Novel Coreインタビュー〜プロデューサー陣と作り上げた『No Pressure』の制作を振り返る

Novel Coreインタビュー〜プロデューサー陣と作り上げた『No Pressure』の制作を振り返る

15歳でラップを始め、現在はSKY-HI主宰のマネージメント/レーベル“BMSG”に所属するラッパー/シンガー・ソングライターNovel Core。彼の2ndアルバム『No Pressure』が、去る8月3日にリリースされた。多彩なプロデューサーとともにセッション形式で作り上げたという本作へのこだわりを知るべく、Novel Core本人を取材。さらに、先行シングルを手掛けたプロデューサー4組にトラック・メイクの詳細についてご解説いただいた記事も別途公開されるので、Novel Coreのインタビューと併せてお楽しみいただきたい。

Text:Yuki Komukai Photo:Hiroki Obara(レコーディング風景を除く) Cooperation:Sennheiser Japan K.K.

ヒップホップとほかのジャンルを組み合わせる

『No Pressure』はヒップホップを軸にしつつもディストーションの効いたギターが入っている曲が多く、ロックンロールのテイストを感じました。

Novel Core もともとロックが自分のルーツにありますし、ヒップホップにロックなどのほかのジャンルを意図的に交ぜているんです。ジャンルが異なるもの同士が一つになったときに起きる化学反応みたいなものを意識しながら作っています。

 

ご自身のルーツにロックがあるとのことですが、憧れのアーティストはいましたか?

Novel Core 学生時代にボン・ジョヴィやレッド・ツェッペリンなどの王道ハード・ロックや、サム・フォーティーワン、ブリンク 182のようなパンク・ロックをよく聴いていました。ヒップホップの前に出会っていたそういう音楽のDNAが今の曲にも生きていますね。

 

メジャー1stアルバム『A GREAT FOOL』がリリースされてから1年足らずで今回の2ndアルバムをリリースされましたが、制作はいつ頃から始めたのですか?

Novel Core 1stアルバムをリリースした直後に制作をスタートしました。ツアーやワンマン・ライブなどをやりながら、時間を見つけては曲を作っていましたね。いつも自分の頭の中で考えていることと、実際に世の中に出ていることとの間に2年分ぐらいのギャップがあるので、一作品作り終えるともう次の作品を作りたいスイッチが入っています。

 

楽曲のアイディアはどうやって思いつくのですか?

Novel Core シャワーを浴びている時間や移動中の車の中で、景色や音からインスピレーションを受けてメロディを思いつくことがよくありますね。APPLE iPhoneのボイスメモにメロディの案やラップのテンションをちょくちょくメモっています。

 

インスピレーション源の“音”というのは、音楽ではなく環境音を指している?

Novel Core そうですね。雨が車の窓ガラスに打ちつける音が拍手っぽく聴こえて、そこから曲のイメージが浮かぶこともあります。そういう環境音からインスピレーションを受けることはしょっちゅうですね。ただ『No Pressure』に収録された曲はテーマが明確に決まっていたものが多かったかもしれません。

 

そういうアイディアやテーマをどうやって形にしていくのですか?

Novel Core 最近はAPPLE Logic Proを使ってトラック・メイクを少しやっているんですけど、まだ完全に一人でトラックを作れる段階ではなくて。なので、プロデューサーの方のスタジオに直接お伺いして“こういう曲が作りたい”というのを、テーマだけではなく、コード感や想像している音などを細かくお伝えして、それを元にデモを作ってもらい、そこから一緒にブラッシュアップしていきます。

 

Logic Proを使うようになってどのくらいですか?

Novel Core もともとプリプロに使っていたのですが、宅録用としてちゃんと使い始めたのは半年前くらいですね。操作などは、YouTubeで海外のプロデューサーの方が使っているのを見て学んでいます。英語は分からないので画面とにらめっこしながら……という感じなんですけどね(笑)。一緒に活動しているDJ KOTAくんがLogic Proを使うので、彼に教えてもらうこともあります。

 

実際にLogic Proに触ってみて、いかがですか?

Novel Core めちゃめちゃ楽しくて、沼りそうだなと思っているんです! いじっているうちに気が付いたら2日くらい経っていそう(笑)。でも、本当に難しいなとも思いますね。やっぱりアイディアがどれだけ浮かんでいても、それを実際に形にするためにはサンプル音源選びだけでもすごい時間がかかるなって、あらためて思いました。

 

もともとLogic Proをプリプロにお使いだったということですが、ご自宅にマイクなどの機材があるのですか?

Novel Core 本当に簡易的な環境ですが、KRKのモニター・スピーカーとマイク、オーディオ・インターフェースがあります。マイクはBLUE MICROPHONES Bluebird SLをずっと使っているんですけど、最近NEUMANNのビンテージ・マイクが欲しくて。200万円くらいするので、どうにかして安く手に入れられないか調べています。一度スタジオで使わせてもらったら、自分の声に合っていて歌いやすかったし、息の量が多くても少なくても、自分の声の中で一番出てほしい少しハスキーなテイストがちゃんと入るんです。

Novel Core

Novel Core

実物の拡声器を使ってレコーディングした

プロデューサーの方とセッションで曲を制作されているとのことですが、どういう基準でプロデュースしてもらう方を選びましたか?

Novel Core 僕は“ジャンルの幅の広さ”をすごく大事にしていて、ヒップホップからはみ出たものを作りたいんです。なので、ヒップホップ以外の音楽もやる方だと制作がすごくスムーズですね。例えば、ヒップホップの中に急にすごくクラシカルなものを入れたくなったりすることもあるんです。それをうまく音楽用語にできていなくても、伝えたときに理解してくれる幅の広さを持っている方にお願いしています。

 

自分が思い描いているイメージをプロデューサーの方にどうやって伝えるのでしょう?

Novel Core ほかのアーティストの楽曲で、“ここの部分のこういうテイストがサビに欲しい”みたいなことを伝えることがよくあります。実際にその楽曲を聴いてもらったり、使う音色などもイメージに近いものを探して共有したりしました。

 

プロデューサーの方とのやりとりで印象に残っている曲とエピソードを教えてください。

Novel Core 音楽ユニットのKNOTTにプロデュースしていただいた「独創ファンタジスタ」は、細かく連絡を取り合っていました。ヒップホップの中にポップでキャッチーな面を出していくことを結構意識しながら制作していて、そのためにKNOTTのお二人がわざと打ち込み然としたオケヒットを入れてくださっていたり、ほかにもアイディアをいろいろいただいて楽しかったです。曲後半の“Know it, know it~”の部分は、ブースの中で拡声器を使って声を録ったんですよ。

 

実際の拡声器を使ったのですね! 最近は、拡声器の音質をシミュレートできるプラグインもあるかと思うのですが。

Novel Core 「独創ファンタジスタ」のデモをいただいて僕がメロディを付けて送り返したときに、“ここの部分を本物の拡声器を使って録ってみても面白いかもよ”ってKNOTTのお二人から連絡が来て。実機の絶妙なゲイン感みたいなものが、プラグインよりも曲に合いそうだったのと、プラグインでは出せない独特な感じが出るかもねっていう話をして、やらせていただきました。

 

聴いてみてやはり違いはありましたか?

Novel Core 結構違った気がします。実際の拡声器を使うと吐息にも“ザーッ”というノイズが入るので、それがボーカルを包み込む役割を果たしてくれました。プラグインだと出せない味を出せたと思います。

 

Aile The Shotaさんが客演参加した「HAPPY TEARS feat. Aile The Shota」はどうやって制作したのでしょう?

Novel Core  まずはShotaを誘って、プロデューサーのMatt Cabさんと3人でBMSGのスタジオに入ったんです。この楽曲はすごくチャーチーな雰囲気にしたかったので、まずはピアノやオルガンのテイストが欲しいっていうことを伝えて、骨組みを3人で話し合いながら作りました。その後“少しブラスがほしいな……”とか“2バース目はシンセ・パッドの要素を抜いてもいいかも……”といった話をしながら制作を進めていきました。

 

メロディの案などは特に無くセッションが始まった?

Novel Core メロディは全く無い状態で、イメージだけが先にあったんです。Shotaのデビュー曲が「AURORA TOKIO」だったのもあって“仲間の歌で涙にじむ夜AURORAがかかるTOKIO”っていうフレーズをどこかに絶対入れたいという想いがあり、そのフレーズがどこにはまるかも含めて話し合いながら作っていました。

 

お二人の声にギャップがありつつも、相性が良くて素敵だと思ったのですが、全体の流れなどもこだわりましたか?

Novel Core 楽曲のテンション的に、Shotaの声が最初に出てきてほしいっていうイメージが強くあったんです。サビを僕が歌って、バースを1個Shotaが歌って……みたいないわゆる既存のコラボ曲っぽい構成ではなく、もっと入り乱れる形で作りたいよねって話しながら作っていました。“フィーチャリング”というよりは“共作”という感覚でしたね。

 

いつもイメージを固めてから制作に入るのですか?

Novel Core たまに何のイメージも持たずに行って、その場でプロデューサーの方に“どんな曲がいいと思いますか?”って聞いちゃうこともありますけど(笑)、基本的には自分の中でサビの拍の取り方などを含めて、曲のテイストを明確に決めてからスタジオに行きます。そこからプロデューサーの方と一緒に膨らませていくんです。

 

イメージが全く無い状態で制作を始めるときは、“こういう曲にしたいからこの人に頼む”というより、“この人と一緒に音楽を作りたい”という理由でプロデューサーを選んでいるのでしょうか?

Novel Core そうですね。例えばRyosuke "Dr.R" Sakaiさんとは一緒にやりたいっていう思いがずっとあったので、今回お願いしました。以前からSakaiさんが作る作品がものすごく好きだったんです。それに、Sakaiさんは音楽制作からレコーディング、ミキシングまでをすべてやってくださるので、より楽曲の完成度を高めてくれるんじゃないかと思いオファーさせてもらいました。

 

Ryosuke "Dr.R" Sakaiさんは「TROUBLE」をプロデュースされていますね。この曲はイメージの無い状態から制作が始まったのですか?

Novel Core 一度スタジオに遊びに行かせていただいて、“オープニング感がある曲を作りたいです”ということを伝えていました。あとは、ビートを“ズッズズズズッズズ”っていう取り方にしてほしいというのをとりあえず伝えて、Sakaiさんがこういうことかな?と目の前でビートを組んでくれて。僕はコード感が出てきた段階ですぐにブースに立って声を入れて、そのメロディを元にSakaiさんにさらに膨らませてもらうというやり方をしました。

 

プロデューサーの方が作ったデモにメロディやリリックを乗せていく際、何も思い浮かばない!ってなることもあるのでしょうか?

Novel Core ありますね。僕は一聴してピンと来なかったら、少なくともそのタイミングではそのトラックは使わないと決めているんです。頑張ってひねり出そうとすることももちろんできるんですけど、やっぱり合いそうなメロディが思い浮かばないときは、そのまま制作を続けないようにしています。そういうときは、お願いして別のものを作っていただきますね。

 

インタビュー後編に続く(会員限定)

Release

Musician:Novel Core(vo)
Producer:Novel Core、Ryosuke “Dr.R” Sakai、MATZ、KM、Yosi、KNOTT、UTA、Aile The Shota、Matt Cab、Yuya Kumagai
Engineer:Ryosuke “Dr.R” Sakai、HIRORON、MATZ、D.O.I.、SHIMI from BUZZER BEATS、Da.I (KNOTT)
Studio:STUDIO726 TOKYO、magical completer、HLGB、他

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