プラッド 発掘interview 〜 WARPレコーズ特集

「生楽器もボーカルも何でも、取りあえずサンプラーに取り込んでいる」 (アンディ・ターナー/1997年インタビュー)

WARPアーティスト第四弾はプラッド!!! 本記事は1997年『ノット・フォー・スリーズ』リリース時でのもの。ブラック・ドッグ時代からつながりのあるビョークをゲスト・ボーカルに迎えた「Lilith」など歌モノも収録したIDMな一枚だ。


[この記事は、サウンド&レコーディングマガジン1997年12月号のものです]Translation:Ryoko Ito


プラッドは、1989年から活動を始めたブラック・ドッグのオリジナル・メンバー、アンディ・ターナーとエド・ハンドリーによるプロジェクトである。当時のインテリジェント・テクノ・ブームの中心に居たブラック・ドッグはケン・ドウニー1人のプロジェクトとなり、離れたプラッドの2人もビョークのワールド・ツアーへの参加や数々のリミックス・ワークをこなす人気者となった(1995年にはWARP NIGHTで来日ライブも行なった)。そして1997年になり、やっとプラッドとして初のアルバム『ノット・フォー・スリーズ』が届いた。ビョークやニコレットがボーカルとして参加し、生楽器が大幅にフィーチャーされた作品集。しかしその感触はブラック・ドッグ時代同様、デリケートで、ピュアで、クリアである。そんなアルハムの制作風景をアンディに聞いた


ブラック・ドッグから離れた理由の一つは、歌モノがやりたかったから


■アルバムの制作は最近行なわれたのですか?


 アンディ  いや、ブラック・ドッグを離れてからずっと作り続けてきたものさ。自分たちのスタジオをリメイクしたり、ビョークと1年近くもツアーに回っていたり、何だかんだ忙しかったんだよ。曲のアイディアが古くなったものとかは、改めてミックスし直したり、手を加えたりしたけどね。


■生楽器があったり、以前からのエレクトロがあったりと、バラエティに富んだラインナップですね。


アンディ  アルバムを通してカラフルな雰囲気を醸し出したかったんだ。やっぱり曲調が同じだと聴いていて疲れるしね。今回はWARPのA&Rマン、ロブ・ミッチェルにも選曲を手伝ってもらったよ。


■作曲のプロセスはどのような感じですか?


アンディ  決められたフォームはないね。スター卜地点は毎度違う。例えばキーボードて遊んでいて何となくできちゃった曲とか、1つのサンプルからとか、メロディからとか、いろいろさ。


■2人の役割分担はありますか?


アンディ  結構各自での作業が多いんだ。それぞれのアイデイアがあるわけだからね。その後それらを何とか1つにまとめて、その先のミックスとかレコーデイングとかのプロダクションは一緒さ。


■曲作りに関してブラック・ドッグとの違いは?


アンディ  大して変わらないんだ。変わったのは2人になった事実と、使う機材くらいさ。


■ではスタジオの機材や楽器を教えてください。


アンディ  卓はYAMAHA 02RとProMix01、シーケンサーはMac+Logic Audio、サンプラーは128MBに拡張したE-MU EIVだ。僕らはほとんどサンプラーをレコーダ一代わりに使っていると言ってもいいほどだからね。内部でエンベロープをかけたりして音をいじれるでしょ。シンセはKORG Wavestation A/D、YAMAHA CS40M、ROLAND JP-8000、SH-101、MC-202、TB-303、NOVATION BassStationとか。エフェクト類はEVENTIDE H3000、SONY HR-MP5、それからENSONIQ DP/4やZOOM 9010。主にそんなものかな。


■非常に繊細なエフェクトが特徴的ですが、エフェクト処理は主にどのように行なっているのですか?


アンディ  エフェクト・プロセッサーを通したサウンドをサンプリングして、またさらにエフェク卜をかけたりとかする。僕らが使ってるサンプラーEIV自体がエフェクターとも言えるね。あれを通せば太い温かみのあるサウンドになるから。


■「Rakimou」では弦楽器が聴かれますが、これらの生楽器もサンプリングしたのですか?


アンディ  ああ、何でも取りあえずサンプラーに取り込んでいるよ。この曲ではギターとバイオリンとアコーディオンを使っている。アコーディオンはビョークのツアーでも一緒だった日本のcobaに弾いてもらったんだ。他の生楽器もすべてミュージシャンに演奏してもらったね。それらはいったんYAMAHAのDM4に録って、Macで処理してからサンプラーに取り込むんだ。


■ビョークやニコレットが参加していますが、ボーカル曲を手掛けようと思った理由は?


アンディ  それがやりたくてブラック・ドッグから離れたってのがあるんだよ。まあポーカリストに限らず、他のミュージシャンたちとのコラボレーションがやりたかったってことかな。


■ボーカル入りのトラックとインストものの制作法の違いはありますか?


アンディ  何も変わらないね. ボーカルも一種の楽器として考えているから、他の楽器と同じようにサンプリングしたり、エフェクトをかけていろいろ遊んでみたりしているんだ。


■プラッドの曲作りのポイントとは?


アンディ  単純に自分たちが聴きたいサウンドを作っていくことかな。実際それが僕たちにとっての音楽を作っている意味でもある。あとは試行錯誤を重ねるようにしているね。人と違うことをやるように心掛けているんだ。



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