必ずSP-404を通る環境で曲作りしている
LAでビート・メイカーとしてのキャリアを開始し、ジャジーかつローファイな独自のヒップホップを確立したBUDAMUNK。彼はAKAI PROFESSIONAL MPC2000XLをビート制作のメイン機としつつ、SP-404の前身機SP-303と初代SP-404のエフェクトを活用している。さらに、SP-404SXとSP-404MKIIはDJスタイルのビート・ライブで活躍中だ。なぜSP-404シリーズを愛用しつづけるのか、尋ねてみるとしよう。
これにしか出せない音がある
──SP-404を使いはじめた動機は?
BUDAMUNK LAに住んでいた2005~06年ごろにSP-303を使いはじめたのがきっかけです。MPC2000XLにはエフェクトが標準搭載されていないので、そこをカバーするのが目的でした。MPCの後段につないで、ビートにエフェクトをかけながら録音する。SP-404を買ったのは日本に帰ってきてからで、現在もSP-303と同じ要領で使っています。MPCのアウトをMACKIE. 1402-VLZ(ミキサー)に立ち上げて、DBX 128(コンプ/エキスパンダー)、SP-404、UNIVERSAL AUDIO Apollo Twin(オーディオI/O)を介してAPPLE Logic Proに2ミックスの状態で録るのが基本。SP-404では、ビートにWah(ワウ)をかけたりIsolatorで変化を付けたり、Vinyl Sim(アナログ盤の音質を再現するエフェクト)でコンプ感を加えたりしています。Vinyl SimはSP-404SXやSP-404MKIIにも入っていますが、初代の音はそれでしか出せない独特なものだと思います。音のバラバラ感がちょっと減って、全体が混ざり合う感じになるんです。
──Vinyl SimはSP-404シリーズを象徴するエフェクトですよね。
BUDAMUNK “音のまとまり”に関して言うと、SP-404にサンプリング(録音)すると良い感じになるんです。締まりが出るというか、音の混ざり具合がギュッとしたり、ビートが太くなったりする。もちろん機種によってキャラクターに違いがあって、自分が持っている中ではSP-303が最もローファイです。初代のSP-404もローファイですが、もう少し太い感じですね。この2機種は、発売された時代特有のローファイな音がやっぱり良い。他方、SP-404SXとSP-404MKIIは新しくてクリーンな感じの音で、MKIIのほうは太さも兼ね備えています。出音がめちゃめちゃ良いんですよ。何をするにしても、DAWやプラグインのほうが往々にして楽なのかもしれませんが、SP-404のようなハードウェアを使いつづけるのは音質による部分が大きい。そこはやっぱり、プラグインでは表現しきれないところだと思います。
ライブにも適するMKIIのパッド
──SP-404SXとSP-404MKIIはライブで活用しているのですよね?
BUDAMUNK はい。初代のSP-404よりサンプリングがしやすくて、容量も大きく、特にMKIIは新しくて使いやすいですね。パッド一つ一つに曲の2ミックスを丸ごと割り当てて、HOLDボタンで鳴らしっぱなしにしながらエフェクトをかけて演奏します。やはりWahやIsolatorは必須で、それ以外によく使うのはDelayとDJFX Looperです。一番下の列のパッドには、飛ばし系の声ネタやFXのサンプルを入れていて、曲を流しているときにたまにトリガーします。曲と曲のつなぎは、Delayで飛ばして次の曲をぶっ込むのが一番しっくりくる。SP-404MKIIにはDJ Modeが用意されていますが、自分はデフォルトのモードでやっています。
──SP-404MKIIは、従来のシリーズ機からパッドの設計が刷新されています。
BUDAMUNK 自分はジャズのミュージシャンとセッションすることがあって、そういうときにもすごくたたきやすいんですよ。SP-404SXまでのパッドはギュッと押さないと音が鳴らない仕様でしたが、SP-404MKIIはMPCにも通じる“たたける系”のパッドなので、たたいたタイミングでジャストに鳴らせるし、ライブ演奏にもばっちりなんです。また、SP-404MK IIはUSBオーディオI/O機能を備えているので、ラップトップを併用してライブする人はDAWプレイバックにMKIIの内蔵エフェクトをかけて本体から出力できます。使い道が広いですよね。
何でもサブベ化する剛腕エフェクト
──今回、この特集のためにビートを作っていただきました。
BUDAMUNK 題材となったRolandのサンプル集から好きな音を探して、MPC2000XLにサンプリングするところから始めました。ドラムが入ったループを土台にして、音を重ねていく要領ですね。複数のループを使っていますが、自分は普段からBPMを合わせることはなく、チョップして演奏しながら合っているように聴かせる感じなんです。今回の曲はメインのビート、サブベース、シンセの音で構成していて、メインにはVinyl Sim、シンセにはWahをかけて録っています。いずれも初代SP-404に内蔵のものですね。
──サブベースの迫力に圧倒されます。サイン波系のサンプルを使ったのでしょうか?
BUDAMUNK あのベースは、Subsonicという内蔵エフェクトをキックのサンプルにかけて作ったんです。Subsonicを使うと、どんな音も原型をとどめないほどサブベースになってしまうんですが(笑)、キックから作るのが一番良い音になりますね。それを1音だけMPC 2000XLに取り込んで、16個の音階を付けて鳴らしています。
──年頭にリリースしたアルバム『Green Clouds』にもSP-404を使っていますか?
BUDAMUNK はい。ビートはNATIVE INSTRUMENTS Maschineで作ることが多かったけれど、最初に話した通り、どうしてもSP-404を通るルーティングで曲を録っているので、内蔵エフェクトを使おうが使わまいがSP-404の質感になる。今までリリースしたものは、すべてSP-404を通っているし、それが特徴になっているというか、自分の色を出すのに役立っていると思いますね。
BUDAMUNK (ブダモンク):1996年にLAに渡り、ビートを作りはじめる。2006年に帰国後、Sick Team、Green Butterとしての活動や、自身のソロなど数々のプロジェクトをJazzy Sport、Dogearからリリース。また、USのDelicious VinylやFat Beatsからリリースするなど、海外のシーンにも多大な影響を与える