インストだけでもカッコ良く聴こえるのが大事なので、
オケを仕上げてから歌に取りかかります
『Whose Blue』で最も多くの楽曲のミックスを手掛けているのが染野拓だ。もともとTKの熱心なファンだという染野は、“TKさんの作ったミックスをプリマスタリング的に整えるのが自身の役割”と言う。TKの世界観を重視した、独特のミックス・アプローチについて聞いた。
音も情景の出方もほかの音楽と全然違う
──もともとTKさんのサウンドに憧れがあったようですが、どういうところが好きですか?
染野 何て言うんでしょう……明らかに情報量が多いし、音も情景の出方もほかの音楽とは全然違うんですよ。個人的にエンジニアよりもアーティストが手掛けたミックスが好きで、“ここを一番聴かせたいんだ”っていうのが感じられるバランスにグッとくるんです。その意味でも、TKさんのように衝動が全部詰め込まれたようなミックスはほかにないというか。単純にその音が好きなんです。なのでTKさんが何の機材を使っているか、サンレコを読んでディグっていました。
──では、同じものを使ったりとか?
染野 そうですね。今は変わっちゃいましたが、スピーカーはTKさんが前に使っていたFOCAL Solo 6 BE、オーディオ・インターフェースはAPOGEE Symphony I/O MKIIを僕も使っていました。
──『Whose Blue』では、TKさんから送られてくるステムを染野さんがミックスしています。ステムとしてまとまっているソースは、どのようなものでしたか?
染野 ドラムやベースは、ほとんどステレオ・ミックスになっていますね。ギターはフレーズにレイヤーがあったり、ソロの音量の上げ下げをしたりするので最大10trほど。ストリングスはシンセと分かれていて、あとはピアノですね。ボーカルは多くて10tr。全部で30~40trくらいですね。
──ドラムは、キックもまとめられているのでしょうか?
染野 はい。バラけすぎていると、何でもできすぎちゃう気がするんですよね。僕が普段ミックスを手掛けているアーティストの中には、ドラムをまとめて納品してくるトラック・メイカーもいるので、まとまっていることに不便は感じません。なのでTKさんにも“複数のトラックが混ざっていても大丈夫ですよ”と伝えて、こういうやり方をしています。TKさんの作品は昔から聴いているので、毎回データが届くたびにトラックをソロで聴いて、音の作り方をひも解いています。例えばドラムの音についても...
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