DøøF(ドゥーフ) 〜レコードからのサンプリングにこだわるビート・メイカー

DøøF(ドゥーフ) 〜レコードからのサンプリングにこだわるビート・メイカー

大切なのは自分の好きなことを見つけてとことんやり続けること

世界の各都市で活躍するビート・メイカーのスタジオを訪れ、音楽制作にまつわる話を聞く本コーナー。今回登場するのはニューヨークを拠点とするビート・メイカーのドゥーフだ。自身がコレクションするレコードは700〜800枚に上り、日々レコードからサンプリングしてビートを制作する。ここでは、サンプラー好きな彼にビート・メイキングのこだわりを伺った。

キャリアのスタート

 音楽はMFドゥームの影響で始めたんだ。音楽って楽しそうだなって思わせてくれたのが彼だったからな。だから俺のアーティスト名を“MFドゥーム”に似せたんだ。そして子供の頃、母親には“Doofus”、友達には“Doof”って呼ばれていたから、アーティスト名を“DøøF”にしようって思ったんだよ。ビート・メイキングを始めたきっかけは、高校生のときに先生がAPPLE GarageBandの使い方を教えてくれたこと。それから毎日、ビートを作り始めた。

ニューヨークにあるドゥーフのプライベート・スタジオ。写真左端にあるデスクには、8trハード・ディスク・レコーダーのKORG D888をセットし、その右手にはサンプラーのBOSS SP-303の姿が見える。また、同中央にはROLAND SP-404やAKAI PROFESSIONAL MPC1000、AUDIO-TECHNICA AT-LP120XUSBがデスク上にスタンバイ。一方のデスクの下には、シンセのKORG Monologueが置かれている

ニューヨークにあるドゥーフのプライベート・スタジオ。写真左端にあるデスクには、8trハード・ディスク・レコーダーのKORG D888をセットし、その右手にはサンプラーのBOSS SP-303の姿が見える。また、同中央にはROLAND SP-404やAKAI PROFESSIONAL MPC1000、AUDIO-TECHNICA AT-LP120XUSBがデスク上にスタンバイ。一方のデスクの下には、シンセのKORG Monologueが置かれている

ポータブルDJスピーカーのNAXA ELECTRONICS NDS-1231。12インチ径ウーファーを搭載している

ポータブルDJスピーカーのNAXA ELECTRONICS NDS-1231。12インチ径ウーファーを搭載している

初めての機材

 16〜17歳の頃、GarageBandとオーディオ・インターフェースのLINE 6 Pod Studio UX2を手に入れた。当時はツイン・サイズのマットレス2枚と冬用のコートやジャケットを自宅のクローゼットに入れ、ベルトで固定して簡易的なボーカル・ブースを自作したんだ。その頃は、スタジオ代を払うお金がなかったからね。

サンプラーとの出会い

 アニマル・コレクティヴの「My Girls」っていう曲のミュージック・ビデオを見て、初めてROLAND SP-555の存在を知った。一方、俺の地元のビート・シーンでもオブリヴ、デイヴィッド・ストレンジ、DJハリソンなどがSP-555を使っていたんだ。だから、なんとなくSP-555に興味が湧いてきて、ついに2018年に自分のSP-555を手に入れた。これがきっかけでどんどんハードウェアにハマっていったんだ。特にコロナ禍以降は、NATIVE INSTRUMENTS Maschineでビート・メイキングして収入もそこそこ入るようになったから、そのお金をすべてハードウェアに費やした。今ではAKAI PROFESSIONAL MPC1000とMPC5000、ROLAND SP-404が2台、SP-303、SP-555などのサンプラーを所有している。MPC5000ではあらゆることができるけど、俺はMPC1000の方が好きだ。使い方に慣れているからね。

リビングにあるデスクには、サンプラーのAKAI PROFESSIONAL MPC5000やROLAND SP-555のほか、8トラックMTRのTASCAM DP-008EXをセット。写真右端には、2台目のSP-404とDJミキサーのGEMINI PS-121Xを配置する

リビングにあるデスクには、サンプラーのAKAI PROFESSIONAL MPC5000やROLAND SP-555のほか、8トラックMTRのTASCAM DP-008EXをセット。写真右端には、2台目のSP-404とDJミキサーのGEMINI PS-121Xを配置する

DAWやソフトウェアについて

 基本的にDAWやソフトウェア、プラグインは使わない。どうしても使うとするならば、APPLE iPhoneにインストールしたAPPLE GarageBandだ。GarageBandはマジで素晴らしいよ。無料だしね。時にはどのハードウェアで作った曲よりもヤバいものが出来上がることもある。録音はTASCAMの8トラックMTR、DP-008EXで行っている。

ビート・メイキング時に大切にしていること

 俺にとって一番大事なのは心の状態、つまりどんな気分かってことだ。心配事で頭がいっぱいだと何にもフォーカスできないんだよ。だから、スタジオにあるすべての機材の電源を入れたら、しばらくレコードを聴いて心が穏やかになるのを待つ。それからビート・メイキングに取りかかるんだ。

ビート・メイキングのインスピレーション源

 レコードだ。普段俺はレコードからサンプリングするんだけど、相当な数あるよ。700~800枚くらいはあるかな。とにかくインスピレーションを求めてレコードを買いに行く。以前購入した分をまだ全部聴いていないとしてもね(笑)。

若いクリエイターへのアドバイス

 大切なのは、自分の好きなことを見つけてとことんやり続けること。目標にフォーカスし続けて、トラブルには手を出すな。いつ、どこでどうヒットするのかなんてこの先誰にも分からないから。

SELECTED WORK

『SNAKE INNA RATTRAP』
ドゥーフ
(自主制作)

 思い入れのあるアルバム。制作後は、まるで別人になってしまったかと思うほど、自分の感情をこの作品で思い切り吐き切ったんだよ。

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