じで、ギターのアルペジオにかけると一気に雰囲気を出すことができますよ。
リミックス用途で使えるプラグインと言えば、S1内蔵のAuto Filterです。アイディアが行き詰まったときや誰かの力を借りたい気分のときにインサートするのですが、プリセットを切り替えていくだけで何気ないドラム・ループが画期的なフレーズになったりするので、奇跡を呼んでくれるフィルターだと思っています(笑)

ループ素材などを選択する際、画面右側のウィンドウ=ブラウザーがとても便利です。よく使うプラグインにはサムネイルやお気に入りマークを付けることで管理しやすくなっています。

またループ素材をプレビューする際も、素材のオリジナルBPMか楽曲のBPMかを切り替えられるのがポイントです。ドラムなどは楽曲のBPMに合わせてプレビューした方が良いですね。しかし本来のBPM以外で再生すれば思わぬグルーブと出会える可能性もあります。ショット系の効果音などBPM関係ない素材はオリジナルBPMでプレビューするようにしています。
最後に、僕がS1の作業において気にしているポイントとして、キーボード・ショートカットを紹介しておきましょう。S1では他DAWのショートカットが用意されているほか、好きにアサインを変えられるのですが、僕は“Pro Toolsモード”で使用しています。厳密にはそれを少し変更したもので、変更点はCを“クリックのオンオフ”、F12キーを“録音”だったと思います。これでほとんどの動作をキーボードだけで行えますね。こうした便利機能を理解しつつ毎日少しずつ実験を繰り返していくうちに、S1は僕にとってかけがえのないパートナーになりました。
今月で最終回となりましたがいかがでしたでしょうか。記事を書いていくうちにあらためてS1の素晴らしさを実感しました。本記事で、より多くの作品が生まれるきっかけになれればと思っています。この度記事を依頼してくださった編集部の皆様、関係者の方々、これを読んでいるあなたへ……ありがとうございました! またどこかでお会いしましょう!
*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/