大切なのは自分の好きなことを見つけてとことんやり続けること
世界の各都市で活躍するビート・メイカーのスタジオを訪れ、音楽制作にまつわる話を聞く本コーナー。今回登場するのはニューヨークを拠点とするビート・メイカーのドゥーフだ。自身がコレクションするレコードは700〜800枚に上り、日々レコードからサンプリングしてビートを制作する。ここでは、サンプラー好きな彼にビート・メイキングのこだわりを伺った。
キャリアのスタート
音楽はMFドゥームの影響で始めたんだ。音楽って楽しそうだなって思わせてくれたのが彼だったからな。だから俺のアーティスト名を“MFドゥーム”に似せたんだ。そして子供の頃、母親には“Doofus”、友達には“Doof”って呼ばれていたから、アーティスト名を“DøøF”にしようって思ったんだよ。ビート・メイキングを始めたきっかけは、高校生のときに先生がAPPLE GarageBandの使い方を教えてくれたこと。それから毎日、ビートを作り始めた。
初めての機材
16〜17歳の頃、GarageBandとオーディオ・インターフェースのLINE 6 Pod Studio UX2を手に入れた。当時はツイン・サイズのマットレス2枚と冬用のコートやジャケットを自宅のクローゼットに入れ、ベルトで固定して簡易的なボーカル・ブースを自作したんだ。その頃は、スタジオ代を払うお金がなかったからね。
サンプラーとの出会い
アニマル・コレクティヴの「My Girls」っていう曲のミュージック・ビデオを見て、初めてROLAND SP-555の存在を知った。一方、俺の地元のビート・シーンでもオブリヴ、デイヴィッド・ストレンジ、DJハリソンなどがSP-555を使っていたんだ。だから、なんとなくSP-555に興味が湧いてきて、ついに2018年に自分のSP-555を手に入れた。これがきっかけでどんどんハードウェアにハマっていったんだ。特にコロナ禍以降は、NATIVE INSTRUMENTS Maschineでビート・メイキングして収入もそこそこ入るようになったから、そのお金をすべてハードウェアに費やした。今ではAKAI PROFESSIONAL MPC1000とMPC5000、ROLAND SP-404が2台、SP-303、SP-555などのサンプラーを所有している。MPC5000ではあらゆることができるけど、俺はMPC1000の方が好きだ。使い方に慣れているからね。
DAWやソフトウェアについて
基本的にDAWやソフトウェア、プラグインは使わない。どうしても使うとするならば、APPLE iPhoneにインストールしたAPPLE GarageBandだ。GarageBandはマジで素晴らしいよ。無料だしね。時にはどのハードウェアで作った曲よりもヤバいものが出来上がることもある。録音はTASCAMの8トラックMTR、DP-008EXで行っている。
ビート・メイキング時に大切にしていること
俺にとって一番大事なのは心の状態、つまりどんな気分かってことだ。心配事で頭がいっぱいだと何にもフォーカスできないんだよ。だから、スタジオにあるすべての機材の電源を入れたら、しばらくレコードを聴いて心が穏やかになるのを待つ。それからビート・メイキングに取りかかるんだ。
ビート・メイキングのインスピレーション源
レコードだ。普段俺はレコードからサンプリングするんだけど、相当な数あるよ。700~800枚くらいはあるかな。とにかくインスピレーションを求めてレコードを買いに行く。以前購入した分をまだ全部聴いていないとしてもね(笑)。
若いクリエイターへのアドバイス
大切なのは、自分の好きなことを見つけてとことんやり続けること。目標にフォーカスし続けて、トラブルには手を出すな。いつ、どこでどうヒットするのかなんてこの先誰にも分からないから。
SELECTED WORK
『SNAKE INNA RATTRAP』
ドゥーフ
(自主制作)
思い入れのあるアルバム。制作後は、まるで別人になってしまったかと思うほど、自分の感情をこの作品で思い切り吐き切ったんだよ。