LFO 発掘interview【2】 ~ WARPレコーズ特集

「オーバープロデュースにならないよう、曲のフィーリングに沿ってライブ・ミックスを行う」 (マーク・ベル/2003年インタビュー)

「オーバープロデュースにならないよう、曲のフィーリングに沿ってライブ・ミックスを行う」 (マーク・ベル/2003年インタビュー)

事実上、マーク・ベルの一人ユニットとなったLFOの2003年復活アルバムのインタビュー。WARPらしい、シンセ好きをうならせるエレクトロニック・サウンドが詰まった作品についてマークが語る。


[この記事は、サウンド&レコーディングマガジン2003年10月号のものです] Interpretation:Tom Tao


UKテクノの歴史を語る上で、LFOは欠くことのできないアーティストだろう。強烈なブリブリ・ベースと洗練されたシンセ音を身上としたサウンドは『Advance』(1996年)で見事完成の域に達し、その後、中心人物のマーク・ベルはビョークの『ホモジェニック』などの制作に参加。以降、7年もの間LFOとしての活動を封印することになるが、そんな彼がついに長い沈黙を破り新作『Sheath』を発表した。思わずニヤリとしてしまう表情豊かなシンセ音、そしてあの重低音ベースがスピーカーを振るわせる快感。抽象的なイメージが次々と現れては消えていくような、ドラマチックな展開も素晴らしい出来だ。早速、ベルに話を聞いていこう。


ヘルの作品のように、理屈抜きに楽しめる音を目指した


■7年ぶりの新作ですが、これだけの時間がかかってしまったのはなぜですか?


マーク  実は、リリースまでのブランクは意図的に作ったものなんだ。1stアルバムというものはそれまで受けてきた影響を元に作ればいいから、割と作りやすいよね。そのアイディアをコピーして同じような内容のアルバムを幾つも出すことはできるんだけど、それはすごく無駄なことだし、クリエイティブなものとは言えない。僕としては、じっくり時間をかけて成長の跡が見える内容の作品を作りたいと思っているんだ。それに本作へ取り掛かる前に他人のプロジェクトにかかわっていたというのも、リリースが遅れた原因だと思う。


■外部のプロジェクトに参加して、どのようなインスピレーションを得ましたか?


マーク  そうだな......実際にいろんな人と仕事をしてきたけど、やっぱり新しい人との出会いは良い刺激になるよね。例えばデペッシュ・モードのマーティン・ゴアとも仕事をしたんだけど、彼の音楽はすごくポップでショウビズ的な要素が強いのにもかかわらず、実際の彼は何の気取りも無いごく普通のミュージシャンなんだ。彼と会えたのは特に良かったね。


■具体的にどんな影響を彼らから受けたのでしょうか?


マーク  自分自身の作品を作りたいという気持ちだね。ここ7年間もの間、ずっと他人の作品に携わってきたわけだから、とにかく自分自身の世界に戻って、ピュアな気持ちになりたかった。他人の作品を手掛けているときは、スケジュールとかプランがはっきり決められているから、その予定通りにプロジェクトを進行していかなければならないけど、自分1人で作るならその必要は無い。作業を途中で中断して映画を見たり、とにかく自由にやれるんだ。そういう意味でも、今回はゲスト・ボーカルを入れずに純粋に自分だけの作品を作りたいと思った。例えば、ビョークは本当に素晴らしいシンガーだし、彼女との仕事は最高だった。でも、今回は外部の人間の要素を入れず、自分自身のものを作りたかったんだ。


■本作は強烈なダンス・アルバムに仕上がっていますが、その辺はいかがですか?


マーク  そうだね。確かにダンス・アルバムだと思うよ。僕はヘルが好きなんだけど、彼のプレイするダンス・ミュージックはテクニック的にすごいとかそんなもんじゃなくて、理屈抜きにリスナーが楽しめるプレイが収められていると思うんだ。僕も常にそんな音楽を目指している。もともとこのアルバムは、僕の曲をコレクションしている仲の良い友達が居るんだけど、彼が長年にわたってまとめた僕の曲のミックス・テープが元になっているんだ。だから、アルバムの長さがカセット・テープと同じ45分くらいになっているんだよ。


機材がたくさんあると混乱するから、本当に好きなシンセを1台だけ使う


■LFOの音の特徴として、2〜4小節の短いフレーズ・ループを組み合わせて曲を構成していますよね?


マーク  そうだね。僕はシーケンサーで打ち込んだフレーズをループさせながら曲を作っていくから、自然とそういう構成になっていくんだろうね。1つ気に入ったフレーズが出来上がったら、それを何度も繰り返し聴きたいタチなんでね。


■"シンセ好きが作った音"と思わせるような上モノの凝ったプロダクションも聴きどころだと思いますが、今回のシンセ・アプローチはどのように行いましたか?


マーク  EMSのシンセをメインで使ったよ。ほかにもいろいろシンセはあるけど、本当に好きな機材を1つだけ使うのが好きでね。シンセやキーボードがあまりにもたくさん目の前にあるとどれを使っていいのか混乱してしまうんだ。僕の制作環境はコンピューター中心の極めてミニマムなもので、キーボードも必要なものしか置いていない。ほかによく使うシンセはSTUDIO ELECTRONICS SE-1とKORG MS-20で、これらはE-MU E4Xにサンプリングして使う。それからCASIO FZ-10Mも持っていて、これは決してハイファイな音じゃないんだけど、そこが気に入っている。


■EMSをメインにしている理由は?


マーク  適当にいじっていると偶然思いがけない音が出てきたりして面白いんだ。これを手に入れた当初は使い方が全く分からなかったから、そうやって偶然出てくる音に毎回驚いていたよ(笑)。まあ、今では自分の意図したサウンドを作れるようにはなったけどね。






Cubase+Digi 001は、ビョークとおそろいのシステムだ


■自宅のレコーディング・システムはどのようになっているのですか?


マーク  ミキサーは16chのMACKIE.のものを使っている。以前、大型のコンソールとモニター・スピーカーを買ったんだけど、レコーディング・スタジオのような落ち着かない雰囲気の部屋になってしまったから、それらは僕の実家に全部置いてきて、今は小型のセットで作っているんだ。MIDIキーボードは確かCLAVIA Nord Lead 3で、コンピューターはAPPLE PowerMac G4とiBookを使っている。


■シーケンス・ソフトとオーディオ・インターフェースには何を?


マーク  シーケンス・ソフトはSTEINBERG Cubaseで、DIGIDESIGN Digi 001をオーディオ・インターフェースに使っている。このシステムはビョークの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』制作時に、彼女とデータをやりとりして全く同じ環境で音をチェックできるようにと、2人で同時に買いそろえたものだ。このシステムならば、どんな場所でもPowerMac G4とDigi 001さえあれば同じ条件ですぐに作業ができるからね。


■基本的には、EMSで作ったフレーズをオーディオでコンピューターに取り込んで編集していくのですか?


マーク  そうだね。例えばEMSで面白い音を作ったら、E4Xに取り込んで、それをコンピューターにライブ・レコーディングしていくんだ。なぜE4Xに取り込むかというと、そうすることでより音色のエディットがやりやすくなるからなんだ。それからROL
AND TR-808なんかは、SE-1に通してからコンピューターに取り込んだりしている。


■音源類は一度MACKIE.の16chミキサーに立ち上げて、そこからコンピューターへ送るという配線ですか?


マーク  そう。もし音源にリバーブを付けたいときは、T.C. ELECTRONIC M3000をMACKIE.のミキサーに立ち上げて使うことが多いかな。ただ、エフェクトに関しては、基本的にハードウェアとプラグインを両方試してみて良い方を使うようにしているよ。


ミックス作業は曲の骨格作りと同じくらい重要


■ミックスに関しては、空間の奥行きを重視したサウンドになっていると思いますが、それはあらかじめ意図したところですか?


マーク  そうだね。この作品に関しては、適切に空間を埋めるようなミックスを心掛けた。すごくありきたりなテクニックではあるけど、原音を片側のスピーカーから出して、もう片方のスピーカーからはリバーブ音だけを出して空間の広がりを作るとかね。それから個々の楽器の配置がまるで目の前で確認できるように、レベルのバランスやパンニングにも趣向を凝らしてみた。


■ミックスは何度も繰り返し聴きながら詰めていく方ですか? それともライブ・ミックスでフィーリング重視?


マーク  フィーリング重視だね。ミックスというのは、時に曲の骨格と同じくらい大切なものになり得るんだ。例えば「Sleepy chicken」なんかは、あのミックスだからこそ曲の特徴が出せているんだ。ミックスは曲の方向性を決定付ける大切な要素だね。エンジニアによっては、30秒間の間に100ステップものパラメーター変化のオートメーションを書いたりする人も居るけど、僕はそういうオーバープロデュースは好きじゃないんだ。もっと楽曲の持つフィーリングを重視してミックスしたいと思っているからね。


■最終的な2ミックスは、ライブ・ミックスをしながらDATなどに落とすのですか?


マーク  いや、各トラックごとにライブ・ミックスして、それをコンピューターに戻すんだ。実は昔読んだ本の中で、確かブライアン・イーノが"各トラックごとにミックスしていくとEQのバランスが悪くなるからやらない方がいい"って言ってたんだ。だけど僕は逆の意見で、トラックごとにEQでサウンドを詰めていけば、それら全体で聴いたときも良いサウンドになると思っているんだよ。



Sheath.jpgLFO 『Sheath』


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