
M7CLの操作性を受け継いだ
直感的かつスムーズな操作性

▲快適な操作を実現した新開発のフェーダー
▲高い視認性を誇るチャンネル・ネームと
カラー・バー
▲即時にパラメーターを操作できるUSER DEFINED KNOBS
▲CL StageMix for iPad
▲CL Editor
CLシリーズのラインナップは入力数の違うCL5、CL3、CL1の3機種で、各モデルの入力数は別途用意されるI/Oラックに準拠する。CLシリーズはコンソールとI/OラックをLANケーブル(CAT5e、STPグレード以上)で接続し、伝送規格にはDanteを採用。ちなみにM7CL-48ESの伝送規格がEtherSoundであったことからも、CLは従来のラインナップとはコンセプトの違うシリーズと言える。I/Oラックは入力数違いでRio322
4-D、Rio1608-Dの2種類をラインナップ。モノラル・インプット・ミキシング・チャンネル数は、CL5から順に最大で72/62/48chとなるほか、全モデルに8chのステレオ・インプット・ミキシング・チャンネルを搭載する。
続いてCLシリーズのフェーダー構成を見ていくと、CL5では16本(左ブロック)、8本(Central
ogic)、8本(右ブロック)2本(マスター)となる。Mix出力バスは24(インプット・トゥ・マトリックス機能により最大32バスとしても使用可能)で、大規模なコンサートにも余裕で対応する。また、8ch仕様のCentralogicブロックはM7CLから引き継がれており、定評のある操作性もさらに向上。このように進化しつつも、ディスプレイ左側のツマミの配列にはあえて手を加えないことで、M7CLを使用したことがあればすぐに操作できるという点で、高いユーザビリティを獲得している。
またCLシリーズでは、タッチ・パネル式のディスプレイの視認性が高まっただけでなく、フェーダーやノブの操作感も一新。特にフェーダーは指のフィット感を高め、どの角度からもパネル面の表記が見やすいデザインを採用している。また各チャンネル・フェーダー上部のチャンネル・ネーム部分にカラーバーを搭載し、屋外でも優れた視認性を発揮する。これらによってさらにスムーズなオペレートを可能としているのだ。
CLシリーズの操作性向上に一役買っている新機能のUSER DEFINED KNOBSに注目したい。ディスプレイ右横に縦配置されたこの4つのノブは、フェーダー・バンクの選択に関係なく、アサインしたパラメーターを素早くオペレートすることが可能。例えばインプット・チャンネルとセンドの送りなどを設定すればボーカルのディレイ飛ばしを正確に操作できる。また、TOUCH AND TURNをアサインすれば、ディスプレイに表示されているCompのアタックやリリースといったノブ型のパラメーターをタッチするだけでUSER DEFINED KNOBSでの調整が可能で、"タッチしてターンする"直感的なオペレートを実現している。加えて新たに最大1,000msのインプット・ディレイを搭載。特に生音のライブ・オペレートの際に発揮するだろう。
CL5とCL3にはAPPLE iPadを設置するためのステンレス製ステーを搭載。YAMAHAではおなじみのリモート・コントロール用のAPPLE iP
adアプリ、StageMixにも対応する。ステージ・モニターからサウンド・チェックまで、iPad片手にCLシリーズのミキシング・パラメーターをコントロールすることが可能だ。
またデジタル・コンソールにとって欠かせない事前のコンソール・セットアップが行えるエディター・ソフト(Mac/Windows対応)のCL Editorも付属。こちらはインストールが簡易化され、さらに使いやすくなっている。
現場ユーザーが語る
高い基本機能とデジタル伝送の利便性
ここからは既にCLシリーズを導入する2社のPAカンパニーに、先述した操作性を中心に話を伺った。パブリックアドレスの武井一雄氏、そして大阪・吹田にあるセカンドステージの若松吉己氏、西田敬氏、松原智也氏にご登場いただいた。
まず、武井氏はCLシリーズの操作感について"レスポンスの良さ"を指摘する。
「フェーダー・バンクを切り替えたときのフェーダーの動きが以前より機敏になったのに加えて、タッチ・パネルの反応も早く、操作フィーリングはかなり向上しています。このようにキビキビとした反応だと、気分良くオペレートできますね」
操作面で重要となるフェーダー構成に関しては、より柔軟な設定ができるようになった点についてセカンドステージの西田氏はこう言及する。
「PM5Dのフェーダー構成は一面で裏返る仕様でしたが、CLの場合はフェーダー・ブロックごとに裏返ったり、別のバンクにアクセスできるようになっています。その分、カスタマイズできる幅も広く、かなり便利に使えると思います。あと、新しいフェーダーのデザインも優れていて、長時間オペレートしても指先が痛くなったりしないのはうれしいですね」
パネル面を含むコンソール全体の視認性について西田氏は「炎天下の野外でもディスプレイはもちろんのこと、チャンネルのカラー・バンクの色もしっかり確認できるほど」と評価する。
続いてUSER DEFINED KNOBSは現場でこそ威力を発揮しそうな新機能だが、その使い勝手について武井氏は「選択しているチャンネルにかかわらず、リアルタイムでパラメーターを動かせるのは重宝します」と語る。
続いてStageMixを使用する利点についても武井氏はこう続ける。
「例えばモニター・コンソールのオペレートに人員を1人しか配置できないような状況の場合、StageMixを使うことで作業効率はアップしますし、作業クオリティ自体も上げることができます」
また、よりシンプルにコンソールと接続できるようになったCL Editorだが、その利便性については西田氏はこう付け加える。
「M7CLのときはプリパッチをパソコン上で行いつつ、アナログのパッチ作業も必要でしたが、CLの場合はパソコン上のDanteの設定で完了するので便利ですね」
CLシリーズの操作性、さらには利便性と言う点ではやはり、コンソールとI/OラックにLANケーブル接続を採用した点は大きい。そのメリットに関してセカンドステージの松原氏はこう語る。
「私たちの仕事は基本的に仕込みの時間がタイトですから、簡単にセッティングが組めることで空いた時間を、チューニングなどに割けるのであれば、それは理想的なことだと思います」
CLシリーズがデジタル伝送規格に選択したD
ante。武井氏が同シリーズの導入を決断した理由は、このDanteの採用が大きいと言う。
「私たちはこれまでEtherSoundという伝送規格を採用してPAシステムのフル・デジタル化に取り組んできましたが、これは100MBbps時代のネットワーク・インフラを想定した規格で、最新の大規模なコンサートなどでは1本のLANケーブルではch数が不足することもありました。今回、CLシリーズが次世代のデジタル伝送規格でもあるDanteを採用したのは、私たちが導入に至った一番大きな理由です。現時点でギガビット対応のDanteは現実的な選択だと思いますし、これからさまざまなDante対応の製品が出てくれば、新世代のデジタル伝送規格として浸透していくと思っています」
同様の見解を示すセカンドステージの若松氏は最後にこう付け加えた。
「PAコンソールのスタンダードでもあるYAMA
HAがDanteを導入したことで、今後のPAシステム全般のデジタル化はより一層進んでいくものと思っています」
CL5
- 対応入力数/モノラル×72ch+ステレオ8系統
- フェーダー構成/16(左ブロック)+8(Centralogic)+8(右ブロック)+2(マスター)
- 外形寸法/1,053(W)×299(H)×667(D)mm
- 重量/36kg
- 価格/オープン・プライス
Rio3224-D(別売)
- アナログ入出力/32イン、16アウト
- デジタル出力/8アウト
- 外形寸法/480(W)×232(H)×361.5(D)
- 重量/12.4kg
- 価格/オープン・プライス