ビート・ジャグリングの応用テクニック:リズムを複雑にする小技 by DJ IZOH

ターンテーブリストへの道 by DJ IZOH

「ビート・ジャグリングの応用」を解説

前回紹介のパターンに小技を加える

 今回もビート・ジャグリングのパターンを紹介します。前回解説したA/Bパターン(下図)にちょっとした小技を加えてより複雑なリズムを作り出す応用編になります。ぜひ挑戦してみてください。

 Aパターン 

Aパターン

 Bパターン 

Bパターン

Aパターンの応用編

 Aパターンでは、2拍目に右のターンテーブルでスネアを鳴らした半拍後に左のターンテーブルにつなぎます。その後、左でベイビー・スクラッチを入れて4拍目にスネアを鳴らしますが、4拍目のスネアの半拍後ろで、右タンテを最初のキックにつなぎ、先ほどスクラッチしたタイミングと同様にベイビー・スクラッチを入れると、スネアが6拍目に鳴ります

 ❶Aパターンの応用編 

4拍目の左ターンテーブルでスネアを鳴らすまではAパターンと同じ。その後、Aパターンでは1拍後ろで右のタンテのキックにつないでいたが、この応用編では半拍後ろで右のキックにつなぐ

4拍目の左ターンテーブルでスネアを鳴らすまではAパターンと同じ。その後、Aパターンでは1拍後ろで右のタンテのキックにつないでいたが、この応用編では半拍後ろで右のキックにつなぐ

 そして同じ要領で6拍目のスネアの半拍後ろで左の最初のキックにつなぎ、同じタイミングでスクラッチを入れ、8拍目にスネアを鳴らします。動画でチェックすると分かりますが、これで2小節のリズム・パターンになります。

 ビート・ジャグリングのリズムは1小節で1パターンという考え方が基本ですが、このように2小節で1パターンというのも玄人の間ではよく使われます。構成の幅が広がるので、この考え方は中級以上を目指す人にとってはとても大事です。

Bパターンの応用編

 Bパターンでは、1小節前の4拍目で右タンテのスネアにつなげば、そのままの状態で1拍目に右タンテのキックが鳴ります。

 その1拍目のキックが出るまでの間、左タンテは1拍目まで戻して待機するのですが、右の1拍目から“ドンドンタン”というリズムが鳴る際に、キックとキック、キックとスネアの間に左タンテで待機中のキックをフォワード・スクラッチで差し込んでみましょう。すると“ドンドンタン”だったリズムが“ドドドドタン”というリズムに変化します

 ❷Bパターンの応用編 

Bパターンで、2小節目の頭(5〜6拍目)に変化を付けた応用編。5〜6拍目に右タンテでキック→キック→スネアと続く部分の隙間で、左タンテのキックをフォワード・スクラッチで差し込んでみよう

Bパターンで、2小節目の頭(5〜6拍目)に変化を付けた応用編。5〜6拍目に右タンテでキック→キック→スネアと続く部分の隙間で、左タンテのキックをフォワード・スクラッチで差し込んでみよう

 つまり隙間をフォワードで埋めているわけです。キックとスネアの間だけ差し込めば“ドンドドタン”というリズムになり、差し込むドラムをキックではなくスネアに変えれば“ドンドタタン”となります。このようにドラムの隙間を埋めていく手法もリズムを変化させる上では重要なスキルで、中級者以上のターンテーブリストたちは巧みに使いこなし、オリジナルのビートを生み出しています。

 動画でチェック 

いざ挑戦!「ビート・ジャグリングの応用」実践のヒント

AパターンとBパターンの複合技

 また、AとBを複合させることもできます。最初はAパターンの応用を行いますが、先述の6拍目のスネアの後、左につないだ際はスクラッチを入れず、すぐに右タンテを最初のキックより前にあるスネアに戻してつなぎ、Bパターンにします。Aパターンから始まり、Bパターンで終わる、というコンボですね。これも動画をよく見てみてください。

 ❸A/Bパターンの融合 

AパターンとBパターンを融合させた技。Aパターンの6拍目のスネアの後に左タンテへつなぐところまではAパターンと同様だが、左のタンテではスクラッチを入れずBパターンへと移行させている

AパターンとBパターンを融合させた技。Aパターンの6拍目のスネアの後に左タンテへつなぐところまではAパターンと同様だが、左のタンテではスクラッチを入れずBパターンへと移行させている

メロディにも応用可能な定番パターン

 最後に、AやBパターンとは違うかなり昔から使われてきた定番のビート・ジャグリングを紹介します。このパターンで使うリズムは、キック1個とスネア1個が半拍の間隔で並ぶ“ドンタン”という音があればどんな曲でも可能です。ただし、キックとスネアが1/4拍で隣接している“ドタン”ではできません。

 まず右のキックをリリース、その半拍後に左のキックにつなぎ、スネアまで鳴らすと、“ドンドンタン”になります。

 その後、左スネアの1/4拍後に右のキックをベイビー・スクラッチ。リリースしてスネアまで鳴らしてから1/4拍後に左のキックにつなぎ、スネアまで鳴らすことで“ドンドンタドゥグドンタドンタン”というリズムになり、1小節のパターンになります

 ❹“ドンタン”で作るパターン 

キック1個とスネア1個が半拍の間隔で並ぶ“ドンタン”という音を使ったパターン。ドラムだけでなく、声やメロディでも応用可能なので、ぜひ身につけておこう

キック1個とスネア1個が半拍の間隔で並ぶ“ドンタン”という音を使ったパターン。ドラムだけでなく、声やメロディでも応用可能なので、ぜひ身につけておこう

 繰り返す場合は、2小節目のキックをリリースする前にベイビー・スクラッチを1回入れましょう。そうしないと、左につなぐタイミングが間に合わなくなってしまいます。

 このパターンはビート・ジャグリング初心者の方には少々難易度が高いですが、音2個だけならドラムはもちろん、声やメロディなどでも可能なので、使えると非常に便利です。上級ターンテーブリストたちもいろいろな現場で多用しています。動画をよく見て挑戦してみてください。

 少しずつ複雑になってきましたが、まだまだビート・ジャグリングとしては基本です。これらを習得するとビート・ジャグリングが本格的に楽しくなって、いろんなリズムを生み出してみたくなり、いつの間にかこのビート・ジャグリングという特殊技能に沼っているかもしれません。自分もその沼にハマり28年くらい経っています。次回はビート・ジャグリングで倍速を作る手法を紹介したいと思います。

 

 今月のまとめ 

小技を加えて複雑なリズムを生み出す
タイミングや音を変えいろんなリズムに挑戦

 

 動画でチェック 

今回紹介したテクニックを、DJ IZOHの実践動画でチェック!

【DJ IZOH Profile】ヒップホップ・スタイルにこだわるターンテーブリスト。世界大会入賞歴多数。2012年世界最大のDJバトル『DMC World Final 2012』優勝。第28代世界チャンピオンに輝く。DJスクール講師、プロ・バスケット・チーム“群馬クレインサンダーズ”アリーナDJとしても活躍中。

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