ACOUSTIC REVIVE クロス・レビュー「D-Subブレイクアウト・ケーブル」

“原音忠実”の理念のもと、ケーブルなどのオーディオ・アクセサリーを手掛けるACOUSTIC REVIVE。今月クロス・レビューするのは、D-Subブレイクアウト・ケーブルだ。

第15回「D-Subブレイクアウト・ケーブル」

ACOUSTIC REVIVE代表
石黒謙、氏の技術解説

これまでのD-SubケーブルやD-Sub/XLRケーブルは多芯マルチケーブルを流用したものに過ぎず、8ch分のケーブルが狭苦しい中に混在しているため、チャンネルごとのケーブル同士の干渉が発生し、著しく音質が劣化してしまいます。D-Subケーブルは音楽制作において極めて重要な個所となるため、この部分での著しい音質劣化はクオリティ確保にとって致命的です。

ACOUSTIC REVIVEのD-Subケーブルは各チャンネルのケーブルが完全に独立しており(上の写真参照)、ケーブル自体の構造もノイズ干渉に強い3芯シールド構造で、圧倒的な伝送スピードを実現するテフロン絶縁の“PC-TripleC”単線導体(世界初の音響専用導体)、静電気の発生を防止する天然シルク緩衝材やトルマリン含浸シースなどXLRケーブルとしても最高峰のものを採用し、従来のD-Subケーブルの使用では到達できなかった領域のクオリティに昇華させます。

<Price>
●D-Sub 25ピン/XLR(オス):88,000円(1組/1m)
●D-Sub 25ピン/XLR(メス):88,000円(1組/1m)
●D-Sub 25ピン/D-Sub:88,000円(1組/1m)
●D-Sub 25ピン/TRSフォーン:88,000円(1組/1m)
●D-Sub 25ピン/バンタム:88,000円(1組/1m)
※完全受注生産
※長さなどの特注可能(要見積もり)
※上の写真は2mのD-Sub 25ピン/XLR(オス)

Cross Review

Recording/Mixing Engineer
浦本雅史
U<Profile>2014年、青葉台スタジオのチーフ・エンジニアに就任。サカナクションやplenty、DAOKOといった先鋭的なアーティストの録音/ミックスを数多く手掛けている。

再生能力がすこぶる高く正直な音
過渡特性やSN比に優れる

サカナクションのレコーディングにD-Sub/XLR(オス/メス)などのケーブルを試してみました。録音した楽器はシンセ類やベースで、併用したAD/DAコンバーターはLYNX Aurora 16。DAWはAVID Pro Toolsです。

まずは、普段使用しているBELDENやMOGAMIのケーブルに比べて解釈が現代的というか、周波数レンジが広く解像度が高いと思いました。個人的にすごく好きな音です。上下がしっかりと伸びているため中域が控えめに感じられましたが、裏を返せばピーキーではないということなので、高域の方も嫌味なく聴けます。その高域はと言えば、スピードが速く、トランジェント特性が非常に良い。低域についても“きちんと伸びているけど遅くない”といった印象で、楽器の音に含まれる成分がそのまま再現されているようです。実際に、ベースの録り音をリハーサル用のスピーカーで鳴らしてみると、ベース・アンプを使わなくてもかなりの存在感。SN比の良さも手伝い、実にストレートな音で、“膜がかかった感じ”は一切ありません。

サカナクションの曲では「ミュージック」や「多分、風。」といった電子音の割合が高いものにマッチする印象。その傾向から考えて、古き良き音を求める人より、モダンなサウンドを追求する人に向くと思います。DAWからアウトボードなどへ出しても、原音のレンジを損なうことはないでしょう。

再生能力がすこぶる高く非常に正直なケーブルなので、シビアではありますが、うまく付き合えば“自分を高めてくれるもの”だと思います。サカナクションのライブ・セットにも組み込んだので、夏にかけての公演が楽しみですね。

Composer/Arranger
toku(GARNiDELiA)
t<Profile>GARNiDELiAのコンポーザー。以前よりアレンジャー/マニピュレーターとしてアンジェラ・アキ、DIR EN GREY、LiSA、TrySail、ClariSなどに携わる。

全帯域にわたってピュアな音
エフェクト処理の時間が短縮できる

GARNiDELiAを始めた当初から、楽器の録音以外は自宅作業スペースで行ってきたこともあり、日々いろいろなケーブルを試してきました。最近のAD/DAコンバーターやミキサーなど、8chのD-Sub端子を持った機器が増えていることもあって、ACOUSTIC REVIVEのD-Sub/XLR(2m)をPRISM SOUND ADA-8XRと、サミング・ミキサーを兼ねたSSL X-Deskの間に導入しました。

導入直後から音のレンジが広く透明感があり、楽器のトランジェントなどが明確に分かるようになりました。どこかの帯域に偏ることもなく、ゲインが上がったようなパワー感があり、全域に繊細でピュアな空気感を感じます。特にミックス時のEQやコンプ、空間系の処理にかかる時間の短縮につながり、音数にかかわらず好きな音にする判断が楽しくなりました。現在は歌録り時のマイクにも同社XLRケーブルを使っています。パソコン・ベースの制作が主流になった今こそ、録音機材の一つとしてケーブルを選ぶことが、制作環境の確実な向上につながると思います。

Sound Engineer
葛西敏彦
k<Profile>レコーディング/PAを問わず活躍するエンジニア。蓮沼執太、高木正勝、スカート、大友良英、Okada Takuro、雨のパレード、トクマルシューゴなどを手掛けてきた。

ソース本来のサウンドを
輪郭までクリアに再現

ACOUSTIC REVIVEのD-Sub/バンタム・ケーブルと、普段使っているオーディオI/O純正のD-Subケーブルを聴き比べてみました。試聴に用いたのは、自分がミックスした音源です。まずは周波数レンジに一番の違いを感じました。上下がものすごく広がり、スピーカーの再生可能帯域がワイドになったかのようです。特に高域の変化は著しく、音の天井が広がり、一つ大きな空間で鳴るようにスケールが大きく聴こえました。普段とは別世界の印象です

中域もかなり変わって、各楽器の間にあるスペースがより見えます。それにより、普段は中域が塊になって聴こえていたのだなと感じることができました。塊になるからこそのパワー感もあると思いますし、それは減ったように思いますが、ACOUSTIC REVIVEのケーブルを使うことでその音本来の形が輪郭までクリアに再現される印象です。音がそもそもどう記録されているのか素材のクオリティをきちんととらえられるので、作業開始からこのケーブルを使用すると、より明確に判断しながら進められそうです。

<製品概要>
ACOUSTIC REVIVE D-Subブレイクアウト・ケーブル

(本稿はサウンド&レコーディング・マガジン2018年8月号からの転載となります)