ファンの皆さんが僕の作った音源に反応してくれる時、一番のやりがいを感じます
今回登場するのはPSYCHIC FEVERのメンバー、中西椋雅。ヒップホップやダンス・ミュージックを軸に、自身のグループのライブ用音源やリミックスの制作まで幅広い音楽活動を展開する。今回はそんな彼のスタジオに潜入し、使用機材やプラグイン、制作曲に込めた想いなどについて話を伺ってみよう。
【Profile】2022年にデビューしたダンス/ボーカル・グループ、PSYCHIC FEVERのメンバー。4歳からダンスを始め、9歳でLDHが運営するダンススクールに入校。同グループ内ではラップ&MCだけでなく、プロデューサー的視点からグループ全体の音楽性に大きく貢献する存在。
Release
『Paradise』
PSYCHIC FEVER from EXILE TRIBE
(LDH Records)
8030CとiLoud Micro Monitorを使い分け
■コンピューターとDAWシステム
このスタジオの使用期間は1年半くらい。コンピューターはAPPLE MacBook Proで、DAWはAPPLE Logic Proを使用しています。最初にDAWを触ったのは中学生のころで、当時はAPPLE GarageBandを使っていましたが、高校生のころからLogic Proに移行しました。最近は、Ableton Liveを使っているのをYouTubeで見かけることが多く、興味があります。そのほかAVID Pro Toolsも使っていて、こちらはLDHのスタジオでレコーディングしたデータをラフミックスする際に用いることが多いです。
■オーディオ・インターフェース
UNIVERSAL AUDIO Apollo Soloを使っています。コンパクトなサイズ感が持ち運びに便利。またバスパワー駆動(Thunderbolt 3接続モデルのみ)のためACアダプターやコンセントが不要なのも気に入っています。ツアーで海外に行くこともあり、現地では日本と異なる電圧やコンセント形状が一般的なので、そういう点からもApollo Soloを重宝しています。
■愛用ヘッドホン
DJ向けのPioneer DJ HDJ-X5を、4年ほど使っています。DJ HDJ-X5は、特にDJをするときにテンションを上げてくれるヘッドホン。単に音をよく聴かせてくれるだけでなく、DJミキサーのEQを操作したときに低域や高域の変化が分かりやすく再現される点が気に入っています。
■モニター・スピーカー
モニター・スピーカーはGenelec 8030C。購入のきっかけは、LDHのスタジオに導入してあるGenelecのモニター・スピーカーの音を聴いたことでした。その音を聴いたときに“Genelecは自分の好みのサウンドだ”と感じたんです。このスタジオにある8030Cは、ヒップホップやダンス・ミュージックの低域をしっかり感じることができ、音質もクリア。密度のあるサウンドも楽しめます。ちなみに海外で制作するときは、音だけでなく持ち運びにも優れているIK Multimedia iLoud Micro Monitorを活用しています。背面には、設置環境に応じて音響特性を調整できる、3つのEQスイッチを搭載しているのもいいですね。とても重宝しています。このスタジオで使用する場合は、モニター・コントローラーのMackie. Big Knob Studioで、Genelec 8030CとiLoud Micro Monitorを切り替えながらモニターしています。ヘッドホンを長時間使用すると耳が疲れやすいというのもあり、僕は主にスピーカー環境で制作やミックスを行っています。
ヒップホップ系のベースにはSubLabを多用
■ソフト音源
音源は基本的にソフトを使います。Vengeance Sound VPS Avengerは、こちらであまり手を加えなくてもある程度サウンドが完成されているため、パラメーターを駆使して細かい音作りをするのが得意ではない僕でも簡単に扱えるソフト・シンセだと思います。ツアー中の限られた時間で複数の曲のアレンジをすることが多い僕らにとって、効率的に作業できるのがありがたいです。そのほかシンセやシンセ・ベースには、Xfer Records SerumやFuture Audio Workshop SubLabなどを用います。特にヒップホップ系の曲ではSubLabの出番が多め。SubLabは定番のベース・サウンドだけでなく、有名なプロデューサーのサウンド・プリセットも収録しているためすごく便利です。Native Instruments Kontaktもお気に入りで、ピアノ音源ライブラリーのAlicia’s Keysが好き。ピアノの音が生に近いため、曲の間奏部分で鳴らしたり、音像の背景としてさりげなく使ったりすることが多いですね。
■プラグイン・エフェクト
よく使うプラグインはWAVES OneKnobシリーズのローパス・フィルター、Waves OneKnob Filter。コンサート中のメドレー・コーナーを作る際、DJミキサーに備わるフィルター効果を再現するために使っています。シンプルで使いやすいですね。SSL 4000 Series-Gのチャンネルストリップを忠実に再現したプラグインのWAVES SSL G-Channelは、ラジオ効果のプリセットがあるので、ボーカルなどをトランシーバーのような音にしたいときに多用します。あと、EQのFabFilter Pro-Q 3は視覚的に見やすい&操作しやすいだけでなく、カットしたい帯域をしっかり切れる印象がありますね。リバーブは、KSHMR Reverbがお薦め。シンプルで使いやすいですし、プリセットが豊富で、掛かり具合も分かりやすいです。シンセにリバーブをかける際、原音の響きをしっかり保ちながらリバーブ調整できるのも便利です。
■ライブ用音源を作る楽しさ
ライブ用の音源を作っていて“楽しい”とか“良かった”と思う瞬間は、“ファンの皆さんが、僕が作った音源に反応してくれる時”です。SNSに“ライブのあの音が良かったとか、あの音は何だろう?”って書いてくれるのを見たときは、達成感を感じます。グループでは、基本的に僕かJIMMYがライブ音源を作るのですが、そうやって気づいてもらえるのは本当にうれしい限り。寝る間を惜しみ、時間をかけて制作しているのでやりがいがあります。“キックを足した?”とか“テンポが少し早くなった?”といった、マニアックなコメントをもらえると、すごくニヤニヤしてしまいますね(笑)。
■今後の展望
DJ兼音楽クリエイターのように自分で曲を作り、それをDJとして披露するスタイルを目指しています。PSYCHIC FEVERの音楽を届けるのはもちろん、特に海外ではクラブやライブ・ハウス・シーンでDJ需要が高いので、そうした場所でスキルを磨きつつ、クリエイターとしてもしっかりと自分の音楽スタイルを確立して世界で勝負していきたいです。
中西椋雅(PSYCHIC FEVER )を形成する3枚
「Just a Dream」(『5.0』収録)
ネリー
(ユニバーサル)
「幼いころからダンスをしていたのですが、当時ダンススタジオでよく聴いていた曲の中でお気に入りの一曲です。心地良いサウンドとコーラスが印象的で、大人になった今でも良く聴いています」
『Pepper』
Flowdan、リル・ベイビー、スクリレックス
(OWSLA/Atlantic)
「僕が曲を作る際に参考にさせていただいている方の一人。シンセやベース、声ネタの使い方、サウンドの厚み、ダンス映えするリズム感などがとても好きです。新曲がリリースされる度にチェックしています」
「Jjam」(『Ate』収録)
Stray Kids
(JYP Entertainment)
「自ら作詞作曲/振り付けをするなど、クリエイティブの面でも活躍するグループと知り、要チェックしています。この曲にはさまざまなシンセやベースが登場し、展開も多く、聴いていてとても楽しいです」