【会員限定】小室哲哉と浅倉大介のユニット=PANDORAが再始動!PANDORA LIVE 2025 -OPEN THE BOX-徹底ライブレポート

PANDORA LIVE 2025 -OPEN THE BOX-

小室哲哉と浅倉大介のユニットが約7年ぶりに再始動

約7年ぶりの再始動を迎えた小室哲哉と浅倉大介のユニット=PANDORAが、2025年2月28日にZepp DiverCity(TOKYO)で『PANDORA LIVE 2025 -OPEN THE BOX-』と銘打ったライブを開催。日本の音楽シーンを代表する二人が紡ぎ出す革新的な音世界と、熱狂的なファンとの一体感が会場を包み込んだ。今回のレポートではその様子をお届けするとともに、後半では多彩なシンセ・ラインナップを含んだライブ機材の詳細に迫ってみよう。

小室哲哉

KORG PS-3300復刻モデルが2台鎮座

 ライブは未発売曲「Anthem In The Dark」からエネルギッシュにスタート。続く「336」や「I Believe It」では疾走感のあるビートや電子音に激しい照明演出が重なり観客を圧倒する。ステージ下手には小室哲哉のブース、上手には浅倉大介のブースが構えられているが、双方とも奥にはKORGのアナログ・モジュラー・シンセPS-3300の復刻モデル(ライブ当日の段階では国内発売未定/6月発売予定)が鎮座するという圧巻の光景だ。

 ここでゲスト・シンガーのBeverlyが登場し、華やかなステージがさらに彩られる。「Shining Star」「Guardian」などに交え、USでのカントリー回帰の流れを踏まえてジョン・デンバー「Sunshine On My Shoulders」のPANDORA流カバーも披露。小室は「Beverlyはいつも歌に真剣に取り組んでいる」と賞賛する。

 この日はPANDORAの新曲「Twilight」も初披露。軽快でダンサブルなエレクトロ・ポップ・サウンドとBeverlyの力強い歌声が、観客を魅了する。小室は“昼と夜の境目=夕暮れ”に“揺れる心情”を重ね合わせたと語った。

 Beverlyは「One Vision」を歌唱後にいったんステージ裏へ、長尺インスト「Aerodynamics」がスタート。両者ともYAMAHA Montage M7を正面に置き、小室はSEQUENTIAL Prophet XとMOOG Minimoog Model Dを、浅倉はROLAND System-8+ASHUN SOUND MACHINES HydrasynthとBEHRINGER Poly Dを左右にセットしていたが、それぞれが弾くMinimoogとPoly Dのキャラクターの違いも生かされている。小室が弾く前者が丸く太い音なのに対して、浅倉の後者はカラッとしたサウンドを奏でる。また、浅倉はHydrasynthでモジュレーションのかかった強烈なサウンドを織り交ぜながら曲を展開。小室はPS-3300でピッチ・モジュレーションをかけたり、Montage M7でアタックの強いピアノを鳴らしたりと、両者とも個性的な音で会話を重ねる。

 

朝倉

“ガンダム”つながりで楽曲を演奏

 「Aerodynamics」から間髪入れずT.M.Revolution「Meteor -ミーティア-」のイントロが。もう一人のゲスト西川貴教が登場し、PANDORAらしいエレクトロニックなアプローチでこの曲を披露する。オリジナル版の壮大さを残しつつも未来的な響きが加えられ、観客は大きな盛り上がりを見せた。

 そして「INVOKE -インヴォーク-」(アニメ『機動戦士ガンダムSEED』オープニング・テーマ)、TM NETWORK「BEYOND THE TIME -メビウスの宇宙を越えて-」(映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』主題歌)のカバー、西川貴教 with t.komuro「FREEDOM」(映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』主題歌)と“ガンダム”つながりのメドレーが続く。  「FREEDOM」について、小室は書籍『小室哲哉 作曲の思考』(小社刊)で“この曲を演奏するときに、僕はどのパートを弾いたらいいか想像がつかない”という趣旨のことを語っていたが、原曲とは異なるPANDORAアレンジとなれば答えは明白。個性的なシンセのサウンドを散りばめていく。

 終盤ではBeverlyが再びステージに登場し、西川と二人でPANDORAの代表曲「Be The One」を圧倒的な歌唱力で披露。Beverlyのハイトーン・ボイスとそれを支える西川のハーモニーが会場全体を包み込み、観客から大きな歓声と拍手が送られた。同曲の歌詞には“未来への希望”という意味が込められており、再始動という新たなスタートを切るPANDORAにとってこの楽曲は、その意義を象徴するものであっただろう。 

Beverly、西川貴教

ライブ終盤、「Be The One」を力強く歌い上げた二人のゲスト=Beverly(写真左から2番目)と西川貴教(同右から2番目)

小室と浅倉による即興セッション

 MCにて、小室は「7年ぶりにパンドラの箱が開いた。Pandoraを辞書で引くとネガティブな解釈もあるけれど、希望という意味もある。箱の底には希望が残っている」と強調。そして、最後はPANDORAによる即興演奏でライブを終えた。

 小室と浅倉は、浅倉側ブースのPoly Dを用いてリアルタイムにシーケンス・パターンを1音ずつ交互にプログラム。そのシーケンスに乗ってPS-3300などのシンセを巧みに操り、絶妙なアンサンブルを披露した。アナログ・シンセ特有の太く温かみのあるサウンドが会場全体に響き渡り、壮大な雰囲気を演出。アウトロがフェードアウトする中、二人はステージ上で握手を交わし、ライブは感動のクライマックスを迎えた。

小室と朝倉

 『PANDORA LIVE 2025 -OPEN THE BOX-』は、PANDORAの再始動を象徴する一夜となった。豪華なゲスト出演、圧倒的なセットリスト、そしてユーモアと感動に満ちたMCが、観客に忘れがたい体験を提供したことだろう。今後の活動にもますます注目したい。

 なお、このライブはBlu-rayとして収録され、5月28日に発売予定とのこと。詳細は、PANDORA特設サイト(https://www.110107.com/PANDORA)をチェックしていただきたい。ファンはこの特別な瞬間を、何度でも楽しむことができるだろう。

小室哲哉 Live Set 〜デジタルからアナログまでMIDIでシンセを統合〜

演奏者を取り囲むように設置された複数のシンセとリズム・マシン。それらはMIDIインターフェースICONNECTIVITY MioXLを介して統合されており、3台のMIDIコントローラー・パッドKORG NanoPADにて効率的な音色切り替えや演奏制御を実現している。

小室哲哉ブース全景

小室哲哉ブース全景

KORG PS- 3300

ブース奥側には、1977〜1981年にかけてわずか50 台のみ製造されたというアナログ・シンセKORG PS- 3300の復刻モデルが鎮座する。ライブ終盤では、特に小室は浅倉とのセッション時に多用していた

Montage M7

当日のメイン・シンセとしてブース中央にセットされたのは、YAMAHAのフラッグシップ・シンセ・シリーズMontage Mの一つ、Montage M7だ。コードからリード・シンセ、パーカッションまで幅広い音色の演奏を担っていた

SEQUE NTIAL Prophet X

  ブースの上手側には、デジタル・シンセのSEQUE NTIAL Prophet Xがスタンバイ。「Guardian」のイントロでは、非常にリアルな木管楽器の音色を奏でていたのが印象的だった

MOO G Minimoog Model D、ELE KTRON Machinedrum SPS-1

一方のブース下手側には、アナログ・シンセMOO G Minimoog Model D(写真左)とリズム・マシンELE KTRON Machinedrum SPS-1(同右)を備える。Mini moog Model Dは、ひときわ濃密で存在感のあるサウンドを鳴らしていた

浅倉大介 Live Set 〜多様なシンセ群のパフォーマンスに特化〜

小室のブースと同じく、浅倉のブースでも複数のシンセが演奏者を取り囲むように配置されている。これらの音源は、ブース裏に備わるMACKIE.の14chコンパクト・ミキサー、1402 VLZ4に統合。マイクは設置せず、キーボードの演奏に特化したセットアップとなっている。

浅倉大介ブース全景

浅倉大介ブース全景

PS-3300FS

 小室と同様に、ブース奥にはPS-3300を設置する。オリジナル・モデルよりも1音増加した49音ポリフォニック仕様となり、最大256スロットの音色保存が可能だ。浅倉はピッチ・モジュレーションのかかったエフェクティブなサウンドを、ライブ序盤のほか、「Aerodynamics」や即興セッションなど、さまざまな楽曲や場面で用いていた

Montage M7

Montage M7は、メイン・シンセとしてブース中央にセット。「One Vision」では、華やかなストリングスの音色を奏でていた

ASHUN SOUND M ACHINES Hydrasynth、ROLAND System-8

  ブースの上手側には、ウェーブ・モーフィング・エンジンを採用したデジタル・シンセASHUN SOUND M ACHINES Hydrasynth(写真上)と、ROLANDのAI RAシリーズに属するシンセ、System-8(同下)がスタンバイ

BEHRING ER Poly D、LINE 6 DL4

  ブース下手側には、アナログ・シンセのBEHRING ER Poly D(写真左)と、ディレイに特化したエフェクト・ペダルLINE 6 DL4(同右)が置かれている

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