Device06 複雑なサウンド・レイヤーを自動生成 by NOEL-KIT
音色の詳細なコントロールも可能
今月から2回にわたりDUB-Russellで当コーナーを担当させていただきます。今回は私NOEL-KITが、エレクトロニカやアンビエントの制作に便利なオリジナル・パッチを紹介したいと思います。
このパッチは、読み込んだオーディオ・ファイルをリアルタイムで繰り返しリサンプリング、6系統の異なる再生方法で同時再生し、複雑なサウンド・レイヤーを生成するものです。自動生成だけでなく、マニュアル操作でも細かな設定ができるようになっています。
まずは左端の“LOAD”でオーディオ・ファイル(WAV/AIFF)を読み込んで“START”をクリックしてください。リアルタイムでリサンプリングされている音の波形が中央部に表示され、元音にテクスチャーが追加されていきます。波形の下にある“120”“4”という数字は、BPMと拍子を表しています。再生しながら“PITCH”“DRY/WET”“MESS(グリッチ+リバース)”のノブを操作することで、サウンドの簡易的なコントロールが可能。また、“FRZ”ボタンをクリックするとリアルタイムのリサンプリングを中断し、既にレコーディングした波形を保ったままレイヤーを生成することもできます。
詳細な設定は、“AUTO”をクリックし、マニュアル・モードに変更することで実現します。マニュアル・モードでは、6本のスライダーをそれぞれ個別に設定可能。スライダーは最下部に来た際に音が再生される仕組みになっており、横の赤いボタンでその動きを調整できます。
3つのボタンは、上から“下降”“下降+上昇”“上昇”という振る舞いをします。またスライダーは2つのグループに分かれており、右の4本が設定したスピードで、左の2本は右4本の動きに合わせてゆるやかに動きます。再生しながらの調整も可能になっていますので、音を聴きながら好みのセッティングを探してください。
パッチの構造
このパッチはリアルタイム・サンプリング部/スライダー・コントロール部/出力部の3つに分かれています。
リアルタイム・サンプリング部には[buffer~]と[record~]を使用しています。またスライダー・コントロール部は[counter]と[slider]を組み合わせて、アナログ・シーケンサーに似た、一定の周期で動作を管理する仕組みを採用しました。出力部では[groove~]に加えて、Maxに標準搭載されているコンプレッサーを使用して音をまとめています。エレクトロニカでよく使われる“プチプチ音”が気になる方は、出力にエンベロープを設定してみてください。また、出力の最後段には[filtergraph~]を組み合わせた簡易EQを設置してみました。[filtergraph~]の数を増やすことでマルチバンドEQを制作することもできますので、必要に応じて加工してみてください。また、このパッチは各所に[tanh~]を挟んでいますが、これは過入力からの回路保護が目的です。
そのほかUI上の細かなポイントですが、例えばスライダーの横にある3つの赤いボタンには、一度選択した設定を再度判定させないために[sel]と[==]を組み合わせて使用しています。現在のMax6はプレゼンテーション・モードで自らUIを制作することができますので、誤動作や誤表示を防ぐためのパッチングも重要になってくると思います。
元々このパッチは楽器プレイヤー用に制作したもので、演奏しながら限られたアクションでサウンドを変化させることを目的としています。そのため、パッチ内部の[sfplay~]を[adc~]などに置き換えたりして、生演奏のお供のエフェクターとして使用しても面白いと思います。パッチングは、よく使われるオブジェクトを主に使ったシンプルな構造になっていますので、自分好みのサウンド・レイヤー生成マシンに改造してもらえるとうれしいです。
次回はDUB-Russellの相方=首藤陽太郎が担当します。お楽しみに!
ファイルをダウンロードする(auto-layer.maxpat.zip)
NOEL-KIT
【Profile】プログラミングを駆使した静かであでやかな世界観が特徴。DUB-RussellとしてSonarSound Tokyoに出演したほか、ジェフ・ミルズのリミックスなども手掛ける。また、各所で人々をふんわりさせている色々秘密系ガールふんわりちゃんのメカニックや天狗マガジンでの活動も展開中。 http://noelkit.com
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