【期間限定無料公開】フジロック2年連続出演決定!Hiroko Yamamuraのアイデンティティ、制作 & DJ機材をインタビュー

Hiroko Yamamura

機材をポケットに入れてツアーできる。そのテクノロジーこそがテクノの神髄ね

アメリカ・シカゴ在住のDJ/プロデューサー、Hiroko Yamamura。2022年にBoiler RoomがYouTubeにアップしたDJ動画は300万回再生を越え、日本でも大きな話題を集めた。昨年のFUJI ROCK FESTIVAL(以下、フジロック)では2日目深夜に行われたRED MARQUEEのステージだけでなく、急遽キャンセルとなったレミ・ウルフの代演として初日のWHITE STAGEのオーディエンスを沸かせたのも記憶に新しい。今年のフジロックにも2年連続の出演が決定している彼女に、オンライン・インタビューを実施。その素顔から制作機材、フジロックへの思いなどさまざまに聞いた。

※無料公開は7月28日(月)まで

DJは特定の音楽だけが好きではダメ

──Hirokoさんはアメリカで活動されていますが、ご両親は日本人なのですよね? 

Hiroko そう。父は佐世保出身、母は東京出身なの。はっきりとは憶えていないけど、子供のころ日本で過ごした時期もあった。でも、ほぼアメリカね。人生の大半はシカゴで過ごしているわ。 

──Instagramではよく日本のアニメやゲームを元にしたミームをアップされていますね。 

Hiroko 日系アメリカ人として子供時代を過ごすと日本からの影響はあまり受けなくて、私が見つけられたのはアニメやゲームだけ。もしかしたらそれは日本文化をゆがんだ形で表現したものだったのかもしれないけど、少しでも共感できるものを見つけられると慰めになる。それが私にとってアニメやゲームだったのよ。あと、私はかなりシャイな性格だから、一人で過ごすことが多かった。マンガを読んで、現実の生活ではない幻想を抱いていた。そのほうが楽しかったの。でも、現実は必ずどこかで追いついてくるわ。それに、アメリカの中にいる日系アメリカ人は、本当のアメリカ人ではないの。アメリカ人である前にアジア人であり日系アメリカ人だから、溶け込むことは決してない。ここで生まれて、みんなと同じように話して、みんなと同じように考えても、社会は必ず区別する。日本に戻ってもそれは同じで、日本での私は日本人じゃない。日本人である前にアメリカ人なの。だから、とても不思議なアイデンティティになっているし、取り込むものはいつだって“自分が思い描いている日本”なの。 

──シカゴはダンス・ミュージックが盛んなイメージですが、子供のころからよく聴いていたのでしょうか? 

Hiroko ええ。シカゴでは、特に大手ラジオ局が最高のハウス・ミュージックをゴールデン・タイムにかけていたの。そのせいで私は逆に評価していなくて、パンクとかを聴くようにしていた。みんなと違うものを聴いてクールになろうとしすぎて、逆にクールではなかったでしょうね。でも、子供のときに耳にしていた音楽は無視できなかった。たとえファンであると認めていなくても、それが自分の一部になっていたの。心の片隅では、Farley “Jackmaster” Funk、Bad Boy Bill、Tim Spinnin’ Schommerといった伝説のDJを認識していた。本来の素晴らしさに気づいたのは、高校や大学に進学してからかな。

──DJ/プロデューサーとしてはいつごろキャリアをスタートしたのですか? 

Hiroko 私は何度もスタートしたの。最初にスタートしたときは本当のスタートじゃなかったんだと思う。“さあ、もう準備が整った。私はもうプロフェッショナルよ”と思っても、5年後には“5年前に自分が何をやっていたのかさっぱり分からない”と思ってしまい、それを何度も繰り返していた。私がプロフェッショナルになったのは、“あなたを見に行く”と人に言われたときかしら。そういう意味で私がプロとしてスタートしたのは、15年前か、10年前かもしれない。分からないわ。でも、2017年に取った休養が最後で、それからは専念して本格的に活動するようになったのよ。 

──影響を受けたDJやアーティストは? 

Hiroko 私がDJを始めるきっかけになったのは、フィラデルフィア出身のドラムンベースDJ、 Dieselboyね。あと、デトロイト出身のジェフ・ミルズにすごくインスパイアされたわ。彼は、生々しいテクノ・サウンドのパイオニアよ。それから、私に多くを教えてくれたのはシカゴ出身のDJ Hyperactive。彼はシカゴ・サウンドを生んだ人よ。好きなバンドは、スロウダイヴやマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。Kポップも好きだし、アニメ音楽も好き。できるだけたくさんの音楽を聴くと、いろんなものを参考にできる。特にDJは特定の音楽だけが好きではダメで、音楽の世界で今、何が起こっているかをグローバルに理解することがとても重要なの。 

ギターを弾くHiroko

GRETSCHのギターを弾くHiroko

“知られたくない”と“知ってもらいたい”

──DJプレイを行うときに心がけていることは何ですか? 

Hiroko みんなに楽しんでもらうこと。私がクラブに行きはじめたのは、たぶん友達を見つけることができなかったからだと思う。土曜日にすることが何もなかったけど、クラブに行けば次の週も、また次の週も同じ人たちに会えた。彼らは一緒の音楽やDJが好きだから、徐々に関係を築くようになったの。でも、今は状況がちょっと変わったと思う。毎週クラブに行っても、回転が早いから同じ人には会えないかも。DJを見にナイトクラブに行くのが当たり前になったから、オーディエンスが増えたの。それはいいことだけど、サブカルチャーの特殊化、そしてそこに行く人たちの特殊化がちょっと薄まってきたのね。たくさんの人が参加すると、共通の関心が必ずしもあるわけではないの。でも、音楽が盛んになるためには、「部外者が参加してはいけない」と言ってはいけない。例えば友達が素晴らしい音楽を作ったときに、「ほかのみんなに知られたくない!」ではなく、「こんなに素晴らしいんだから、みんなにも聴いてもらおう!」と、本来考えるべきなの。友達との間だけの秘密を楽しみたい気持ちもある一方で、あまりにも素晴らしいから自分たちだけのものにしておくのはもったいない気持ちもある。これは私がいまだによく悩んでいることなのよ。

──DJ機材へのこだわりはありますか? 

Hiroko DJを始めたころは、TECHNICS SL-1200と一番安物のDJミキサーを使っていたわ。アナログ盤をかけるのは楽しかったけど、とても重くて、かける曲にかなり限りがあったから、しばらくはラップトップとNATIVE INSTRUMENTS Traktorなどのソフトを使っていたの。今はALPHATHETAのシステムを使っているから、USBドライブだけ持って行けばいい。ツアーをするアーティストが、機材をポケットに入れて持ち運べるなんてクレイジーよね。バンドは機材を山ほど運んでライブをやらないといけないし、メンバーだって何人もいる。なのにこっちは小さなデバイス一つだけなんて、ちょっと罪悪感があるわ。でも、私にとってはそれこそがテクノの神髄、テクノロジーなの。DJを始めたころの私が夢見ていたのは「どうすればもっと楽に、安上がりにすることができるか?」ということだったけど、今やDJは誰にだってできる。プラグを差し込めば、勝手に曲をシンクロしてくれるし、音楽を探してくれるソフトだってある。でもこれは、あらゆるテクノロジーが抱えている問題なの。 

──問題とは? 

Hiroko 今ではAIベースの検索モデルがある。私たちがずっと欲しかったものが目の前にあるの。私たちがテクノロジーによる解決を求めていたんだから、こうなったのは私たちのせいでもある。そして、それを正しく使うことも私たちの仕事なの。だから私は今のテクノロジーを楽しんでいるのよ。今後起こり得ることにもエキサイトしている。でもそれは同時に今にも物事を破壊しようともしているから、私たちはクリエイターとして、そしてコンシューマーとしてしっかり責任を持たないといけない。テクノロジーを楽しんでいる人たちに対して、「これが求める限界だ」と言わないといけないのよ。

──テクノロジーを扱うからこそですね。 

Hiroko あと、エレクトロニック・ミュージックを全く嫌いな人たちもいる。彼らにとっての音楽であるためには、バンドやオーケストラによるものでないといけないわ。だからその人たちに初めてテクノを聴かせても、「これはノイズだ」と言われるだけ。それが彼らのテクノロジーの限界なのよ。テクノが好きな人なら、テクノロジーの限界の幅がもっと広いかもしれない。人工的なノイズに慣れているからね。次の世代が非人間的要素をどこまで許容するかは分からないわ。でも現時点で私は、今のテクノロジーのあり方が好きなの。

──プロデューサーとしても活動されていますが、自宅に制作環境はありますか? 

Hiroko あるわ。私って機材を買いすぎるの。「次の楽器が私の問題を解決してくれる」っていつも思ってしまう。でも、シンセサイザーやリズム・マシンをプレイすることは、エンターテインメントにもなり得るの。自分のバンドを持っているようなもので、友達に楽器を弾いてもらう代わりにマシンがいろいろとあって、あたかもみんなで一緒にバンドをやっているようなふりをする。よく使うのはELEKTRONのリズム・マシンとシンセサイザーかな。あと、NATIVE INSTRUMENTSとABLETON Liveのプラグインも使っているわ。ただ、コンピューターだけで作業するとうまくいかなくて。作業を続けていくには、単体で音が出せる何かから始めることが必要なのよ。取っかかりとして何かがインスピレーションを与えてくれないといけなくて、そのために機材を買わないといけないこともある。YouTubeに新しい機材の広告が出ていたりするおかげで、また音楽制作をする気になるの。残念ながら、物を買う中毒かもしれないわね(笑)。良くないことだけど、音楽業界をサポートすることになるから、それでいいんじゃないかしら。ところで、テクノ・サウンドって日本のサウンドだと考えているの。

──というと? 

Hiroko オリジナルのリズム・マシンはすべて、KORGやROLANDといった日本のメーカーが作ったんですもの。彼らのほとんどが、本物のリズム・マシンやベース・マシンのサウンドを作っていた。テクノロジーの限界のせいか、変わったサウンドもあったからバンドが扱うには難しすぎたのかもしれないわね。おかげでそういった楽器が安くなり、アメリカにいる人が手に入られるようになって、テクノ・サウンドになった。だからデトロイトやシカゴの人たちが作った音楽にもかかわらず、サウンドは日本的なものになったんだと思う。楽器やサウンドそのもの、仕組みのロジックやプログラミングの仕方にも日本的な考えがあると思っているわ。

Hiroko Yamamuraの制作スペース

Hiroko Yamamuraの制作スペース。コンピューターはAPPLE Mac Studio、DAWはABLETON Liveで、オーディオ・インターフェースはUNIVERSAL AUDIO Apolloの1Uサイズの初期モデルを使用。FOCUSRITE Scarlett OctoPreを併用して入出力数を増やし、さまざまなハードウェアと接続しているが、レイテンシーを考慮して同時に録音するのは最大で6ch分にとどめているとのこと。デスクの右側にはNATIVE INSTRUMENTS Maschine Studioの姿も見える

Monomachineのクールなノイズが好き

──制作でよく使用している機材を詳しく教えてもらえますか? 

Hiroko 一番使っているのは、ELEKTRON Monomachine。いまだにこのマシンの使い方をちゃんと知らないのかもしれないけど、クールなノイズが出せるから楽しんでいる。それから、ELEKTRON MachinedrumとSyntaktもすべてに使っているわ。Syntaktには独特のワークフローがあって、一度それに慣れるととても制作が速くなる。ELEKTRONの大ファンなの。ソフトでは、NATIVE INSTRUMENTS Maschine。サウンドを選んだときに提示されるデモンストレーションがとても素晴らしくて、そこからインスピレーションを得られることもあるから重宝しているの。 

ハードウェア類

スタンドにセットされたハードウェア類。上段にMOOG Slim Phatty、BEHRINGER Pro-1、ELEKTRON Analog Rytm、Ma chinedrum SPS-1、その下にROLAND SH-101、ELEKTRON Monomachine、Analog Four、Digitakt、Syntakt、その下にB EHRINGER MS-101、KORG Minilogue XDなどが見えるほか、写真に写っている機材以外にも多数所有する

ELEKTRON Monomachine

制作で最も多用しているハードウェアというELEKTRON Monomachine。カナダのレーベルMinusから作品をリリースするHeartthrobより譲り受けたそうだ

──モニター・スピーカーは? 

Hiroko ADAM AUDIO A7Xね。ヘッドホンは山ほど持っているけど、メインは20年前から使っているSONYの安価なモデル。肝心なのはクオリティではなく、その機材をよく知っていることなの。そのヘッドホンに慣れていれば、できること、できないことがちゃんと分かる。いつも車の中で音楽を聴いていたら、そこがその人にとって最高のリスニング・ポイントであって、新しい音楽をかけるのに最適な場所ということになるわ。 

ADAM AUDIO A7X

モニター・スピーカーのADAM AUDIO A7X

──ミキシングなどのポストプロダクションもご自身で行っていますか? 

Hiroko 以前はそうしていたけど、今は人にやってもらっている。何度も恥ずかしい思いをしてきたわ。特にテクノの場合、最初から最後まで自分でやらないといけないという考えがあって、人によってはそれがとても重要なの。自分がありとあらゆることをやるというのがアートの旅の一環なのね。でも私の場合、自分には幾つか不得意なものがあることに気づいた。一つには、聴こえ方が以前とは違うということ。特にしょっちゅうDJをやっているとね。あと、そのときは正しかったと思えたことも、今聴き返してみると、「このレコードをリリースしたなんて信じられない!」と思ってしまうことも多くて。時間をおいて聴くと、曲はまあまあだけど、ミキシングがあまりにもひどかった。ミキシングとマスタリング用にプラグインを買って、「使い方はもう完璧!」と思ったことも一因だったかな。バカみたいなプラグインをすごく安く買って、それですべての問題が解決したと思い込んでいたけど、実はソフトにワークフローを任せたことで事態を悪化させていたのよ。

──では、現在はエンジニアに任せている? 

Hiroko 大抵はラフ・ミックスを作って人に送る。長年私と一緒にやって来て、私が犯したミスをちゃんと分かってくれる人にね。もしくは、たまたまスタジオにいた友達に、「これは全く間違っている。こことここを直さないといけない」と言われたら、その意見を取り入れる。というわけで、ミックスに関しては自分を信用していないの。それに私は、人とコラボレーションして曲作りするのが好き。コラボ相手はサウンド・エンジニアリングのエキスパートであることも多いから、作曲能力だけでなく、エンジニアリング能力も物を言うの。おかげで、自分がどういった方向に進みたいかが分かる。私も多少は学んでいると思うけど、前に戻って自分だけでやろうとするたびに、1年前の自分よりひどくなっていると感じるの。

ついに私の居場所が見つかった

──ここからフジロックについて。去年は急遽WHITE STAGEでの代役も含め2ステージありましたが、率直な感想を伺えますか? 

Hiroko 超ビビったわ。フジロックに出演できるということ自体にものすごく驚いていたの。まさに夢が叶ったわけで、とても光栄だった。だから、本番2日前に既にとてもナーバスになっていたところで、「代役を務めてくれませんか?」と言われてパニックだったわ。でも、メイン級のステージのショウを断わったら本当にバカよね。クールに対応しようと思って、「ええ、問題ないわ。ぜひやらせてください」と言ったの。私にできる最善のことは、あまり考えすぎないことだったわ。 

──ステージでのパフォーマンスから、そこまで慎重になっていたとは意外でした。 

Hiroko 自分がお客だったらどうだろうと考えたのよ。もしも私がチケットを買って、クールなポップ・アーティストを見たいのにステージに中年のDJがいたとしたら、「何なの、これ?」って思うでしょう。彼らががっかりしないよう心がけたの。自分にとってナンバーワンのアーティストがいなくても悲しまないようにね。しかも、私の後に出るのはPeggy Gouだった。彼女は国際的で有名なDJだから、「何てこと! 私はPeggy Gouの前に出ないといけないんだわ!」と思ったわ。彼女は美しくて素晴らしいのに、私は彼女とは全然違うからすごく不安になったの。でも、こんなチャンスは誰にでも与えられるものではない。私の立場になるために何でもやる人たちが大勢いると思うと、私は引き受けないといけなかった。このチャンスをつかめなかった人が大勢いて、私はその人たち全員のためにやらないといけなかったの。その中の1人が私でもおかしくなかったんだから。

──同じステージに立てる人がどれだけいるのかということですね。 

Hiroko 結果的にはとてもうまくいって反応も素晴らしかった。すると、もともと予定されていた翌日のセットでは、あのエナジーを保ちつつ「昨日のほうが良かった」と思われないためにはどうすればいいかを考えたの。もしかしたら2日とも見てくれている人たちがいるかもしれないから、翌日は何か違うことをやらないといけない。同じショウだって思われないために、違うエナジーにして、違うステージで、違うパーティにしたいと思ったのよ。それは達成したと思うけど、実際のところは分からないわね。日本ではいつだってそこが難しいの。みんなものすごく礼儀正しいから、たとえセットを気に入らなくても誰もそう言ってくれないわ。みんな、「よくやった! おめでとう!」と言ってくれる。アメリカだったら、「あのショウはそんなに良くなかったな!」って言うでしょうけど、日本ではマナーとして誰もそんなこと言わないからね(笑)。でも、本当に最高の時を過ごしたわ。今年はそれに続くものだから、プレッシャーは同じくらいあるの。私の知る限り、DJが2年連続で出演するなんてめったにないみたいだから、今年は何か違うことをやってみんなに楽しんでもらうということが重要なのよ。

昨年のフジロック

昨年のフジロック、RED MARQUEEでのHiroko Yamamuraのステージの模様

──フジロックの良さは何だと思いますか? 

Hiroko さまざまな年齢層がいること。家族もいるし、年配のファンもいる。フジロックは、最近では国際的なものになっているけど、多くは日本人のオーディエンスということもあってか、これ以上ないくらいに歓迎されたわ。曲をかけはじめた途端、ナーバスな気持ちや自信のなさはすべて吹っ飛んだの。それはオーディエンスが返してくれたもののおかげよ。

──ほかのアーティストのステージを見たり、会場を回ったりすることはできましたか? 

Hiroko できたわ。すぐにザ・キラーズを見に行ったの。ベス・ギボンズも素晴らしいパフォーマンスだった。

──昨年、石野卓球さんがInstagramにアップした、Risa Taniguchiさん、牛尾憲輔さんと一緒に写っていた写真が印象的でした。 

Hiroko Risaはとっても仲のいい友達なの。彼女は日本を代表するABLETON Liveの使い手で、日本のテクノの素晴らしい親善大使よ。私は彼女の大ファンでもあるから、Risaのことはどれだけ褒めても褒め足りないわ。彼女は本当に、現在の日本のテクノ・ミュージックの一番の好例よ。石野卓球さんのことは昔からずっとファンなんで、彼を紹介してくれってRisaに頼んでいたの。私が「あっ!ねえ、あの人って石野卓球?」って言うと、Risaが「そうよ、彼に会いたい?」と言うから、「何てこと! 彼を気まずくさせないかしら?」とは思ったけど(笑)。牛尾さんの音楽も大ファンなの! 去年のセットは『チェンソーマン』の曲から始めたわ。アメリカでは『チェンソーマン』がものすごい人気だったし、彼の楽曲のすべてに圧倒されているの。彼は私のところにやって来て自己紹介してくれたんだけど、私は「あなた、agraphなの? 信じられない!」ってね(笑)。あのときの私は大ファン・モードだった。一度にみんなと会えたんですもの。あの写真はレジェンドたちと一気に会えて圧倒されている私なの(笑)。

──今年のパフォーマンスのプランとして、既に考えていることはありますか? 

Hiroko 前後に出る人たちと合うセットにすること。その日はラインナップが良いし、特に深い時間のRED MARQUEEではパーティを続けるために、みんながエナジーを使いすぎない程度に一夜を過ごせるようにしたいわね。曲は1カ月前くらいまで何も決めないでおくわ。クラシック・テクノに対してのリスペクトを示すものにしたくて、新しい曲と同時に昔の曲もかけたいけど、筋が通っているようにはしないとね。去年は考えすぎて、ビデオや写真を見ると私がステージに上がることにビビっていたのが分かる。目に恐怖がちょっと浮かんでいたわ。今年はそこをなんとか解決して、もうちょっとゆったりとしたアプローチで臨みたいわね。

── 最後に、たくさんの読者がHirokoさんのステージを楽しみにしていると思います。彼らに向けてメッセージをお願いできますか? 

Hiroko どこにいても浮いていた中年の日系アメリカ人女性が、日本のオーディエンスに受け入れられたことで、ついに私の居場所が見つかった気がしたのよ。だから、そのことをとても感謝しているの。いまだにすごく圧倒されていて、本当に起こったことだとは信じられない。皆さんに会ったときに、とてもフレンドリーに接してくれて、話を共有できて、とてもリスペクトしている気持ちがある。去年のフジロックで最高だったのは、ただそこら中を歩き回って人と会えたことなの。だから今度日本に行ったときには、読者の方と出会えたらと思っているわ。みんなで音楽やアニメの話をして、時にはジョークも飛ばしたい。そうなったら超クールね!

Information:『FUJI ROCK FESTIVAL'25』

7月25日(金)26日(土)27日(日) 
新潟県 湯沢町 苗場スキー場にて開催!

もはや日本の夏の風物詩と言っても過言ではないFUJI ROCK FESTIVALが今年も行われる。全長4kmにもわたる苗場スキー場を舞台に、国内外から200組を超えるアーティストが出演。大小さまざまなステージがあり、常に音楽と触れ合える環境が広がっている。Hiroko Yamamuraの出演は開催初日の25日(金)深夜、RED MARQUEEを舞台に行われるPLANET GROOVE。苗場の夜更けを盛り上げてくれること間違いなし!  開催概要や出演者、最新情報は下記リンクからオフィシャル・サイトへ。“初めてだけど大丈夫かな……”“何が必要なの?”という方は初心者向けガイド・ページ、Start Your FUJIROCKも併せてチェック!

FUJI ROCK FESTIVAL '25 オフィシャル・サイト

初心者向けガイド・ページ Start Your FUJI ROCK

 

関連記事