第3回
Studio Oneの導入のしやすさと
便利機能について
こんにちは。DJ URAKENです。本誌2月号からこの連載をスタートしたことについてFacebookやTwitterでお知らせさせていただいたところ、結構たくさんの方からコメントなどをいただきました。中には意外な方からの反応もあり、Studio One(以下S1)の広がりを感じることができました。
フリー版でも
音楽制作に十分な機能を搭載
S1は今までさまざまなタイプのDAWを扱ってこられた方、1つのDAWを使い込んできた方、初めてDTMにトライしてみる方など、どんな方でも直感的に気持ちよくスイスイ楽しく作業することができるソフトです。まだ使ったことがない人はぜひ一度オフィシャルWebサイトでフリー版(Studio One Free)をダウンロードしてみてください。フリー版とはいえ、基本性性能はしっかり搭載されていますのでS1の魅力を十分感じることができると思います。

フリー版の話になったので、テクニカルな話題からちょっと横道にそれて、S1の機能以外の魅力について書かせてください。それはDTMを始める人にとっての新規導入のしやすさです。スタジオでよく、ボーカリストの方から自宅で録音をするにはどうしたらいいのかと相談を受けることがあるのですが、DTMを始めるのはどうしても敷居が高く感じてしまいますよね。どのソフトを選んだらいいのか? ソフトを買ったとしてもコンピューターに強くないとインストールが難しそう。オーディオI/Oやマイクはどう選んだらいいのか分からない……など、始めたくても不安になることだらけで、初めの一歩を踏み出すことが難しいものです。その点S1は、DTM初心者へのやさしい配慮がなされていて、初めてのDAWには最適だと思います。なので、私が上述のような質問を受けたときにはいつもS1をお勧めしています。
その理由の一つに、フリー版のインストールの簡単さが挙げられます。なんとStudio One Freeのインストールにはユーザー・アカウントの作成、アクティベートなど、面倒な手続きが一切必要ありません! インストールするだけですぐに使用でき、使用期限もなく、フリー版の状態でレコーディング〜編集も可能なので、ボーカルのレコーディングのみが目的だったら製品版を買わなくてもいいくらいです(笑)。また、最上位機種のStudio One Professionalのデモ版は、30日間の試用期限がありますが、過ぎた時点でStudio One Freeとして引き続き使用することも可能なので、最初からフルの機能を使いながら検討してみたい場合にも気軽に試してみることができます。
製品版のアクティベーションもコードを入力するだけと簡単なので、iLokなどのドングルも必要なく、しかも最大5台のコンピューターにインストール可能です。1ライセンスでスタジオや自宅のデスクトップ/ラップトップなどにインストール可能なのはとても便利。USBのドングルを持ち運ぶのは少し面倒ですし、持って行くのを忘れたり破損の心配もあるのでとてもありがたいです。
自宅でのレコーディングを始めてみたい方にS1をお勧めしているもう一つの理由は、レコーディングに必要なハードウェアとソフトウェアが一つのパッケージになった“AudioBox iTwo STUDIO”の存在です。

このAudioBox iTwo STUDIOは、Studio One Artist、PRESONUSのオーディオI/O=AudioBox iTwo 、マイク=M7、ヘッドフォン=HD7、APPLE iPad用のレコーディング・アプリCapture Duoなどがセットになっていて、なんと27,800円! ハードウェアの性能にも定評があるPRESONUSだけに、エントリー・パッケージとしては文句なしの構成と価格です。最低限必要なケーブル類もセットに含まれているのもユーザーにとってはとてもうれしい心遣い。このセットを購入するだけで煩わしいセッティングに心折れることなくすぐに自宅でレコーディングをスタートすることができます。こういうところもいろんな人が気軽にDTMをできるようになった時代に合っていて、S1の良いところだなぁと思います。
トラックの一時的なグループ化は
リンクすることなく選択だけで可能
それでは、S1のテクニカルな解説に戻りましょう。ほかのDAWでも同じようなことが可能かとは思いますが、S1のとても便利な機能をご紹介していきます。1つはトラック・フェーダーのグループ化。S1は、ShiftキーやCtrlキーを押しながら複数のトラックを選択すれば、リンク作業などなしに、選択されたトラックが一時的にグループ化されるので、いずれかのトラック・フェーダーを動かすだけですべてのフェーダーが連動するのです。ただ選択するだけなので、スピーディにたくさんのトラックのレベルを同時に変更することが可能。水曜日のカンパネラ「桃太郎」のリミックスでは、コーラスのトラックが多かったので、コーラスとメイン・ボーカル、コーラスとオケなどのおおまかなレベルのバランスの調整はこのグループ化機能を使って行い、その後の細かい調整は各トラックごとに進めていきました。

話が前後してしまうのですが、今回のこのリミックス、初めはオリジナル楽曲の素材を最大限に使いながらちょっと違うテイストを加えたものにしようということで進めていました(やっているうちに結局全然違うものになっていったのですが……)。ですので作業スタート時には原曲トラックのパラ・データのWAVファイルをすべて一気に読み込んだのですが、このときの読み込みが、S1は一瞬なんです! この曲のパラデータは現在OTOTOYで無料ダウンロードできるようになっており、トラック数は全部で26トラックあります(http://ototoy.jp/_/default/p/48321)。

結構多いですが、S1にドラッグ&ドロップすると待ち時間ゼロで波形が表示され、すぐに作業をスタートすることができるのです。

初めてパソコンに読み込んだデータでも瞬時に表示されるので、どうしてこんなことができるのか不思議なのですが、これはストレスがなくてとても気に入っている特徴の一つです。
§
今回はフリー版の話からS1の導入しやすさについての部分が長くなりましたが、そこもS1の設計思想の特徴的なところで、S1を語る上でとても重要な根幹となっているポイントだと思います。決して初心者向けというわけではなく、プロのハイエンド・ユーザーも驚くような高性能オーディオ・エンジンや機能を備えながらも低価格と導入の簡便さを実現。ラップトップ1台で音楽制作をスタートし、短期間で世界的なヒットを放つようになってしまうティーンエイジャーのEDMプロデューサーが続出している時代を象徴しているかのようなDAWだと思います。