
WARPアーティスト発掘記事の第三弾はLFO!!! 本記事は1996年に発売されることになる『アドバンス』についてのリリース前インタビューだ。ジェズ・バーレイ脱退前の貴重な会話をご堪能あれ。当時のライブ・セッティング写真も併せてどうぞ。
[この記事は、サウンド&レコーディングマガジン1996年2月号のものです] Interpretation:Ryoko Ito
1991年にデビュー・アルバム『フリケンシーズ』で、イギリス中にブリープ・ブームを吹き荒らしたLFO 。これ以降自身の作品から遠ざかっていたマーク・ベルとジェズ・バーレイだが、この2月についに待望のアルバム『アドバンス』がリリースされる。昨年11月にめでたく初来日を果たした彼らを、ライブ直後にキャッチした。
新作『アドバンス』は、過去4年間の集大成的作品
■今日のライブ・セッティングはかなりシンプルでしたが、いつもあんな感じなのですか?
マーク あまり多くの機材を持ち歩きたくないからね(笑)。キーボードをたくさん持ち歩くよりも、データをすべてサンプラーにストアしておけば、あとはシーケンサーとミキサーだけで十分だと思っているんだ。
ジェズ 今回はROLAND TR-909、ENSONQ EPS-16Plus、YAMAHA ProMix01、KORG Wavestation、ROLAND D-50といったところかな。すごく簡単なシステムだよ。
■普段から、ライブはすべてインプロビゼーションでやっているのですか?
ジェズ ほとんどそうだな。どのラインをどこでやるかくらいの打合せはするけどね。ただ、僕らはいい加減だから、ハチャメチャになってしまうこともしばしばあるんだ(笑)。
■新作『アドバンス』について教えてください。レコーディングはいつごろ終えたのですか?
マーク というより、あれは僕たちが4年間で作った曲の中から気に入ったものをピックアップし、それをアルバムとしてまとめたものなんだ。それぞれの曲にコンセプトがあって、それが一体となってアルバムを形成している。だから典型的なダンス・フロア用のナンバーもあれば、リスニング用のものもある。結果的にアルバムはいろんな要素を詰め込んだものに仕上がったと思うよ。
■ファースト・アルバムと比べて何か変わった点、進歩したと感じる点はありますか?
マーク プロダクションやレコーディングにおいての知識が深まったよ。機材を扱う技術も向上したしね。自分たちのフィーリングを実際に音にするまでのプロセスが、以前よりもスムーズに行えるようになったんだ。それまで自分をどう表現したらいいかと悩んでいた時間が、クリエイティブな時間に変わっていったのさ。あと今回はシンセの音よりもたくさんのノイズから曲を形成していったものが多い。そういったところが前作と違うところだろうね。
ジェズ それに前のアルバムはJEN SX1000をメインに使っていた。かなりシンプルなセットで作ったアルバムだったんだ。
■今回のアルバムでは、どのようなプロセスで曲作りを行なったのですか?
マーク 僕たち2人は、それぞれの自宅にほどんど同じようなセットを持っている。各自自分たちのホーム・スタジオでほとんどの作業をして、データのやり取りを何回かするんだ。あとはノイズ音を探しにワープのオフィス近くにあるヒューマン・リーグ・スタジオに行く。あのスタジオには古いものから新しいものまで、たくさんの機材があるからね。
■やはりアナログ・シンセで曲作りを始めることが多いのですか?
マーク 何を使って曲作りを始めるのかは毎回違うんだ。僕たちには曲を作る上において「よく使うシンセ」というものは無い。常に新しい音や新しい機材に挑戦することが大切だと思うからね。毎回同じものを使っていてはつまらなさ過ぎるよ。人に会ったり音楽を聴いたり、その日の気分などによって何にインスピレーションを受けるのかが違うからね。
ジェズ ただ、アナログ・シンセでノイズ音を作るというのは2人とも好きなんだ。まあシンセだけに限らずほかのアナログ機材も使うけどね。そしてそれを何重にも重ねたりしながら、波形をエディットしていくということをやっている。
マーク 今ではみんないろいろなアナログ・シンセを持っているが、自分の個性を押し付けるのではなく、自分のフィーリングに重点を置いて曲作りをすることが大切だと思うんだ。そうれなければ、カバーの奇麗な内容のくだらない本を作るようなものだからね。中身が無いってことさ。
ATARI、EPS-16Plus、Macを、曲に応じて使い分けている
■シーケンス・システムには何を使用しているのですか?
マーク ATARIやENSONIQ EPS-16Plus、Macなどを持っていて、コンピューターのソフトは主にCubaseを使っている。それぞれ独自の個性とフィーリングを持っているから、曲に応じて使い分けているんだ。
ジェズ ただ、今回のアルバムではENSONIQがほとんどだな。
■気に入っている機材、これから購入する予定の機材はありますか?
マーク EPS-16Plusはサンプラーとしても使いやすくていいよね。古いキーボードの音をサンプリングしてよく使っているよ。あと、CASIO FZ-10Mは、サンプリングするとノイズがいい感じの音になるから好きだよ。
ジェズ 僕が今欲しいのはE-MUのSP-1200。クリスマスに買うんだよ(笑)。
■曲作りにおいてサンプラーは欠かせないものなのでしょうか? またはどのような使い方をしていますか?
マーク 今回の曲の中には、AKAI S3000やFZ-10M、EPS-16Plusのみで作ったものもあるんだ。その理由はたくさんのデータがストアできるというところだ。それに各音をエディットしたり、重ねたり、いろんなテクニックが使えるからね。
■リズム・トラックもサンプラーで作ることが多いのでしょうか。どのようなプロセスで作っているのか教えてください。
マーク ドラム・サウンドには主にTR-909やTR-707、TR-808を使っていて、そのままパターンを組んで鳴らすことが多いよ。そしてそれをボコーダーやYAMAHA CS15のフィルターに通したりしてエフェクトしていくんだ。
■前作『フリケンシーズ』では、太いベース・サウンドが印象的でしたが、今回はどのようにベース音を組み立てていったのですか?
ジェズ ベース・サウンドにはいろいろなシンセのサイン波を使っていて、特に決まったベース音源というのは僕たちには無い。そして32Hz辺りを強調させてフィードバックさせている。そういうアプローチはよくやるよ。
■最近は、どのようなアーティストたちのサウンドに興味がありますか?
マーク ケンイシイは面白いね。あとスタイルとしてテクノとハウスの境界線はどんどんあいまいになっていくと思う。そして、これからはそういったものが主流になると思うよ。僕個人としてはビートルズはもちろん大好きだし、ヒップホップはオールドスクールから聴いている。特にウータン・クラン一派は最高に好きなんだ。今UKで流行っているジャングルは大嫌いなんだ。
■最近手掛けたリミックスの中で、特に気に入っているものを教えてください。
ジェズ ビョークの「ハイパーバラッド」かな。ディスコ風なものからアブストラクトなものまで、4種類のミックスを手掛けているんだ。これは今年の1月にワン・リトル・インディアンからリリースされるはずだよ。
▲昨年の11月25日新宿リキッドルームで行なわれたライブの模様。セットはKORG Wavestation、TR-909、YAMAHA ProMix01(以上、写真左)、ENSONIQ EPS-16Plus、ROLAND D-50(以上、写真右)。ラストは新作『アドバンス』からの1st シングル「タイド・アップ」で締めくくり、多くのファンを熱狂させた