YAMAHA PX Series導入レポート〜サウンドプロジェクト

カスタムLSIを使用した新規設計のクラスDエンジンと、YAMAHAのDSP信号処理技術を統合して生まれた2chパワー・アンプ、PX Series。1,000W(8Ω)×2のPX10でも実売で10万円前後という低価格も話題となり、今年6月の発売と同時に多くのプロが導入を始めた。このレポートでは、そんなPX Seriesユーザーを訪れて、導入の経緯や使用感などを伺っていく。今回は埼玉県北部、熊谷市でPAを中心に照明や特効まで手掛けるサウンドプロジェクトにうかがい、代表の伊藤岳雄氏にPX10導入について話を聞いた。
▲サウンドプロジェクト代表の伊藤岳雄氏 ▲サウンドプロジェクト代表の伊藤岳雄氏

低消費電力でパワーのあるアンプを求めて

サウンドプロジェクトで手掛けるPAは、数千人規模のコンサートから、ホテルでのディナー・ショウ、学園祭、町内のイベントまで多岐にわたる。今夏導入されたPX10が活躍するのは、主に小規模の現場だそうだ。

「小さな現場ですと、音響用に使えるコンセントは全体で1〜2口ということがほとんどですから、消費電力が少なくて、パワーがあるアンプをずっと探していました。BOSE 802やELECTRO-VOICE SX300などのスタンド・スピーカーを2対向で使う場合、4Ωで片側出力600W程度が必要ですが、従来、これを鳴らすパワーのあるアンプは消費電力が高いものが多かった。たまたまPX8をお借りする機会があり、なかなか鳴るアンプだなという感触を得たので、余裕を持って使うことを考えてPX10を購入することにしました。これ以上の出力が求められる現場では、仮設電源を用意しないといけないケースがほとんどですしね」

伊藤氏が指摘するように、PX10の消費電力はわずか310W(1/8出力、4Ω、ピンク・ノイズ)だが、4Ω負荷で1,200W×2の出力が得られる。スタンド・スピーカー用だけでなく、音量が求められるステージ・モニター用としても現場でテストを重ねているそうで、「学園祭シーズンでも活躍してくれそう」と期待を寄せる。持ち運びを考えると、軽量かつコンパクトなことも重宝しているそうだ。

「最近のクラスDアンプは奥行きが長いものが多いのですが、PX10はこれまで使っていた奥行き360mmにそのまま収められました」

▲サウンドプロジェクトではラックのフロント側にパッチを設けるようにしているという。PX10の奥行きは388mmで、フロント・ガードを除くと361mm。ラック本体360mmのケースにちょうど収まり、ケースは以前から使っていたものをそのまま使用できたそう ▲サウンドプロジェクトではラックのフロント側にパッチを設けるようにしているという。PX10の奥行きは388mmで、フロント・ガードを除くと361mm。ラック本体360mmのケースにちょうど収まり、ケースは以前から使っていたものをそのまま使用できたそう

設定保存機能は設備音響納入にも便利

DSPを搭載しているPXシリーズは、各種設定の保存も可能となっている。サウンドプロジェクトでは、公共施設や学校への音響機器納入も手掛けており、そうした際にも便利だという。

「学校の設備などではオペレーターが付くわけではありませんから、無理な使い方をされることが多いんです。ある学校で、飛んでしまったアンプの代替機としてYAMAHAの旧製品、PM2002M(出力240W×2)をお貸ししたところ、スタンド・スピーカーでアンプのメーターがピークまで振れるような使い方をされていた。そうした状況を見て、壊れたアンプのリプレースとしてある程度出力に余裕があるPX5を選び、設定であらかじめ出力を抑えて納入しました。USBメモリーで設定を残しておけるのもこうした納入事例には便利ですね」

ところで、熊谷市と言えば、夏の猛暑が全国的に知られる土地。伊藤氏は、真夏の屋外では、ラックにサーキュレーターで風を当てるなどさまざまな工夫をしてその暑さから機器を守ってきたそうだ。

「PXシリーズの動作保証温度は0〜40℃ですが、とりあえず今夏は越えられたので、温度の問題はクリアしたかなと思います。あとは長期間の使用にどれだけ耐えてくれるか期待したいですね。実は、PXの半額くらいのクラスDアンプもこれまでに導入してきましたが、耐久性に少々不安を抱えていました。我々の仕事では現場で音が出ないということはあってはならないので、たとえ倍の価格でも、信頼のおけそうなPXでそろえていった方がいいのかなと今は考えています」

電源コードの誤脱防止クランプがついているのも、低価格でも信頼の置ける製品であることが伺えるポイントだと伊藤氏は高く評価していた 電源コードの誤脱防止クランプがついているのも、低価格でも信頼の置ける製品であることが伺えるポイントだと伊藤氏は高く評価していた

サウンドプロジェクト http://spinc.ne.jp/

製品情報

PX Series オープン・プライス

YAMAHA PX10 YAMAHA PX10

カスタムLSIを使用した新規設計のクラスDエンジンを搭載。1チップに必要な機能を凝縮したシンプルな構成で、軽量化と高信頼性を両立する。高性能DSPと信号処理技術を組み合わせた柔軟なプロセッシングを実現。YAMAHAスピーカーに適したプリセットに加え、コンフィグ・ウィザードによる簡単確実なセットアップが可能となっている

  • PX10 市場予想価格98,000円前後 1,000W×2(8Ω)、1,200W×2(4Ω)、700W×2(2Ω)
  • PX8 市場予想価格85,000円前後 800W×2(8Ω)、1,050W×2(4Ω)、600W×2(2Ω)
  • PX5 市場予想価格72,000円前後 500W×2(8Ω)、800W×2(4Ω)、500W×2(2Ω)
  • PX3 市場予想価格60,000円前後 300W×2(8Ω)、500W×2(4Ω)、300W×2(2Ω)

■PX Seriesに関する問合せ:ヤマハミュージックジャパン プロオーディオ・インフォメーションセンター
http://www.yamahaproaudio.com/japan/ja/products/poweramps/px/index.jsp

サウンド&レコーディング・マガジン2016年12月号より転載

Presented by YAMAHA