
フロアで鳴らすのに最適な
ハードコアの“展開テンプレート”
今月は僕の連載の最終回。曲の展開作りをメイン・テーマにしつつ、仕上げの作業にも触れたいと思います。それでは例によって、この連載の題材曲「Hardsound Primary(SRM Edit)」(https://soundcloud.com/sound-7/dj-myosuke-hardsound-primary-srm-edit)を基に話を進めますね。
展開作りに役立つショートカット
“Ctrl+InsertもしくはDelete”
ハードコアの展開にはテンプレートがあります。一つは、ビート・メインのイントロ→Aセクション→ブリッジ→Bセクション(Aのバリエーション)→ブレイク→サビ→アウトロという流れ。もう1つは、そこからブリッジとBセクションを抜いたものです。すべての曲がこれらに当てはまるわけではないものの、基本としてとらえておくと良いでしょう。このテンプレートに沿って作ればDJプレイの際につなぎやすく、お客さんも踊りやすいからです。
さてこうして見てみると、どのセクションから作り始めればいいのか?と思う人も居るでしょう。それはクリエイターによってまちまちなのですが、僕はサビから作り始めることがほとんど。ガバ・キックとメロディ要素(シンセ・リフなど)を含んだセクションですね。そのサビができたら、さかのぼるようにしてイントロまで作っていきます。
題材曲に関しても、サビ(02:39辺り)から作りました。ただしアッパーな雰囲気ですし、これ以上展開させようが無いと判断したので32小節にとどめています。曲によっては“盛り上げ度50%”くらいで始まり、2回し目で100%に達して計64小節になるようなサビもあるので、要は曲がダレて聴こえなければいいわけです。

サビができたら次はブレイクを……と言いたいところですが、その前に僕は各セクションの長さを仮決めすることが多いです。ブレイクやAは大体このくらい、というようにマーカーを付けて、ザックリと全体像を作ってみるのです。もちろん、後になってから各セクションの尺を調整することも可能。例えば“ブレイクを16小節伸ばしたい”と思ったら、ブレイク直後の16小節を選択してコンピューター・キーボードの“Ctrl+Insert”を押してみましょう。選んだ範囲の手前に16小節の空白ができます。これとは逆に、何小節か削除したい場合は目的の範囲を選んで“Ctrl+Delete”を押せば完了。消した範囲の続きにあったクリップは自動的に繰り上がってきます。このCtrl+Insert/Deleteでは尺の変化にマーカーが付いてくるので、打ち直す手間が省けて便利ですよ。

ミキシングで最も気を配るのは
キックの3つの帯域
続いてはブレイク。ここはハードコアの特徴の一つと言えるでしょう。何せとにかく長い! ブレイクが2分くらい、という曲もあるほどです(笑)。アレンジ面の特徴としては、ガバ・キックが無くなって、歌やスポークン・ワーズ、壮大な上モノが入ってきます。題材曲のブレイクは01:33辺りから始まり、4つ打ちのビルドアップを合わせれば計64小節。ポイントは、17〜32小節目にドラムンベースのビートを配したところです。アッパーな曲なのでブレイクを長くしてもつまらないし、壮大にしたりスポークン・ワーズを入れても合わないので、テンションを落とし切らない方向に振ったわけです。

先ほどハードコアの展開はどれも似ていると書きましたが、曲による相違点があるとすれば、“DJセットにおける役割”でしょうか。DJをやっていると会場を落ち着けたいときもあって、そういう場合にブレイクの長い曲などがマッチします。しかし題材曲はDJプレイのスタート・ダッシュをイメージして作ったので、ブレイクでもテンションをキープしています。またキックレスの場面を少なくするなど、“落とさない工夫”をちりばめておきました。
ここまで来たら、あとはAセクションとBセクションを作るだけ。Aは、サビからメロディックな要素とドラムの音数を減らせばほぼ成立します。ただし題材曲では、その引き算だけではつまらないように感じたので、声ネタを入れてみました。そしてBは、Aをベーシックとしつつも少し盛り上げるようとスクリーチを追加。あとは音が徐々に増えていくイントロと、徐々に減っていくアウトロを作れば展開の出来上がりです。

さて既にお気付きの人も居るでしょうが、ハードコアには基本的にベースが入っていません。だからこそキックのチューニングには気を付ける必要があります。方法は簡単で、曲の主音(キーがCならC)に設定するのみ。ベースレスでありながらキックのピッチを動かしてベースのように鳴らす曲もありますが、それは“ハード・スタイル”というまた別のジャンルになります。
キックに関連した話題として紹介しておくと、僕は曲のアレンジ&展開が出来上がった時点でキックを単独で鳴らし、その周波数特性をアナライザーで確かめています。最も重要なのは40〜60Hz辺りのローエンドと、その二次倍音の帯域。次に大事なのは400〜600Hz周辺です。400〜600Hzはアタック感を担う成分で、最近のハードコアの特徴と言えます。出始めたころは“コンコン鳴っていて木魚みたいだな……”と思ったものですが、3〜5kHz辺りを強調してもスーパー・ソウなどとかぶってしまうため、混み合っていない帯域という点で理にかなっています。チェックの際は手本にしたい曲を用意して、その低域のピークに近付けるようにEQをコントロール。そうして作ったキックに対して他パートをどのくらい乗せるのか見つつ、ミキシングしていきます。

4回に渡った僕の連載ですが、いよいよお別れです。ハードコアはまだまだアンダーグラウンドな音楽ですが、この連載を機に“自分も作ってみよう”と思っていただけたら幸いです。短い間でしたが、ありがとうございました!
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