青葉市子『Luminescent Creatures』共同プロデューサー梅林太郎とエンジニア葛西敏彦を交えて語る本作の制作秘話

青葉市子

この作品を通して、どんな生き物も肯定されるような
世界になったらいいなという願いがあります

音楽家の青葉市子が、アルバム『Luminescent Creatures』を2月にリリースした。前作『アダンの風』と同じく、共同プロデューサーに梅林太郎を、エンジニアに葛西敏彦を迎えて制作された本作は、原点とも言える弾き語り形式から壮大なオーケストレーションまで多彩なアレンジがありつつも、アルバムとして一貫した世界観を構築。聴く者を穏やかな気持ちにさせてくれる一枚だ。現在長期のワールド・ツアー中の青葉が日本をたつ前に、梅林と葛西も交え、今作がいかにして作られたのかを聞いた。じっくりと読み進めていただけたら幸いだ。

【梅林太郎】 東京藝術大学作曲科卒業。アルバム『greeting for the sleeping seeds』(2012年)をリリース。国内外のさまざまなアーティスト・プロデュースや、コラボレーションのほか、劇伴、広告音楽制作も手掛けている。

【葛西敏彦】 スタジオ録音からライブPA、サウンド・インスタレーションなど、場所を問わず音へのアプローチを続けるサウンド・エンジニア。蓮沼執太、青葉市子、スカート、岡田拓郎、小西遼などを手掛けるほか、2022年からは自主レーベルS.L.L.S Records(シルスレコーズ)も主催する。

自分より自分を理解している

──今作の発表時に、葛西さんが“とても長い時間をかけて皆さんと一緒に作った”と、Xでポストされているのを拝見しました。

青葉 すごく時間がかかりました。前作『アダンの風』が2020年12月の発売で、その次の瞬間から創作は始まっていた気がします。我々も前作が完成したときに、これで終わりとはきっと誰も思っていなかったし、『Luminescent Creatures』に入っている曲の中には前作の制作時にもう生まれていたものもあります。何度も一緒に集まったり、音のかけらみたいなものを交換しあう期間があって、ようやく本格的なレコーディングに着手できたのが昨年の5月です。

──そろそろスタジオに入って録ろう、となるきっかけはあったのでしょうか?

青葉 いわゆるアルバム制作みたいな進行からはかなり外れていて。作曲、作詞、レコーディング、ミックスが全部同時進行だったので、目安も設けづらいというか。録音しても“やっぱりこういうアレンジが良い”となって使われなくなったものもたくさんありました。

──オーケストレーションや弾き語りなど、アレンジもさまざまです。それもスタジオに入って決めていったのでしょうか?

青葉 大きなスタジオでレコーディングするものは、ミュージシャンの方々をお呼びしているので、ある程度固めてからやっていたんですけど、弾き語りのものとかは、“今日、何ができそう?”という話から始めることもありました。「惑星の泪」はもともとピアノで作られた曲ですけど、ギターでやってみようとなり、アレンジしながら“じゃあ、録ってみよう”というふうに進んだこともありましたね。

葛西 準備しているものもあれば、そうじゃないものもあります。“波”というか……そのとき、そのときのみんなの判断でどんどん変わっていく。僕が知らないうちに新しい曲ができていて、“それ、知らないけど”みたいなこともありましたし(笑)。いろんなところで、いろんな形で進んでいたように思います。

──2曲目のタイトルが波照間島の座標です。収録曲の歌詞にも海を想起させるものがありますが、今作を創作する上で大きなインスピレーションとなっているのでしょうか?

青葉 そうですね。『アダンの風』のときから島々のリサーチをしていて、それ以降も続けています。『Luminescent Creatures』制作時には、最初に島のすべてのものに驚いていたときよりも、もう少し奥のほうに入った体験をたくさんしていて。島の神行事に参加させてもらったり、長く滞在していると潮の満ち引きも分かってきて、“このエリアにある生態系は台風が来たらこうなるんだな”“これくらい気温が下がると珊瑚が復活してくるんだな”とか、そういうことも深く研究しながら作っていったので、自然と島の記憶や情報は練り込まれていると思います。

──梅林さんは今作の約半数の作曲を手掛けています。青葉さんの曲を作るときにどういったイメージを持っていますか?

梅林 大きなテーマは『アダンの風』のときから地続きになっているので、それを今の時勢やタイミングで作るとどういうものになるのか。そういう話を市子ちゃんと密にやり取りして、曲ができていく感じです。「pirsomnia」は前作のバイオリズムだと合わないと思っていたけど、今回だったら入れても大丈夫かなとか、本当に水のように気持ちが揺らいでいく。揺らぎが常にあるから、なかなか作曲もスケジュール通りに進まないところがあって。言い訳ではないですけど(笑)。

──共作するようになったのはいつから?

青葉 『アダンの風』を作る前に、「守り哥」というシングルを一緒に作らせていただいたのが初めてです。その当時から、細かな感覚を音で表すにはどうしたらいいのか……例えば風が吹いています、と。その風の温度はどれくらいかな? ちょっとぬるめだったらフルートよりクラリネットなのかな?とか、そういう話を続けてきました。それが『アダンの風』から『Luminescent Creatures』と続くにつれて、さらに深く、細かくなっています。今振り返ると、自分より自分のことを理解している人のように感じます。私1人では到達できなかった、もともと持っていたものが揺り起こされるような感覚が梅先生にはありますね。本当にありがたいことだと思っています。

──とても強い関係なのですね。

青葉 ミックスが始まってからも、方向性が分かっているので、どちらが作曲したかに関係なく任せ合うことができました。私が作曲した曲も、梅先生にミックスの最終段階をお任せしたこともありましたし、逆もあったので。葛西さんとそれぞれで進めて、“これで合ってる?”という確認を繰り返していました。

──「tower」は作曲に2人の名前がクレジットされていますが、ほかの曲と違う作り方をしているのでしょうか?

梅林 ちょうどそのときに2人ともワルツを作っていたんです。僕はピアノで、市子ちゃんはギターでワルツを作っていて、別に狙っていたわけでもなく、本当に同じタイミングでした。それで、ギターかピアノのどっちがいいのかを相談して、最終的にはピアノとストリングスっていう形には落ち着いたんですけど、すごくびっくりしました。ちょうど作っていたものが、何もいじることなく合体したので。

青葉 キーも一緒でしたよね(笑)。

──すごい偶然ですね。

梅林 そうなんです。あれは感動しました。

テープ・レコーダーとリボン・マイクを活用

──葛西さんは、青葉さんの作品を手掛けるときにはどういうイメージをお持ちですか?

葛西 僕は基本的に、楽曲に合う音なら何でもよくて。選ばないというか、楽曲に合うならどんなに良い音でも、どんなにチープな音でもいいと考えています。今回の場合は2人から楽曲のイメージを聞いて、それに合わせて作ったり、こちらで作った音を聴いてもらったりして反応を見ながら進めました。具体的な機材で言うと、テープ・レコーダーを使ったのと、リボン・マイクを多用しています。ちょっとにじむような感じだったり、音が近いけれど柔らかさもある。音の明瞭さと淡さが同居しているという2人からのイメージもあり、それを具体化する方法として採用しました。ただ、テープで録りつつAVID Pro Toolsも同時に回していて、卓のアウトと、テープのヘッドをスルーさせたものとテープの音で、合計3種類録ってるんですよ。テイク管理も大変でした。最終的に、Pro Toolsのテイクも場所によって混ぜたりしています。

ストリングス・レコーディング時の葛西

ストリングス・レコーディング時の葛西。背後には、今作で使用したテープ・レコーダーSTUDER A827のVUメーターが見える

──作業としてすごく大変そうですね。

葛西 スタジオのアシスタントさんも一緒に頑張ってくれました。でも妥協なくやりたい。実際やって良かったです。

──葛西さんは2018年の『qp』から青葉さんの作品を手掛けています。青葉さんにとって葛西さんはどんなエンジニアなのでしょうか?

青葉 楽曲が良くなるなら音にこだわらないというのは、言い換えると変幻自在なのかなと。自分の意図をあまり入れすぎないところが、葛西さんのとても美しい音作りの一面と受け取っています。私の一人ぼっちの弾き語りから、梅林さんが作る壮大なアレンジまで、振り幅がこんなにあるのに1つの作品にまとめられたのは、葛西さんの変幻自在な部分があったからだと思うんです。一緒に話す時間をとにかく多く取っていたけど、具体的に“こういう音にしてほしい”と言えたのはレコーディングの直前か当日かもしれない。なので、音作りの話よりも、最近こういうことを考えているとか、社会でこういうことが起こっているとか、コロナ禍の静かだった頃から急にまた忙しくなった今、我々はどんな音でこの気持ちを集約するといいのだろうかということを、日々のそれぞれの体験から探っていく。それが音作りになっていったんじゃないかなって。

──サウンドについて具体的な話をしなくても、日々のコミュニケーションが音や制作につながっていく。

青葉 そうですね。まずはそこを一番大事にしていたと思います。

梅林 葛西君は、アーティストのやりたいことをうまく捉えて形にしてくれます。無理を言って負担をかけちゃうところもいっぱいある分、逆に全身全霊で乗っかってきてくれて、面白いものが生まれる。決めつけがないので、その状況を一緒に楽しめるのがすごくありがたいです。一緒にミックスしていて単純に楽しいです。

白昼夢のようなピアノの音に

──過去の本誌のインタビューで、青葉さんが“歌とギターは一緒に録る”“ほぼ最初のテイクを採用する”“クリックは聴かない”という話をされていました。そういった録り方は今も変わらないのでしょうか?

青葉 ベースはほぼ変わっていないんですけど、『Luminescent Creatures』はソロではないので、梅林さんの楽曲を演奏するにはクリックを聴かないとできないものもありました。今回最初のテイクを採用したのは……。

葛西 「惑星の泪」は1テイクしか録音していないです。

青葉 そうだ。弾き語りベースのものだと、やっぱり最初のテイクが一番良い。今回はアレンジがある前提での録音があったので、それが通用しないこともありましたね。でも、自分にとってはとても新鮮で、面白かったです。

──それを刺激として取り組めていた?

青葉 そうですね。私にとってクリックは制限がかかるという印象で、それは変わらないのですが、その中でいかにエネルギーをそのまま乗せるかという研究のようなことができたので、とても良い機会だったと思います。

──青葉さんの歌やギターのレコーディングで使用したマイクは何でしょうか?

葛西 歌はUPTON MICROPHONES 251が多かったけれど、曲によっていろいろ試していました。ギターはCOLES 4038が多いです。4038はハンバーグって呼ばれていて、“これはハンバーグかな?”とか言いながら選んでましたね(笑)。弾き語りのときには2本の4038だけで録ったりもしています。

──マイクプリは?

葛西 レコーディング・スタジオではNEVE 1073や1081だったり、4038にはインライン・プリアンプのSE ELECTRONICS DM2 TNTを付けたりしていました。僕の作業場ではMANLEY Slam!をよく使っていたと思います。

青葉のアトリエ

青葉のアトリエでのレコーディング風景。梅林がAPPLE MacBook Proに立ち上がったAVID Pro Toolsを操作している。青葉のボーカル・マイクは、写真中央やや右に見えるUPTON MICROPHONES 251

スプリング・リバーブのAKG BX15

スプリング・リバーブのAKG BX15はボーカルに使用。そのほかBRICASTI DESIGN M7なども用いているとのこと

ROLAND RE-201

ボーカルに使用したディレイの一つ、ROLAND RE-201

──梅林さんが弾くピアノの音色も、アルバムの中でとても印象的です。

葛西 あれは宅録なんですよ。いろんな状況が合わさって、市子ちゃんのアトリエにあるアップライト・ピアノを使おうとなり、僕が行って8ch分のマイクを立てました。あまりオフマイクは使わず、オンマイク主体で音色のバリエーションを作り、それを曲によって調整しています。実は、ピアノはかなり後半に録音したんです。ピアノが軸になっている曲もあり、ピアノから録った感じがするんですけど、ほぼ終盤に録っていて。演奏は大変だったと思いますが、針の穴を通すような演奏をしてもらいました。逆に言うと、曲の質感までほぼ見えている段階だったので、イメージするところを明確に目指して進められたと思います。

梅林 僕の中でピアノはこういう音が良いなっていうイメージがあって、葛西君にマイクの立て方とか、どの組み合わせが良いかとかを相談させてもらいました。何となくベールに包まれたような、ちょっと白昼夢みたいな音がいいなって。

葛西 部屋の響きもすごく良かったんですよ。あの響きを、今の記録として残しておきたいというのも、個人的にはありました。

青葉のアトリエ

青葉のアトリエで行ったピアノ・レコーディングの模様。YAMAHAのアップライト・ピアノにはCOLES 4038とAKG C 451 EBの各ペアをそれぞれL/Rに、トップと足元にはSC OPELABS Periscopeをセットしている。そのほか写真では見えないが、オフマイクとしてAUDIO-TECHNICA AT4081やC451 EBなども立てたという。オーディオ・インターフェースは梅林所有のRME Fireface UCX、マイクプリは葛西所有のGRACE DESIGN M801 MK2を持ち込んでいる

ERICA SYNTHS Syntrx II

今作で梅林が使用したシンセの一つ、ERICA SYNTHS Syntrx II

THERMIONIC CULTURE Culture Vulture

梅林が葛西から借りて今作の制作で使用したというディストーション/エンハンサーのTHERMIONIC CULTURE Culture Vulture

足りないものをリバーブで補完しない

──先行シングル「FLAG」のリバーブ感が心地良く、1月に行われた東京オペラシティ コンサートホールでの公演が想起されました。

葛西 リバーブをどう作るか、梅ちゃんと実験していた時期があるんです。どういうリバーブ感が良いのか、どういう響きが良いのか、何パターンも作ってアジャストするものを探していった感じです。

青葉 リバーブに関しては、しっかりした方向性が梅先生にもあったと思うんですよね。ただ録ったものに上から、フワーッとかけましたっていうのじゃなくて。

葛西 録音段階で梅ちゃんからの一番の希望が、“リバーブはかけたくない”。と言うと語弊があるかもしれないんですけど(笑)。

梅林 僕はテクスチャーが残るようにしてほしくて。ハープ、フルート、弦もそうですけど、楽器がこすれる音……そこがリバーブで埋もれないようにできたらいいなと。録りの段階からアンビエンスも含めて、葛西君には推敲(すいこう)していただきました。

葛西 ビクターのStudio 301の響きの良さをリバーブをかけずに感じられるように、オンマイクとオフマイクに分けて録音しました。テープで録っていたから、チャンネルも増やせなかったんです。オフは部屋の響きを狙い、それをリバーブ代わりにする。オンとオフのバランスだけでリバーブ感を作るという形でミックスしていました。後でリバーブをかけるときは、音響効果って言ったら良いのかな?

梅林 そうですね。足りないものをリバーブで補完しないように録りたいとはお願いしていました。

ビクターのStudio 301

ビクターのStudio 301でのレコーディング。青葉が弾いているのはMUSTEL製のチェレスタで、その前にリボン・マイクのCOLES 4038×2本などがセットされている

──「mazamun」には、エレピの打鍵音も収録されています。

青葉 「mazamun」はアトリエで、私がAPPLE iPhoneに接続できるマイクSHURE MV88で録ったデモがそのまま採用されています。創作中にふとひらめいた曲で今記録しないと、と思って急いでYAMAHA Reface CPを弾いたものなので、手のタッチの音が結構乗っています。かなり葛西さんに抑えてもらったとは思うんですが。

──そこがむしろ良い質感になっていて、すごく魅力的です。

青葉 良かったです。ちなみに、ボーカルも一緒に録っています。

──「aurora」は、L/Rのすみ分けがはっきりしたミックスになっているのが面白いです。

葛西 「aurora」はスタジオで録ったり、いろいろ試したんですけど、結局“最初の宅録デモの感じが良いな”という話になりました。市子ちゃんがアトリエで録ったマルチのパラデータが4chくらいあり、いろいろエフェクトがかかっている感じも良かったので、それをそのままどう生かそうかなと。ほかの曲と整合性の取れるようなミックスも試したんですけど、分かれているほうが曲の良さを感じることができました。デモの録音を生かした結果、こうなったという感じです。

青葉 私が葛西さんに送ったデータのパンの振りもそのまま使ってるんでしたっけ?

葛西 ほぼそのままだったような気がする。

青葉 そっか。すごく適当にパンを振っちゃったなって(笑)。

葛西 僕らエンジニアは丁寧に整えるけど、その曲が生まれた瞬間のザクッとした感じが楽想にすごくちょうど良いんだろうなと。デモの段階で全部出来上がってる印象だったので、奇麗にすると何かが抜け落ちるんです。少しノイズを切ったりとか、音を磨き上げるタイプのミックスをしています。

──デモを生かしている曲は、ほかにもあるのでしょうか?

青葉 「COLORATURA」の冒頭の声が重なってるところも宅録だったかな。

葛西 “とりあえず仮で貼っておこう”って言ったまま、最終的に尺を変えたり、いろいろしながら生き残りましたね。「pirsomnia」もそうかな?

梅林 コーラス・ワークのところはそうですね。市子ちゃんのアトリエで作業しました。

青葉 「pirsomnia」は、“ちょっと適当にボーカル作ってみるね”というふうに、歌というよりも楽器として声を当ててみたんですよね。『Luminescent Creatures』は発光生物という意味で、人間が歌を歌うのとは正反対という考えもあって。“生物が最初に発した信号がたまたま光だった”みたいなイメージを持って創作していたので、ちょっと無機質な感じで歌っていました。

──「pirsomnia」のエフェクティブな処理は、梅林さんによるものですよね。例えば、ピアノのスタッター的なサウンドはどのようにして作っているのでしょうか?

梅林 EVENTIDE Spaceだったかな。リバーブだけどディレイ的にも使えて、声にもかけています。

──「Cochlea」の高域のドローンのようなサウンドがとても良い音色です。

梅林 あれはABLETON LiveのGranulatorという、Max for Liveデバイスですね。

──鳴き声のような音は、クレジットに記載されているクジラの声ですか?

青葉 そうです。3年前、クジラに会うために奄美へ行ったときに、船の上からハイドロフォンを海に落として録音したものです。そのハイドロフォンのアウトをラジカセに突っ込んで、ラジカセからビャーって出ているところへiPhoneを向けて録ったので、かなりジャミジャミな音になっていて。それでもクジラの声がよく聴こえているのがすごい。実際は、もっと恐ろしいくらい滑らかな声だったんですけど、「Cochlea」に入れるにあたっては、良い解像度になったんじゃないかなと思います。

──完成したアルバムを聴いて、皆さんにとってはどんな作品になったと感じていますか?

梅林 大きなテーマとして『アダンの風』のころから変わっていないのは前提としてありつつ、その流れを受けた状態で、作っていたときのバイオリズムだったりとか、みんなの気持ちが音として形になっている。伝えたいことがちゃんと音楽に乗っかったアルバムだと感じています。

葛西 想像力をすごく刺激して、喚起させる作品になったんじゃないかなと思っています。こういう作品が、今の時代に生活の糧として日々聴いてもらえたら、すごくうれしいですね。

青葉 タイトルの通りなんですけど、かつて我々が微生物だった時代になぜ光ることを選択したのかっていうところに立ち返ってみて、それはなぜかというと、自分が1人だっていうことに気がついてしまったから、彼らは光る選択をしたんですよね。光ることによって、私はここにいますというメッセージを発信して、同じく探している人と出会えるように。これは大げさかもしれないですけど、この作品を通して、どんな生き物も肯定されるような世界になったら良いなという願いがあります。どんな生き物でも、人間にしても、かつてはみんな同じ発光生物だったということを思い出せたら。作り手としては、そのような願いや祈りみたいなものが込められたと思います。シンプルな声だけだったり、弾き語りだったり、かと思えば、すごく壮大なオーケストレーションだったり、そういうものが1つの場所にいられるっていうことが、今の人間たちに向けて何かメッセージになったら、ヒントになったらいいなという気持ちです。

Release

『Luminescent Creatures』
青葉市子

hermine

Musician:青葉市子(vo、g、k、他)、梅林太郎(p、k、syn、g)、梶谷裕子(vln)、銘苅麻野(vln)、須原杏(viola)、平山織絵(vc)、水谷浩章(contrabass)、多久潤一朗(fl)、朝川朋之(harp)、角銅真実(perc) 
Producer: 青葉市子、梅林太郎
Engineer:葛西敏彦、加瀬拓真
Studio:Place Kaki、ビクタースタジオ、青葉台スタジオ、プライベート

関連記事