
Pro Toolsでビート・メイク〜打ち込みをジャストなタイミングに
MIDO(ミド)と申します。これから数回に分けて、普段のトラック・メイクの方法について解説したいと思います。私はサンプリングより、MIDI打ち込みでのトラック制作を主としております。AVID Pro ToolsでMIDIトラック制作を行っていることに驚かれることもあるのですが、私にとっては慣れた制作方法であり、ミックスをしながら作業を進めています。“ミックスをしながら”なのでトラックの制作が終わった時点で、かなり理想のミックスが終わった形になっている点が気に入っています。
セッション名の命名ルールを決める
BPM表記も入れておくとよい
まず、いつも使っているテンプレート用のセッション・ファイルをフォルダーごと複製して、フォルダー名とセッション・ファイル名を“MIDO Track 214 48k”などに変更します。今回の214というのはトラックの通し番号で、最終的に“MIDO Track 214 bpm98 v1.wav”というようなファイル名として書き出します。書き出すWAVファイル名にBPMを書いておくのも大切なポイントです。忘れないようにしましょう。“v1”というのはversion 1の意味で、もし後で変更を加えた場合は〜v2というように名前を変更して、書き出しています。

最後の“48k”は、サンプル・レートが48kHzという意味です。ファイル名にドットや日本語を使用するのは避けているので、44.1kHzのセッション・ファイルは“〜441k”というふうに名前を付けています。普段、自身でトラック制作〜レコーディング〜ミックスを行う際は48kHzで作業を行うことが多いです。ですがアーティスト側からの指定で、他のサンプル・レートでの作業を行うこともあります。私のスタジオでは、外部クロックを導入しているため、開くセッション・ファイルによってクロック・ジェネレーターの設定を変える必要があるのです。
自作テンプレート+ショートカットで
スムーズにトラックを用意
ファイル名についての解説が長くなってしまいました! 本題に戻ります。複製してリネームしたセッション・ファイルを開きます。上からClick、NATIVE INSTRUMENTS Batteryをインサートしたインストゥルメント・トラック、NATIVE INSTRUMENTS Kontakt 5をインサートしたインストゥルメント・トラック、SPECTRASONICS Omnisphere 2をインサートしたインストゥルメント・トラックを並べています。

その下にMIDIトラック、オーディオ・トラックが8セットくらい用意してあります。トラック制作にはハードウェア・シンセのYAMAHA Motif XS8も使用しているため、Motif XS8の使用したい音を選んで、決まった時点でMIDIを打ち込み、クオンタイズしてからオーディオ化するためです。

オーディオ化した後でフレーズや音色を変更する可能性も視野に入れ、打ち込んだMIDIデータは消さずに残しておきます。MIDIデータもしくはトラック名を、Motif XS8の音色名に変更することも忘れずに行います。
あらかじめ用意したトラックだけでは足りない場合は、⌘+shift+Nを押して、新規トラックを作成します。ここではショートカットを覚えておくと便利です。そのまま、⌘+↑↓で新規トラックの種類、⌘+←→でチャンネル・フォーマット(Mono/Stereo)の選択ができますので、必要に応じたトラックを作成します。トラック作成数は↑↓で。項目を増やすには⌘+N(またはテンキーの+)、逆に減らす場合は⌘と−(マイナス)の同時押しです。項目間の移動はtabキーで行えます。

入力したパターンの
ベロシティとタイミングをそろえる
トラック制作において、よく質問されるのが、上ネタから制作するのか、それともドラムから打ち込んでいくかです。どちらの方法もやるのですが、今回は“ドラムから打ち込んでいく制作方法”について解説します。私の場合、上ネタとしての良いフレーズが思い浮かばないときでも、ドラムから打ち込んでいくことによって、何か良いフレーズが思い浮かぶキッカケとなることが多いからです。
では、実践です。まずはドラム・パターンを入力してみます。ここで使うのは先述のBattery。使うサンプルはそのときの直感で決めています。

私は鍵盤から打ち込む方法と、そのままマウスでMIDIエディタに書き込む方法と2つを使い分けています。使い分けもケースバイケースですが、ここではマウスを使って16分音符でクローズド・ハイハットを4小節ほど並べ、その上にキックとスネアをリアルタイムでレコーディングしてみました。ハイハットをガイドにして、思い付いたキックとスネアをオーバーダビングします。このとき、MIDIマージをオンにしておくのがポイントです。最初に並べたハイハットが上書きされず、キックとスネアが足されます。

リアルタイム入力をしましたが、それはパターンのイメージを作るため。個人的には、完全に正確で機械的なドラム・パターンが好きなので、まずはベロシティをそろえます。基本的なパターンができたら、MIDIエディタを開き、⌘+Aですべてのノートを選択。その状態のまま、下に表示されているベロシティをマウスで最上まで持ち上げます。私はMIDI入力に、88鍵ある効率性を考えて先述したMotif XS8を使用しているのですが、ピアノ・タッチ鍵盤なので、意図せずベロシティが弱くなってしまうことがあります。サンプルのトリガーは基本的に強弱が無くても良いと考えているので、ベロシティはすべて127にそろえたいのです。同様のことは後述する“イベント操作”でもできますが、いつもこのやり方をしています。

次に、クオンタイズをかけます。option+0を押して、“イベント操作ウィンドウ”をオープンし、“適用”をクリックします。

私の場合は、後々のエディットを考えて、ノートオフ(ノート・レングス=デュレーション)にもクオンタイズをかけます。クオンタイズグリッドの設定も大切。ここでは16分音符のハイハットを基調としているので、16分音符を選びます。もし合っていなければ設定を変更してみるのも手です。これで再生してみると、奇麗にBPMに沿ったドラムが流れるはずです。
次回は、Batteryに打ち込んだドラムのパラ出し〜上ネタの入力、ミックスについて解説していきたいと思います。
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MIDO
1990年生まれ。ミキシング・エンジニアとしての活動と並行して、TENZANやL-VOKAL、Zeebraのプロデュースでも注目を集める。以降も掌幻、CHICO CARLITO&焚幕、PKCZ(R)、EGOなどに、シンセを多用した迫力満点のビートを数多く提供している。