浅田祐介が使う Studio One 2 第4回

第4回
Studio Oneを活用するための
便利なTipsについて

皆様お元気でしょうか? 先日PRESONUSの方とお話しする機会があったのですが、自身もミュージシャンとのこと。なるほど、作曲/アレンジをする上で勘所を分かっているなぁと納得しました。何より一番大事なのは、インスピレーションを途切らせることなく作業が続けられるという意見で、筆者も大賛成。今から次のメジャー・アップデートでどのような進化をしていくのか楽しみです。幾つかリクエストもさせていただいたので、その機能が実装されたりするといいなぁ……とまぁ夢は膨らむのですが、今回は最終回なので、現状のStudio One 2の便利な機能をご紹介したいと思います。

キーボード・ショートカットを設定して
快適な作業環境を構築

Studio Oneは標準でほかのDAWのショートカット設定が用意されています。ここら辺は後発の強みで非常に便利。僕はスタジオでのやり取りや、流し込み時に迷わないように、基本的にはAVID Pro Toolsのショートカット設定にし、必要に応じてカスタマイズしています。

▲ショートカットの設定は、メニューのStudio One>キーボードショートカットを選んで行う。黄色枠の、キーボードマッピングスキームから、各種DAWのショートカットを選んだり、設定のインポートも可能。さらにそこからカスタマイズすることもできる ▲ショートカットの設定は、メニューのStudio One>キーボードショートカットを選んで行う。黄色枠の、キーボードマッピングスキームから、各種DAWのショートカットを選んだり、設定のインポートも可能。さらにそこからカスタマイズすることもできる

特にMIDI関連のショートカットが多いのですが、筆者はMacとWindowsを併用しているので、両者を設定しています。次に挙げるのが筆者の設定の一部です(カッコ内はWindowsのキー設定)。

ベロシティをoption+V(alt+V)、デュレーションをoption+D(alt+D)、トランスポーズをoption+T(alt+T)に。これだけでかなり使えるようになるのですが、Studio OneはCELEMONY Melodyneがシームレスに使えたり、MIDIデータからオーディオへの変換の容易さ、自然なオーディオ編集などが強みなので、レンダリングのショートカットもアサインしています。僕の場合イベントFXのレンダーを、command+R(ctrl+R)にしています。これでMelodyneで編集したり、メイン1本の歌からダブル分のボーカルやハモリを作り、バンバン書き出しています。また、1小節単位の前後移動(Studio Oneでは小節単位で巻き戻し/先へ進む)をテンキーの1と2にアサインすると便利です。ここで一つTipsなのですが、Macではテンキーの1と2にせず、それぞれ“<”と“>”(大なり小なり)にアサインし、さらに任意の小節へ飛ぶコマンド(Studio Oneでは時間へ移動)を“/”(スラッシュ)にすると、フル・キーボードを持ち歩かずにMacBook Proのキーボードだけで作業ができます。筆者は、MacはMacBook Proを使っており、自宅やスタジオでの空き時間に歌を編集することも多いのですごく便利です。それまでは泣く泣くスタジオに残り作業していたのが、自宅でもじっくり作業でき非常に快適。このほかにも便利なショートカットを自由にアサインできるので、皆さん活用してみてください。

複数のエフェクトをまとめて
アサインできる便利なFXチェーン

Studio Oneには高品位なエフェクトがたくさん用意されていますが、その中でも僕がよく使うのはAutofilterとX-Tremです。

▲Studio Oneの内蔵エフェクトは、 ProducerおよびArtistでは26種類、Professionalでは31種類用意されている。画面は筆者がよく使っているエフェクトで、上がエンベロープ・フィルターAutofilter、下がLFO搭載のトレモロX-Trem ▲Studio Oneの内蔵エフェクトは、 ProducerおよびArtistでは26種類、Professionalでは31種類用意されている。画面は筆者がよく使っているエフェクトで、上がエンベロープ・フィルターAutofilter、下がLFO搭載のトレモロX-Trem

AutoFilterには音量によって変化するいわゆるエンベロープ・フィルターや、LFOでテンポ・シンクするフィルター、そして16ステップのステップ・フィルターが用意されており、曲のBPMに沿った音色変化をさせることができます。またX-Tremはトレモロとオート・パンの2つのモードがあり、これも同様にLFOと16ステップのボリュームとゲートを用意。トレモロを選び16ステップで徐々に上がるボリュームを書けば、EDM系のサイド・チェイン・エフェクトを単体でかけることができます。またゲートを使うといわゆるチョッピングしたような音になり、前述のフィルターと組み合わせると高価なループ集など買わなくても面白いエフェクト・ループを簡単に作成することができます。

Studio Oneのインサート・エフェクトは、ミキサー画面のプルダウン・メニューや、右のペインからドラッグ&ドロップすることでアサインできますが、例えば基本的な歌の処理で、EQ/Comp/DeEsser/EQなどの複数のエフェクトをアサインするのは面倒です。こんなときに複数のエフェクトをまとめてアサインすることができる便利な機能が“FXチェーン”。

▲FXチェーンとは、複数のエフェクトの組み合わせをプリセットとして保存できる機能。デフォルトでDrums、Guitar、Instrumentsなどが用意されているほか、自身のよく使う組み合わせも登録できる。筆者は、男性/女性ボーカルとピアノの処理についてのプリセットを保存してある ▲FXチェーンとは、複数のエフェクトの組み合わせをプリセットとして保存できる機能。デフォルトでDrums、Guitar、Instrumentsなどが用意されているほか、自身のよく使う組み合わせも登録できる。筆者は、男性/女性ボーカルとピアノの処理についてのプリセットを保存してある

例えば僕は仮歌を録音するときには、EQで60Hz以下をカット、コンプのレシオを4:1で、軽くピークに引っかかる程度でつぶし、ディエッサーで気になる子音を処理、最終的に音を整えるために再度EQという基本的な組み合わせにしています。これを一つ一つアサインするのではなく、FXチェーンでこの4つのエフェクトの組み合わせを一つのプリセットとして保存することができるのです。一段目のEQは、コンプに低音が引っかからないために使っているのですが、これも男性用と女性用で2つ用意しておいたり、メイン・ボーカルとコーラスでの基本的な処理の異なる設定や、ピアノやエレピで頭を軽くつぶし、中低域以下を締める定型の設定も保存してあります。もちろん微調整はしますし、ミックスの段階で再度一から処理をし直しますが、時間がなかったり、同一アーティストで、複数曲のプリプロをする場合には時間短縮に一役買ってくれます。何よりボーカル・ブースに入った歌う気満々のアーティストを待たせるのはよくありません。コーラスをもっと録りたい!という要望で録音するトラックを増やせても、エフェクトのアサインで時間をとられるのは避けたいのです。

あと自分にしては非常にためになったTipsがあります。それはNATIVE INSTRUMENTSのMonarkやRazorのように、単体ではVSTに対応しておらず、一度NATIVE INSTRUMENTS Reaktorに立ち上げてから読み込むと言う2ステップ必要なシンセでも、Studio Oneでプリセットとして保存しておけば、ドラッグ&ドロップの1ステップでシンセが立ち上がるのです。

▲Studio Oneでは、ソフト・シンセの組み合わせもプリセットとして保存できる。画面は、NATIVE INSTRUMENTS ReaktorにMonarkが立ち上がった状態。通常はReaktorを起動し、Monarkを読み込むという2ステップの動作が必要だが、プリセットとして保存した“Monark”(黄色枠内)をドラッグ&ドロップするだけで、すぐにMonarkを使用するとができる ▲Studio Oneでは、ソフト・シンセの組み合わせもプリセットとして保存できる。画面は、NATIVE INSTRUMENTS ReaktorにMonarkが立ち上がった状態。通常はReaktorを起動し、Monarkを読み込むという2ステップの動作が必要だが、プリセットとして保存した“Monark”(黄色枠内)をドラッグ&ドロップするだけで、すぐにMonarkを使用するとができる

またStudio Oneは、前回お話しした通りマスタリング用のプロジェクト・モードを持ち、その中の1曲のデータにいつでも戻って編集できるので、ソング・データのマスターに音圧を上げるためのマキシマイザー系プラグインを挿さない方が良い結果が得られる気がします。必要であればプロジェクトで1曲ごとにEQやマキシマイザーを挿し、音質や音圧を追い込むと良いでしょう。

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4カ月という短い期間でしたが、駆け足でStudio Oneの魅力を紹介してきました。何とか機能の一端でもお伝えできたでしょうか? とにかく動作の軽さ、音質の良さはなかなか誌面では伝えきれないのでもどかしいのですが、Studio OneはFree版も用意されているので、ぜひダウンロードして音質や、動作の軽さを実感していただきたいです。また今後リリースされるであろう次期バージョンは、強力な機能を持ちながら操作性はシンプルなものになるに違いありません。それでは皆さん音楽を楽しんでください!