現代の音楽制作に欠かせないツールとなったヘッドホン/イヤホン。「制作の大半をヘッドホンでこなす」と言うクリエイターやエンジニアが増えており、それに呼応するように各メーカーからも魅力的な製品が登場している。CHARA、SIRUP、odol、WONKなどを手掛けてきたエンジニア、染野拓。彼の音作りに欠かせないAMPHION Two18に近しいキャラクターを持ち、“自身の基準”と評価するのがOLLO AUDIO S4Xだ。
OLLO AUDIO S4X
スロベニアのメーカーOLLO AUDIOが手掛ける、ミキシングやマスタリングでの使用を想定したリファレンス・モデル。ハウジングに木を使った特徴的なデザイン、レザーとベロアを用いた快適なイヤー・パッドを配している。
【SPECIFICATION】
●型式:オープン・ダイナミック型●周波数特性:20Hz~22kHz ●インピーダンス:32Ω ●ドライバー・サイズ:50mm ●重量:350g
自分の耳の解像度と一番マッチしている
僕は作業の最終確認でヘッドホンを使っています。基本的にスピーカーでの作業を終えてからS4X、ULTRASONE Signature Master、FOCAL Clear Professionalの順に聴きます。なので、ヘッドホンはスピーカーと印象が違わず、大きい音でなくてもある程度鳴るものを選んでいます。スピーカーのTwo18と一番印象が近いのはSignature Masterですが、メインで使うのはS4Xですね。
自分の耳の解像度と一番マッチしているから、ミスを発見しやすいんです。例えばミックスで完全に濁りを取ればいいわけでもないときの加減具合とか、ちょうど良い団子感とかが判断しやすい。また、2~3kHz辺りの痛さもラージ・モニターを鳴らしたときのように追い込めます。外スタジオでのレコーディングにも必ず持っていくんです。例えばスピーカーの癖が分からないスタジオだと、楽器系の低音周りの判断に困ることがあるため、特にドラム録りはこれで音を判断しています。S4Xでモニタリングしながら録った音は、家で聴いても同じ印象に聴こえるので、その意味でも自分の中で変わらない基準になっています。
分離感のあんばいが良くて、ミックスのクオリティがある水準を超えないとうまく鳴らないところもやりやすい。その意味ではラジカセ・チェック的な役割もあります。だからS4Xを使うと、結果が良くなりやすいんですよね。
染野拓
レコーディング/ミックス/PAエンジニア。2017年東京藝術大学音楽環境創造科を卒業。2019年からStyrismに所属し、これまでにCHARA、SIRUP、odol、WONKなどの作品を手掛ける。最近ではTK from 凛として時雨、春野、NIKO NIKO TAN TANなどのエンジニアを担当する。
Recent Work
『新喜劇』
NIKO NIKO TAN TAN
(ビクター)