【会員限定】MUCC『1997』の制作拠点!ミヤのプライベートスタジオをレポート

ミヤのプライベート・スタジオ

Sixinc Studio2
ミヤが日々、楽曲制作を行い、歌入れなどの本番レコーディングも行うというプライベート・スタジオ。その最新の様子を披露していただいた。

初期衝動と完成形に近いところの両方を
漏れなく記録できるようにしています

ロック・バンド、MUCCが4月にリリースした17thアルバムは結成年を冠する『1997』。その制作の中心となったのが、ギタリストのミヤが所有するプライベート・スタジオ、Sixinc Studio2だ。6畳前後のコントロール・ルームと1畳ほどのボーカル・ブースから構成されており、本誌2013年1月号で取材して以来、随所がアップデートされたということで、今回あらためてレポートしている。機材群を眺めながらミヤに話を聞いた。

SONYの民生イヤホンでもミックス

──このプライベート・スタジオでもAVID Pro Toolsを使っているのですか?

ミヤ はい、Pro Tools Ultimateを使っています。レコーディング・スタジオと行き来するし、カフェとかでもミックスをするので、同じ環境でやれるようにしているんです。昔は、家に帰らないとできないことがいっぱいある、っていうのが当たり前でした。そこから、さらにさかのぼるとスタジオに行かなくちゃ何もできなかった。それが家で割と何でもできるようになって、今はどこでも何でもできるようになってしまった(笑)。 

──仕事のオンとオフの切り替えが大変ではないですか? 

ミヤ 俺、好きなものが音楽と車くらいしかないので、全然平気なんですよ。 

──外で作業するときのモニターは?

ミヤ SONYのWF-1000XM3です。5~6年前に発売されたBluetoothイヤホンで、もう生産完了品なんですが、個人的に一番使いやすくて。最近では、この部屋でスピーカーの音を聴いているよりWF-1000XM3でミックスしている時間のほうが長く、ライブ音源のミックスとかはこれだけで済ませます。サウンドについては、リスニング用途で普通に楽しく聴ける音なんですけど、やりすぎていない感じ。MDR-CD900STに通じるものがありつつ、もっと低域のほうまで出ています。レコスタで録った後、当日中に録り音をチェックしたら、レコスタで聴いたのと同じ音がする。悪い演奏は悪く聴こえるし、音のデコボコもきちんと分かるので、民生機でこの感じっていうのは結構レアだなと。

WF-1000XM3

外出先でのミックスに活用しているSONYのBluetoothイヤホンWF-1000XM3。程良い色付けがありつつ、ソースの特性を分かりやすく伝える音質をミヤは高く評価している

──ここではGENELECのスピーカー8331Aでモニターしているのですね。SAMシステムの音響補正も活用していますか? 

ミヤ SAMがないと嫌ですね。SAMがあるおかげで、あらゆる場所で同じように作業できるというか、例えばレコスタに8331Aを持っていってキャリブレーションすれば、自宅スタジオの音とあまりギャップがない状態でモニターすることが可能です。レコスタの鳴りって、個性であり特徴でもあるんですが、自分が作業するときに“このスタジオで聴くから、自宅とは大きく違って聴こえるのかな……?”って具合に、判断が遅くなるのが嫌で。ウチらは恵まれた環境でレコーディングさせてもらっていますが、ものすごく余裕があるわけではないしアナログ機器も使うので、やっぱり時間が一番大事。効率良くやりたいんです。だからSAMのようなソリューションが役に立ちます。 

デスク周り

デスク周り。DAWはAVID Pro Tools Ultimateを使用しており、モニター・スピーカーはSAMシステムでキャリブレーション済みのGENELEC 8331A。背面側の壁には、VICOUSTICの調音パネルを設置している。デスク右手のミキサーは4インのTOFT AUDIO DESIGNS ATB-04だ

SHADOW HILLS INDUSTRIES Oculus

SHADOW HILLS INDUSTRIES Oculusは、10年間ほど愛用しつづけているモニター・コントローラー。「メーカーの個性が伝わってくるというか、少し色を感じるところが良いですね。モニコンなので強い脚色ではないんですが、ハイエンドとローエンドにちょっとしたキャラクターがあるんです。MUCCをはじめ、俺が作る音楽を再生するのにめちゃくちゃ合っている」とミヤは言う

AVANTONE CLA-10

モニター・スピーカーのAVANTONE CLA-10と併用しているELACのサブウーファー。「L'Arc-en-Cielのkenさんにもらいました。ピュア・オーディオ系ですが、ナチュラルな感じの音です。このサブウーファーに音声を入力していて、分岐した信号がCLA-10に入っています」

オーディオI/Oはラック最上段のAVI D Pro Tools|Carbon

オーディオI/Oはラック最上段のAVI D Pro Tools|Carbon。NEVE 33421をノック・ダウンした2chマイクプリを挟み、PURPLE AUDIO MC76やBLACK LION AUDIO Blueyといったシルバー・パネル1176系コンプが設置され、その下には「このくらいのサイズのオーディオI/Oでは今一番、音が良いと思う」と話すハーフ・ラックのモデル、BLACK LI ON AUDIO Revolution 2×2が見える。外出先での録音に重宝しているそうだ

デジタル・ディレイのROL AND SDE-2000

デジタル・ディレイのROL AND SDE-2000やマルチエフェクトのYAMAHA SPX900といった1980年代の機材も現役。ラック最下段にあるのはモニター・コントローラーOculusの入出力ユニットだ

Germanium PreAmp/DI

青いパネルのGermanium PreAmp/DIは、逹瑯の歌録りにメインで使われているマイクプリ。最下段のハーフ・ラックは、1993年に発売されたギター用マルチエフェクターBOSS SE-70で、『1997』の制作にも活用している。ミヤは、このSE-70をライブ用込みで10台ほど所有

WARM AUDIO WA-47が逹瑯にマッチ

──ここで『1997』のボーカル・レコーディングの7割ほどを行ったと伺いましたが、マイクは何を使いましたか? 

ミヤ 曲によりけりですが、WARM AUDIO WA-47かGOLDEN AGE AUDIO GA-8000、SHURE SM7Bの3本から選びました。逹瑯のボーカルはミッドがすごく張っているので、ミッドの控えめなマイクが合うんですよ。中でもWA-47はめちゃくちゃマッチしている。例えば「Daydream Believer」の歌はWA-47で録っているので、ビンテージのNUEMANN U47で録った「愛の唄」と聴き比べてもらったら、違いがよく分かるはずです。自宅で歌入れしているとマイクが決まってくるから、外のスタジオで“このまま1曲録っちゃおうよ”ってノリで違うマイクを試すのも好きですね。今回はaLIVEのエンジニアの方が所有していたMANLEYの2機種で録音してみて、結局はReference Goldを採用したのかな。 

ボーカル・ブース

本番の歌入れが行われるボーカル・ブース。マイク・スタンドには、写真手前からGOLDEN AGE AUDIO GA-8000、SHURE SM7B、WARM AUDIO WA-47を設置。スタンドにかかっているヘッドホンはVICTOR HA-MX100V

DRAGONFLYのギター

DRAGONFLYのギターの手前に見えるのは、ミヤが自身のコーラス録音に用いているWARM AUDIO WA-251。コントロール・ルームのアコースティックが声に合っているそうで、コーラス録りにはボーカル・ブースを使わなくなったそう

──Sixinc Studio2は、曲作りから本番の歌録りまで、幅広く対応できる環境ですね。 

ミヤ 例えば逹瑯は、マニピュレーターの足立房文とプリプロしてくるので、ここでは歌入れだけに集中するんです。片や俺は、デモ作りも本番のコーラス録りもやるから、初期衝動と完成形に近いところの両方を記録していることになります。それらを漏れなく記録できるような環境にしているって感じですね。

愛用のギターや5弦ベース

愛用のギターや5弦ベース

KEMPER Profiler Head

KEMPER Profiler Head(写真奥)の音は、デモだけでなく本番に使われることもある。『1997』の収録曲では「B&W」に多用されていて、ファズのサウンド以外はすべてProfiler Headのクリーン・トーンだそう。「Guilty Man」のクリーン・トーンもProfiler Headによるものだ

TASCAM 112MKII

カセット・テープのリスニングに使用しているTASCAM 112MKII。インプットのアンプが明るいトーンで、なかなか良いという

カセットMTRのTEAC 244

カセットMTRのTEAC 244。2018年のライブで販売したデモ・カセット『自己嫌悪DEMO』『絶望楽園DEMO』の制作に使われた

キュー・ボックス、FUTABA FS-0095

音響ハウスから買い取ったキュー・ボックス、FUTABA FS-0095。本機についてミヤは「音が良いんです。ミュージシャンは返しを聴いて演奏の質を判断するから、キュー・ボックスって録りの現場では最も大事な機材の一つだと思います」と語る

オリジナル・トークバック・スイッチ

かわいらしい仕様のオリジナル・トークバック・スイッチ

 

Release

『1997』
MUCC

(徳間ジャパン:TKCA-75271/通常盤CD)

Musician: 達瑯(vo)、ミヤ(g、prog、sampling、cho、tambourine)、YUKKE(b)、Allen “Michael” Coleman(ds、cho)、吉田トオル(p、electric piano、org、k、prog、cho)、JaQwa(prog)、足立房文(additional arrangement) 
Producer: ミヤ
Engineer:原裕之、ミヤ、幾原梨緒、中林純也

Studio: aLIVE RECORDING STUDIO、Chofu Recording Studio、STUDIO SUNSHINE、Studio Sound DALI、Sixinc Studio2

 

関連記事