デトロイトの第４世代として、ムーディマンらと共にブラックネスあふれるハウス・ミュージックをリリースしてきたセオ・パリッシュ。年を経るごとにプログラミングの束縛から離れ、生演奏を取り込むようになってきた彼。その発端となったローテティング・アセンブリー名義で2004年に作品をリリースした際の貴重なインタビューだ。
［この記事は、サウンド＆レコーディングマガジン2004年4月号のものです］
Photo：Tetsuro Sato Interpretation：Mariko Kawahara
1990年代中盤にデトロイト・テクノ新世代の旗手として登場したセオ・パリッシュ。以来、DJとしても活躍し、自身のレ−ベル"Sound Signature"から12インチ・シングルを中心に数々の名作をリリースし続けるアーティストである。1980年代に全盛を極めたシカゴ・ハウスの影響からなるスロー・テンポで粘着的なグルーブ、そしてファンクやソウルといったルーツ・ミュージックへの憧憬が混然一体となったサウンドは時に"マシン・ソウル"などと形容され、世界中のクラブ・ミュージック・シーンで賞賛され続けている。そんな彼が先ごろ、14人にも及ぶミュージシャンと共同制作したセオ・パリッシュ・プレゼンツ・ローテティング・アセンブリー名義でのアルバム『Natural Aspirations』を発表。独特の質感はそのままに、生演奏の有機的なグルーブが付加されている本作について、話を聞くと共に、これまでいかなるメディアにも明かされることの無かったであろう制作環境についても語っていただいた。
今回のアルバムでは何よりも楽器の演奏をどう生かすかを考えた
■今作は多くのミュージシャンの演奏を取り入れた曲が目立ちますが、そうした理由は？
セオ・パリッシュ 今まで僕と一緒に仕事をしてきた優れたミュージシャンたちの才能を、アルバムを通じて幅広くリスナーに知ってもらいたかったんだ。
■今作の制作を通じて、彼らからどんな影響を受けましたか？
セオ・パリッシュ 普段１人での制作では体験できない、いろいろなことを教わったよ。僕はたまたま14人の驚くべき才能を持ったミュージシャンたちをまとめる役を担った１人に過ぎなかったんだ。プリプロダクション、スタジオでの曲作り、曲のミックス、マスタリング、さまざまな場面で多くのことを学んだよ。自分よりも参加してくれた彼らをすごく誇りに思っている。今回のアルバムでは、まず何よりも、彼らの楽器演奏をどう自分のサウンドに生かすかを考えた。マイキングにも気を遣ったな。アルバムを聴いてみると、そうして生まれたサウンドの雰囲気が、とてもよく出ていると思うね。
■今作のレコーディング場所は？
セオ・パリッシュ 何カ所かあったんだ。まずはデトロイトにある僕のスタジオ。まあデトロイトと言っても、デトロイトからちょっと離れた郊外にあるんだけれど。あとはトロントでもレコーディングしたし、クリーブランドにも行った。大体この３カ所で、いろいろな曲をいろいろな時期に録りためてできたアルバムなんだ。その場ですぐに、20分足らずでできてしまった曲もあるし、インスピレーションがわくまでに２〜３カ月もかかった曲もあるね。
■使用した機材のラインナップを教えてください。
セオ・パリッシュ レコーダーはROLAND VS-880をかなり使ったね。ミキサーは今ちょっと思い出せないけどFOSTEXだったかな？ サンプラーはAKAI PROFESSIONAL MPC2000XLとE-MU SP1200。キーボードはRHODES、ROLAND Juno-106、NOVATION Bass Station、KORG Trinity。リバーブは、ALESIS Midiverb、Nanoverb。あとは、ものすごく古いNUMARKのロータリー・ミキサーも使った。
■同時再生８トラックのVS-880だけでトラック数は足りましたか？
セオ・パリッシュ ぎりぎりだったね。けれどVS-880は相当気に入ってるんだ。 VS-880を手に入れてからはシーケンサーを全く使わなくなったんだ。サンプリングしたいフレーズをMPC2000XLに取り込んで、VS-880と組み合わせれば、シーケンサーを使うのと同じ結果が出せるわけだし。でも今は、少しずつROLAND VS-2480に興味が出始めているよ。トラック数も多いから、曲作りの可能性が広がるし、ほかの機材との連携も取りやすくなるだろうしね。
セオ・パリッシュ・プレゼンツ・ローテティング・アセンブリー『Natural Aspirations』
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