新旧さまざまな機器をそろえ、ハイブリッドな最新サウンドを生み出す制作部屋
トラック・メイカーのユウフジシマとボーカルのみさつんによるユニット=ハレトキドキ。2018年に結成し、1980~2000年代のサウンドを基調に、現代のアプローチを取り入れた新世代のアーティストだ。こだわりの音が生まれるHTD Studioへ伺い2人に話を聞いた。
電源、ケーブルから音質にこだわる
トラック・メイカーとして活動していたユウフジシマとみさつんが出会ったのはInstagramを通して、仮歌を歌ってほしいと依頼したのがきっかけだったという。「当時は、このスタジオではなかったんですけど、仮歌を録った瞬間に“これはいけるぞ”と思って、ブラッシュアップした後1stシングル「キスミー」としてリリースしたんですよ」とフジシマが語る。
現在のTHD Studioに引っ越してから2年ほどたち、基本的には当時の機材を移行させたそうだが、まず改善したのは電源からだったそうだ。フジシマがこう続ける。
「200Vの電源トランスPRO CABLE STH-1520Aを導入したところ、音の変化をすごく実感しましたね。それまでもACOUSTIC REVIVEの電源やケーブルなどを使っていて、音質にはこだわっていたんですけど、200Vから115Vへダウン・アイソレーションして機材を動かすことでさらに向上したと思います」
フジシマの音楽の原体験を聞くと、「幼少期から小室哲哉さんはじめ、m.o.v.eのt-kimuraさんなど、エイベックスのアーティストが好きだったんです。MVに登場するシンセなどを見て、上京した10代のころに初めてのシンセ、KORG Tritonを買いました。同じ時期にYAMAHA AW4416も買って、機材集めにどんどんハマっていって、少しずつ増やしていきながら楽曲制作をしていました」と言う。一方みさつんは、歌は好きで歌っていたものの、機材に関しては全くの初心者で、レコーディングをしたのも、フジシマとの仮歌が初めてだったそうだ。
「いつもレコーディングなどでこのスタジオに来ると、何かしらアップデートされているんですよ、電源買ったよ、とか。私は機材のこととか全然詳しくないんですけど、実際に歌ったり音を聴いたりしてみると、だんだん聴き分けられるようになって、ちょっと教育されている感覚です(笑)」
フジシマの機材熱は今なおとどまることを見せず、エンジニアの浦本雅史やyasu2000など、仕事で関わってきたエンジニアから、常に機材の情報を仕入れているそうだ。
シンセはソフトとハードをレイヤーする
ハレトキドキの楽曲制作方法を聞くと、フジシマが次のように答えてくれた。
「まずはシンセ・メロ入りのデモ・トラックを作ります。その際にサビ頭のワードやタイトルを僕が決めることが多いです。サビ頭のインパクトはすごく大事で、そのワードが決まれば9.8割方パッと曲ができるんですよ。その状態でみさつんにデータを渡します」
みさつんの作業としては、「歌詞を完成させて、自宅で仮歌を録って送り返します。そこで何かあれば、やり取りをしつつ、OKならHTD Studioで歌を録音します」とのこと。その際のアレンジの完成度は6割程度ということだが、歌の本番レコーディングをしてからアレンジを仕上げていくのがやりやすいそうだ。
実際のアレンジでは、スタジオの機材を駆使して作業しているとフジシマが語る。
「シンセで一番使っているのはACCESS Virus Indigo 2です。プリセット一つで求めていた2000年代のトランス・サウンドが出ますし、存在感も抜群ですね。ソフト・シンセも使いますが、ハード・シンセをレイヤーするなど、オリジナリティのあるサウンドを目指しています」
シンセやボーカルはLYNX STUDIO TECHNOLOGY Aurora(n)に入力して録音されるが、OZ DESIGNのマイク・プリアンプOZ-1100や、ライン・トランスのAMATERAS 0002などのハードウェアを介し、電源やケーブルもACOUSTIC REVIVE製でそろえるという徹底ぶりで音質にこだわっている。フジシマは「ハレトキは懐かしくも新しいをテーマにしているんですけど、昔の音楽をまねしているだけではなく、今しか使えない技術や機材を使ってアウトプットしているんです。だから、今の時代に説得力のある音質を目指していますね」と語るように、ハードウェアとソフトウェアのハイブリッドな体制で作品を作っている。
みさつんもこう続ける。
「私はトランスなどの音楽のリアルタイムを経験していないんですけど、ルーツを感じさせながら自分なりにアップデートさせるのが個性だと思っているので、好きなポイントを一緒に探しながら作っていくのはすごく楽しいですね。機材の話は全く未知の世界だったんですけど(笑)、話を聞いて自分でも音を確認してみると違いも分かってきて、それも楽しいです」
現在3rdアルバムに向け制作中とのこと。このHTD Studioから懐かしくも新しいサウンドが現在進行系で作られている。
Equipment
Computer:APPLE Mac Studio
DAW:AVID Pro Tools、PRESONUS Studio One
Audio I/O:LYNX STUDIO TECHNOLOGY Aurora(n)
Speaker:FOCAL Trio6 BE
Headphone:FOCAL Clear Mg Professional、Listen Professional
Other:ACCESS Virus Indigo 2(Synth)、DAVE SMITH INSTRUMENTS Prophet 12 Module (Synth Module)、KORG Minilogue XD(Synth)、Opsix(Synth)、NORD Nord Piano、Nord Wave(Synth)、YAMAHA TX81Z(Synth Module)
Close up!
小室哲哉を象徴するショルキー
小型軽量のショルダー・キーボードYAMAHA KX-5は、MIDIで外部音源をコントロールするキーボードで、ハレトキのライブで活躍しています。10mのMIDIケーブルをつないで、ステージを練り歩いています!
Profile
ハレトキドキ:2018年結成、トラック・メイカーのユウフジシマ(brinq)とボーカルのみさつんによるユニット。1980年代~2000年代と時代をまたぎ、現代のサウンドをミックスさせた新次元の楽曲を発信し、ライブ活動も精力的に行っている。現在3rdアルバムを制作中。
Recent Work
『innocence』ハレトキドキ
(HTD TRAX)
特集|Private Studio 2025