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DJ IZOHが教えるチャープ・スクラッチの基本〜倍速ベイビーとチャープのドゥルチキ技|ターンテーブリストへの道

ターンテーブリストへの道 by DJ IZOH

「チャープ・スクラッチ」テクニック解説

オープンからスタートする基本ワザ

 こんにちは、DJ IZOHです。今回紹介するのは、チャープというスクラッチです。これもフォワード・スクラッチ、スタブ・スクラッチと並んでフェーダーを使う基礎のスクラッチとしてとても重要で、オールドスクール時代からとても多くのDJが使う技術となっています。

 レコード側の手は、スタブと同様、レコードを前後に押し引きするベイビー・スクラッチです。一方、クロスフェーダーの動きは、フォワードやスタブとは大きく違います。

 そもそもスクラッチにおけるフェーダーの動かしはじめは、クローズ・スタートとオープン・スタートの2つに大きく分けられます。フォワードとスタブはクロスフェーダーがクローズの状態からスタートするのに対し、チャープはオープンの状態からスタートします。オープン・スタートの1番基本となる技がチャープなのです。

 レコードを押し出すときに、フェーダーを親指でクローズへと動かし、レコードを引くときに人差し指でオープンへと戻します。これは、レコードとフェーダーの動きが逆ハの字を書くような状態です。クローズにすると音は出なくなりますが、このとき重要なのは、押しの音も引きの音も出ているということ。

 ❶チャープの基本スタンス 

①チャープ・スクラッチは、クロスフェーダーがオープン=音が出る状態からスタートする技。親指、人差し指以外の指はミキサーに置いてしまうのがお勧め

①チャープ・スクラッチは、クロスフェーダーがオープン=音が出る状態からスタートする技。親指、人差し指以外の指はミキサーに置いてしまうのがお勧め

 ❷押しながらクローズへ 

②レコードを押し出すときにフェーダーを親指でクローズ方向へ動かす。レコードの押しと引きの折り返し地点でちょうどクローズになるように調整しよう

②レコードを押し出すときにフェーダーを親指でクローズ方向へ動かす。レコードの押しと引きの折り返し地点でちょうどクローズになるように調整しよう

 ❸引きでオープンに戻す 

③レコードを引くときに、人差し指を使ってクロスフェーダーをオープンの方向へ戻す。押しの音、引きの音はいずれも聴かせるように意識しよう

③レコードを引くときに、人差し指を使ってクロスフェーダーをオープンの方向へ戻す。押しの音、引きの音はいずれも聴かせるように意識しよう

 ではクローズになって音が出なくなる瞬間はどのタイミングかというと、“押しと引きの折り返し点”になります。折り返しの音がカットされると、フェーダーを使わないベイビーとは違った鋭くエッジの効いた音になります。押しも引きも音が出るならベイビーで良いと思うかもしれませんが、折り返し点の音が出ないと、明らかに聴こえが変わります。動画で音の違いをよく聴いてみてください。

 動画でチェック 

クローズになるタイミングに注意

 チャープを行うために重要なのは、フェーダーをクローズ方向へと動かしはじめるタイミングです。初心者で多いのが、レコードの押しはじめのときにフェーダーがクローズへと早く当たってしまうことで、押しの音が短くなったり、全く出なくなってしまったりします。

 フェーダーの移動はレコードの押しのタイミングに奇麗に合わせ、親指は力まないようにしましょう。力むと大体フェーダーが早くクローズに当たってしまいます。なかなかできない人は、親指をフェーダーのつまみから離した位置で動かしはじめてみてください。そうするとフェーダーが動くタイミングが少し遅れるので、レコードの折り返し点でちょうどクローズになりやすくなります。

 練習はこれまでの連載で紹介したスクラッチと同様のBPMで、ベイビー・スクラッチやフォワード、スタブと同じ拍で試してください。チャープの倍速はかなり難易度が上がりますが、可能になれば聴こえも迫力があり、楽曲へのスクラッチでの参加やクラブ・プレイ、バトルにおいて確実に武器になるでしょう。

いざ挑戦!実践のヒント

倍速ベイビー&チャープのコンボ技

 チャープを使ったとても代表的なパターンを紹介します。ベイビー・スクラッチとチャープを交互に発動するコンビネーションになりますが、これを“ドゥルチキ”、海外ではJoe Cooley Scratch(ジョー・クーリー・スクラッチ)と呼んだりします。

 基本は、まず倍速(1/2拍で2往復)でベイビー、その後通常スピード(1/2拍で1往復)でチャープ、その組み合わせでドゥルチキ1回です。ベイビーの回数とチャープの回数を変化させることでいろいろなフレーズを作ることができますが、最初は倍速ベイビーを2回、チャープを1回でやるのが最も簡単で広く使われるパターンです。このパターンは1拍に対しドゥルチキ1回が収まり、1小節の中でピッタリ4回になるので、非常に使いやすいです。

 ❶倍速でベイビー・スクラッチ 

①ドゥルチキは倍速のベイビー・スクラッチと今回紹介したチャープ・スクラッチを組み合わせた技。まずは倍速(1/2拍で2往復)でベイビー・スクラッチをする

①ドゥルチキは倍速のベイビー・スクラッチと今回紹介したチャープ・スクラッチを組み合わせた技。まずは倍速(1/2拍で2往復)でベイビー・スクラッチをする

 ❷通常スピードでチャープ 

②続けて、通常スピード(1/2拍で1往復)でチャープ・スクラッチを行う。最初は①×2回+②×1回から始めて、慣れたら回数を変えて挑戦してみよう

②続けて、通常スピード(1/2拍で1往復)でチャープ・スクラッチを行う。最初は①×2回+②×1回から始めて、慣れたら回数を変えて挑戦してみよう

 動画でチェック 

回数を変えてタイミングを変化させる

 次によく使われるパターンは、倍速ベイビー1回+チャープ1回の組み合わせ。連続して行うと拍に対してタイミングがズレていく(このズレがはまるとカッコいい)ことになるので、難易度は少し高いです。最後にリリースするときも、ドゥルチキの回数によっては変則的なタイミングでレコードを離すことになるので慣れが必要です。

 リリース・タイミングが分かりやすくお勧めなのは、1小節につき4回行うパターンです(リリースまで含めて1小節に収まる)。これも動画でいろいろな組み合わせを載せているのでよく見て練習してみてください。

 チャープは基本のスクラッチの中では最も難易度が高いスキルですが、使用される頻度は非常に高く、フォワードやスタブと共に上級テクニックの合間にも高頻度で使われる大事なテクニックです。

 特にドゥルチキは、コンビネーション・スクラッチとしては初級者から上級者まで恐らく最も幅広く使われているパターンだと思います。それくらい重要で使いやすく、聴こえも良いということ。乗せられるBPMもとても幅広いので、ぜひとも修得しておきましょう。

 最終的に倍速ベイビーもすべてチャープにできたら、ターンテーブリスト的には中級者の仲間入りですね!

 今月のまとめ 

チャープ・スクラッチはオープンがスタート位置
ベイビーと組み合わせたドゥルチキ習得に挑戦!

 

 動画でチェック 

今回紹介したテクニックを、DJ IZOHの実践動画でチェック!

【DJ IZOH Profile】ヒップホップ・スタイルにこだわるターンテーブリスト。世界大会入賞歴多数。2012年世界最大のDJバトル『DMC World Final 2012』優勝。第28代世界チャンピオンに輝く。DJスクール講師、プロ・バスケット・チーム“群馬クレインサンダーズ”アリーナDJとしても活躍中。

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