Liniaが使う Studio One 第2回

第2回 Studio Oneにおける
オーディオ波形編集について

皆さんこんにちは、Liniaです。前回はStudio One(以下S1)の特に気に入っている機能を紹介させていただきました。そして今回は波形編集時に使う実践的な機能を中心に掘り下げていこうと思います。コンピューター、DAWソフトの進化により数年前では考えられないような快適な作業環境が簡単に手に入るようになりましたが、それと同時に機能が多くて戸惑ってしまうユーザーの方も多いのではないかと思います。僕が現場で試してきたノウハウなどから、なるべく実践的な機能を分かりやすく紹介していきたいと思っています!

トラックのインスペクターで
オーディオのテンポやピッチを補正

アレンジ〜レコーディング〜ミックスにおいて最も大切な技術として“波形編集”があります。波形編集にも幾つか目的があり、“ノイズ除去やアタックの調整”といったミックス・エンジニア的なものと“タイミング変更やピッチシフト”といったアレンジャー、トラック・メイカーが曲作りの一環として行うものなどがあります。僕はトラック・メイクをしながら音質やタイミング、ピッチなども整えるが多いので、その際に使っている機能を紹介していきます。

まずドラム・ループをトラックにインポートしてみます。

▲ドラム・ループをインポートしたトラック ▲ドラム・ループをインポートしたトラック

波形が表示されているトラックのインスペクターを表示させることで詳細な編集が行えます。上部の“テンポ”から“タイムストレッチ”を選択すればソングとは異なるBPMのファイルでも自動で合わせてくれます。

▲トラックのインスペクター。赤枠の“i”をクリックすると、各種設定項目が表示される。自動的にBPMを合わせるには、テンポ>タイムストレッチ(黄枠)を選ぶ ▲トラックのインスペクター。赤枠の“i”をクリックすると、各種設定項目が表示される。自動的にBPMを合わせるには、テンポ>タイムストレッチ(黄枠)を選ぶ

また、下部の“トランスポーズ”では半音単位、“チューン”ではさらに細かいセント単位でピッチを変えることができます。

▲波形のピッチを調整するには、インスペクターの下部、トランスポーズやチューンを使う ▲波形のピッチを調整するには、インスペクターの下部、トランスポーズやチューンを使う

キーの違うループ素材などをアレンジに取り入れる際に重宝する機能です。僕はドラム・サンプルの微妙なピッチ調整などにも使っています。打楽器にも音程があることを意識し楽曲のキーやコードに合わせています。

次はベース・トラックのオーディオ編集です。ブレイク個所でイベントを分割しそれぞれにフェードアウト、フェードインを書いていますが、S1ではイベントの端にカーソルを合わせると自動的にフェード・ツールに切り替わるので便利です。サビ頭などのギター、ベースのアタックを調整するの際にフェードインを使うのは非常に重要です。僕は少しだけアタックを残してほかの楽器よりも先にギター、ベースのアタックが鳴るように調整することが多いです。

▲ベースの波形エディット画面。サビ頭などのブレイク時に、フェードインを使って調整している ▲ベースの波形エディット画面。サビ頭などのブレイク時に、フェードインを使って調整しているト画面。サビ頭などのブレイク時に、フェードインを使って調整している

アタックが聴こえることによってその後のギター、ベースの存在感が増すように感じています。グリッドに沿った打ち込みパートがメインの楽曲ほどその効果が大きいので、気になる方はぜひ試してみてください。

続いてボーカル・トラック。ベース同様フェード・インでアタック感を調整し、その際にタイミングとゲインも補正します。イベント上部にカーソルを合わせるとゲインが調整でき、左側に数値で表示されるのも便利。ボリューム・オートメーションではなく波形上でゲインを合わせることでプラグイン・エフェクトのかかり方がスムーズになります。特に積極的にコンプで音作りをしたい場合は波形の処理は必須。カッコ良い声質に仕上がってもブレスが持ち上がり過ぎたり、サ/タ行などの歯擦音が気になることがあります。ディエッサーで抑えてもいいのですが、まずは波形編集から行う方が良い結果を得られることが多いです。そして、コンプ、EQなどのプラグインが通った後の音量を調整したい場合はボリューム・オートメーションを書き込んでいく、という感じで使い分けています。

ギター系のプラグインを
ボーカルやシンセなどにも活用

僕がすごく気に入っているのは“イベントFX”です。イベント単位でプラグインをインサートできる機能で、例えば曲中でボーカルをメガホン・ボイスやラジオ・ボイスにするときなどに便利。トラックを分けたりオートメーションのオン/オフをする作業がないのでストレスフリーです。僕はS1付属の“Ampire”“BitCrusher”をインサートして過激なエフェクト・ボイスを作ったりするのですが、BitCrusherはギター・ソロやドラムにもかけたりしますね。

▲イベントFXは、エフェクトをトラック全体ではなく個々のオーディオ・イベントにアサインすることができる機能。画面では、S1内蔵のAmpireとBitCrusherをインサートして過激なエフェクト・ボイスを作っている。筆者はBitCrusherのキャクター違いとしてFABFILTER Saturnも重宝している ▲イベントFXは、エフェクトをトラック全体ではなく個々のオーディオ・イベントにアサインすることができる機能。画面では、S1内蔵のAmpireとBitCrusherをインサートして過激なエフェクト・ボイスを作っている。筆者はBitCrusherのキャクター違いとしてFABFILTER Saturnも重宝している

かなり過激にかかるので、行き過ぎたサチュレーターみたいな感覚です(笑)。一方Ampireは、最近ボーカルやループ素材を汚すのによく使います。アンプ・シミュレーターにしては動作が軽いので悩んだらまずコレですね。アナログ的なノイズ感やエアー感を出すのにギター用のプラグインは便利です。

僕はDAWを始める前からコンパクト・エフェクターを集めるのが趣味だったので、その感覚でボーカルやシンセ、ループなどにもギター用のプラグインを使っています。ベースにファズをかけるとサイケでオシャレになりますし、アタック感を減らせば管楽器のようなニュアンスも加わります。

▲筆者がよく使うファズのプラグイン、UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Distortion EssentialsのBermuda Triangle。ベースに使うとサイケでオシャレなサウンドを作ることができる ▲筆者がよく使うファズのプラグイン、UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Distortion EssentialsのBermuda Triangle。ベースに使うとサイケでオシャレなサウンドを作ることができる

また、ピーク感を除去したり高域の出方をコントロールすることでオケ中でクリアに聴かせることも可能。エンジニアやギタリストはピンとくるかもしれませんが、“ひずむ=汚す”とも言えないのが音作りの深いところです。これ以上語ると長くなるのでこの辺で(笑)。

今回は波形編集を中心にお話をしましたが、最後に“パフォーマンスモニター”を紹介します。

▲CPU、ディスク、インストゥルメント、オートメーションの現在のパフォーマンスが相対値で表示されるパフォーマンスモニター。表示<パフォーマンスモニターを選択するか、トランスポートの“パフォーマンス”ボタンをクリックして開くことができる ▲CPU、ディスク、インストゥルメント、オートメーションの現在のパフォーマンスが相対値で表示されるパフォーマンスモニター。表示<パフォーマンスモニターを選択するか、トランスポートの“パフォーマンス”ボタンをクリックして開くことができる

どのプラグインがどれだけCPUを使用しているかが分かるので、動作が重くなってきたらまずここを見るようにしています。この画面から各プラグインのオン/オフなどもできるのでトラブル・シューティングに備えて覚えておくと便利です。

2回目の連載はいかがでしたか? S1はまだ歴史の浅いソフトウェアですが、ユーザーの意見を取り入れたバージョン・アップにいつも感動しています。これから先、S1のない音楽人生は考えられないので読者の方々ともいろいろ情報を共有していければと思っています。twitter(ID:Linia_tone)もやっていますので気軽にフォロー、リプライくださいね! それではまた次回、お楽しみに!

*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/