SP-404は僕の人生に欠かせない存在だ
ヒップホップを基調とするLAビート・シーンで屈指の実力&キャリアを誇るプロデューサー、DIBIA$E。長年のSP-404ユーザーでもある彼に取材し、愛用しつづける理由や活用法を聞いた。
SP-404にはマジックが潜んでいる
──いつごろからビート・メイクを?
DADIBIA$E 始めたのは1994年で、GEMINIのサンプラーとSONYのWalkmanで制作していた。その後、BOSSのDr. RhythmやAKAI PROFESSIONALのMPC2000を手に入れ、やがてSP-303を知った。当時、PIONEER DJ CDJのエフェクトでネタを加工してMPCに入れていたんだが、SP-303もエフェクトを備えていると聞いて友達から買い取ったんだ。それから少しして、2005~06年にビート制作の依頼人からSP-404を譲ってもらった……“ビートと50ドルをくれればSP-404は君のものだ”と言われてね。やがてSP-404でビートを作るようになり、その独特なコンプレッションの音が気に入った。SP-404にはマジックが潜んでいて、どんなマシンにも劣らないグッドなサウンドが得られる。『Baker's Dozen: DIBIA$E』や『Machines Hate Me 』といったアルバムでSP-404のビートが聴けるからチェックしてみてほしい。
──あなたの盟友で、同じくLAシーンを代表するビート・メイカーだった故ラス・GもSP-404を愛用していましたね。
DADIBIA$E 2人で初めてツアーに出たとき、それぞれのSP-303を1台ずつ持っていったんだ。SP-303はステレオで最長15分しかサンプリングできなかったから、30分のフル・ライブをプレイするには2台必要だった。ただ、既にSP-404がリリースされていたし、僕は彼に“SP-404を手に入れれば、1台に何時間もの音楽を入れられるよ”って教えてあげたんだ。彼はツアーから戻り次第、SP-404を入手したよ。ちなみに、僕がライブでもSP-404を使うようになった理由は、ステージでパソコンがクラッシュしているのを目にして“自分はこうなりたくない”と思ったから。SP-404でライブするのはストレスフリーで、ビートを入れておけば即戦力って感じなんだ。同時に2台使うこともあれば、最近ではABLETONのグルーヴ・ギアMoveと併用することもある。
──近年はSP-404MKIIを使っている?
DADIBIA$E うん。ライブではDJ Modeで1曲1曲を流しつつ、さまざまなビートをブレンドしたり“ディレイのトリック”を加えたりする。そのトリックはSP-404MKIIのSync Delayを使うもので、フィードバックとディレイ・レベルを最大にして、ディレイ・タイムで小節の長さや拍子をコントロールするんだ。ユニークなフレーズが得られるので、空いているパッドにリサンプリングすることもあればスキップ・バックして使うこともある。スキップ・バック機能は、時間をさかのぼってサンプリングできるからクレイジーだよね。あとは、SP-555から継承したルーパー・エフェクトも特筆すべきポイントだ。そしてエフェクト・バスが4つあるのもクレイジーで、4台のSP-404を同時に使う必要があったころからは考えられないよ。ステップ・シーケンサーだって備わっているし、まさに何でもできるSP-404シリーズの集大成だ。
できるだけSP-404内でミックスする
──今回は、この特集のためにSP-404MKIIでビートを作っていただきました。
DADIBIA$E 題材として送ってくれたRolandのサンプル集から、Ski Beatzの作ったドラムやLightfootが制作したコードを選んで使った。コードは、チョップしてからSP-404MKIIのピンポン・ループ(順再生と逆再生を交互に繰り返してループさせる機能)で鳴らしている。ドラムもチョップし、SP-404MKIIのステップ・シーケンサーでプレイしているんだ。語りは僕の声で、自分の声を電話で録音し、SP-404MKIIにサンプリングしたものへディレイをかけている。そうやって作った曲をサンプラー・アプリのMAZBOX LIMITED Koala Samplerに録音し、ダブル・コンプレッションやリサンプリングなどを経て、最終的にKoala Samplerから書き出した。
──SP-404で作ったビートは、どのようにしてミックスすることが多いですか?
DADIBIA$E できるだけSP-404の中でミックスするようにしている。Isolatorでドラムにイコライジングを施して、必要なコンプレッションを加えたら、それをABLETON Liveに録音してレベルを調整するだけだね。特定の周波数がちょっとキツかったり、濁りすぎたりしていたら、Liveの中でEQをかける。でも、それ以外のこととなるとSP-404の外ではあまりやらない。
──あなたがいかにSP-404をフル活用しているのかが分かりました。
DADIBIA$E SP-404は、僕の人生に欠かせない存在だ。世界中を一緒に旅したし、妻とも出会わせてくれた。2009年ごろ、僕がライブをしているときに“SP-404をどう使ったら、あんなことができるの?”って聞かれたんだ。それが僕らの出会いで、連絡を取り合うようになり、いつしか家族もできた。SP-404について交わした会話が今に至っているんだよ。