グレゴリ・ジェルメンがLEWITTでギターを録る!

斬新なアイディアと使いやすさのバランスがいい


日本にとどまらず、アメリカやアジアを舞台にハイクオリティな作品を生み出し続けているDigz, Inc. Group。その多くのレコーディングを手掛けるハウス・エンジニアのグレゴリ・ジェルメン氏が、LEWITTのマイクで同プロダクションに所属する新進のクリエイター=Mitsu.Jのギター演奏をとらえた。Photo:Takashi Yashima04_LEWITT009

マイルドで汎用性の高いLCT240


収録に使用したのはDigz, Inc. Groupが所有するDCHスタジオA。SSL SL4048Gコンソールをはじめ、数多くのビンテージ・アウトボードやマイクを備えるプロフェッショナル・スタジオだ。まずコンデンサー・タイプのLEWITT LCT240を使ったアコースティック・ギター録音の模様からジェルメン氏に話を聞いていく。05_Lewitt-LCT240-01LCT240
オープン・プライス(市場予想価格:32,222円前後)
電磁干渉を防止し130dBのダイナミック・レンジを実現。オートマティック・アッテネーションなど多くの新機能を搭載する
■形式:コンデンサー
■指向性:単一
■周波数特性:20Hz〜20kHz
■最大SPL(THD 0.5%):146dB(PADオフ)、156dB(−10dB PAD)、166dB(−20dB PAD)
■外形寸法:52(W)×138(H)×36(D)mm
■重量:310g
08_LEWITT044 ▲LCT240はパッドやハイパス・フィルターの設定を本体のボタンで行う。ボタンを長押しするとLEWITTのマークが赤く点灯し、録音レベルを最適化するオートマティック・アッテネーション機能がオンになる
  「今回のルーティングですが、僕自身がマイクのキャラクターを把握するために、普段スタジオで使っている機材をそのまま使用しました。マイクプリのCHANDLER LIMITED Germanium PreampからAVALON DESIGN VT-747SPで軽くEQし、オプト・コンプのTUBE-TECH CL1Bを経由してAVID 192 I/Oに入るという流れで、AVID Pro Tools HD 10に24ビット/48kHzで録っています」
Mitsu.JはMARTIN D-28で柔らかなアルペジオ、GIBSON J-50ではやや激しめのカッティングを披露。レコーディングを終えたジェルメン氏は、LCT240について「全体的にすごくマイルドな特性だと思います」と語り始めた。
「アコースティック・ギターは録音するのが難しい楽器で、ピッキング・ノイズなどさまざまなアタック音に注意しなければなりません。コンデンサー・マイクはそうした音を拾いがちなのですが、LCT240はそれらのノイズがトリミングされたようなサウンドで録れます」
マイキングについては「ゲインが若干低めなので、オンめにセッティングすると良い音で録れるでしょう」と続ける。
「カプセル自体もシビアではなく、マイキングによって音が大きく変わることはありません。拾う音のバランスが良く、ボディがしっかりしている印象。周波数帯域的にもリニアで、300〜400kHzあたりにややディップがありますが、逆に使いやすいかもしれません。高域も変なピークが無く、ちょうど良い感じです」
09_LEWITT038 ▲アコースティック・ギターのボディとネックの境目を狙ってLCT240をマイキング
自身の演奏をヘッドフォンでモニターしていたMitsu.Jも「レンジが広く、変なピークが無いように感じました」とLCT240の印象を語る。
「ピーク成分が強いマイクの場合、モニターでアタック音が気になって演奏に集中できないことがあります。でも、今日はそれを特別意識することなく弾き切れたので、バランスの良いマイクと言えるのではないでしょうか。初めは価格帯の先入観から、無理に高域を持ち上げたようなキャラクターかな?と予想していたのですが、実際に聴いてみたら高域までフラットに伸びていましたね。普段アコギの録音にはAKG C414を使うことも多いのですが、それと似たレンジの広さも感じられました」
Mitsu.Jは「こうした特性はプライベート・スタジオでも使いやすいと思います」と続ける。
「例えば、自宅で仮歌を録っている最中にギターのアイディアが浮かんだら、マイクは替えずにどんどん録っていきたい。いろいろな楽器を1本のマイクでこなせるのが、自宅録音の環境では重要だと思います。その点、LCT240のクセの無いオールマイティなキャラクターは、いろいろなパートを録るのに有利だと思います」

太さとレンジ感を兼ね備えたDTP640REX


続いてDTP640REX、MTP440DMをアンプに立てて、エレキギター(クリーン/ひずみ)のレコーディングを行った。
10_LEWITT022 ▲DCHスタジオAのコントロール・ルームでのエレキギターの録音の模様。アンプはMARSHALL 6100を使用
 DTP640REXはダイナミック/コンデンサーのデュアルエレメントを採用したユニークな構造だが、ジェルメン氏はルーティングについて次のように語る。
「マイクプリはSL4048Gのものを使い、DTP640REXのダイナミック/コンデンサー部、MTP440DMの3本のバランスをフェーダーで取った後にNEVE 1073、UNIVERSAL AUDIO 1176LNを通してPro Toolsに入れています」
DTP640REXの構造については「エンジニア的にすごく賢いアイディア」だという。
「普段の録音でも、太さとレンジ感の両立を狙って、アンプにダイナミック/コンデンサーの2本のマイクを立てることはよくあります。ただそうすると、位相の問題で苦労することが多いんですよ。その点、DTP640REXは各エレメントの位置がとても近いので、位相がズレません。また両エレメントの録り音を個別に取り出してミキサーでブレンドできるのもいいですね」 06_Lewitt-DTP640REX-01DTP640REX
オープン・プライス(市場予想価格:32,222円前後)
ダイナミックとコンデンサーのデュアルエレメントを搭載した画期的なバスドラム用マイク。3ポジションのEQも備える
■形式:ダイナミック&コンデンサー
■指向性:単一
■周波数特性:20Hz〜16kHz(ダイナミック)、20Hz〜20kHz(コンデンサー)
■最大SPL(THD 0.5%):150dB(PADオフ)、160dB(−10dB PAD)、170dB(−20dB PAD)
■外形寸法:71(φ)×158(D)mm
■重量:755g
12_LEWITT042 ▲DTP640REXには専用ケーブルDTP40が付属。ダイナミック/コンデンサーそれぞれのエレメントが拾った音を取り出せる
07_03MTP440DM
オープン・プライス(市場予想価格:10,185円前後)
ドラム、管楽器からボーカルまで用途の広いダイナミック・マイク。均質性に優れた設計でハウリングやカブリを抑える
■形式:ダイナミック
■指向性:単一
■周波数特性:60Hz〜16kHz
■外形寸法:39(φ)×159(D)mm
■重量:280g
11_LEWITT037 ▲キャビネットへのマイキング。左上のスピーカー・ユニットを狙ってMTP440DMとDTP640REXをオンマイクで設置
各マイクのバランスは「DTP640REXのコンデンサー部をメインに、ダイナミック部、MTP440DMと階段状に下がっていく感じ。DTP640REXが太めのキャラクターだったので、MTP440DMで若干高域を足しました」と説明する。
「DTP640REXは低域用というイメージでしたが、コンデンサー部は予想以上にレンジが広く、中域も太かったですね。一方のダイナミック部はすごくフォーカスが合っていて、アタックがピタッとくる感じ。特にひずみ系のギターではレンジが広く感じられ、ダイナミック部のパワー感とコンデンサー部のレンジ感がうまくブレンドできているように感じました。DTP640REX1本だけでも十分に良い音で録れるでしょう」
セッションを終えたジェルメン氏は「LEWITTの製品は初めて使いましたが、これまでに無かったマイクという印象です」と使用感を語る。
「斬新なアイディアが盛り込まれていますが、それをプロから自宅スタジオまで使いやすいバランスで製品化しているのがいいですね。ルックスも安っぽくないし、ブランディングとテクノロジーのバランスが面白い……マイクは最も革新の少ない機材で、エンジニアの間では依然としてビンテージの人気も高いですよね。そんな中で、新興メーカーのマイクを試せるのは楽しい。レコーディングにおいては、音の最初の入口がマイクになるわけで、その“原点”から進化させるというLEWITTの哲学は、すごく正しいと思います」 

録音したファイル(24ビット/48kHz WAV)のダウンロード


アコースティック・ギター①(LCT240)
アコースティック・ギター②(LCT240)
エレキギター①(DTP640REX+MTP440DM)
エレキギター②(DTP640REX+MTP440DM) グレゴリ・ジェルメン
【Profile】パリ育ち。20歳で来日し、2011年にDigz, Inc. Groupに入社。ハウス・エンジニアとして宮野真守、板野友美、D-LITE(from BIGBANG)などのレコーディング/ミックスを手掛けるなど活躍中Mitsu.J
【Profile】Digz, Inc. Group所属。ロサンゼルスのMusicians Instituteに2年間留学。帰国後はギタリスト/プロデューサーとして倖田來未、D-LITE(from BIGBANG)、WORLD ORDERなど幅広い作品を手掛ける 

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