プロがあなたの楽曲にコメントやアドバイスをしてくれる、サンレコWeb会員限定企画『Send & Returnラボ』。一流のミュージシャンや音楽クリエイター/エンジニアが会員読者から送られた楽曲を聴き、具体的なコメントやアドバイスなどをお返しいたします。Vol.6では引き続きtofubeatsをゲストに迎え、あなたの楽曲にフィードバックをお戻しします!
今回の応募曲について
- アーティスト名:ccmai
- 楽曲タイトル:s size ai
- 補足コメント:似たようなシンセサイザーの音を同時にたくさん鳴らそうと思い製作した楽曲です。
- お悩み:今回の楽曲は、全体的に左右への広がりが足りないように感じ、ステレオイメージやパン振りなどが上手くできていないように感じています。また私は取捨選択が苦手なので、同時に鳴らしてしまっている音数が多すぎて一つのメロディなどに対する印象が薄れてしまっているのではと思っています。
- 試聴音源:下記をクリック↓
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※記事におけるアーティスト名や音源については、“非公開”でも対応可能です。
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【tofebeatsからの楽曲コメント】
曲に登場する音の“取捨選択”が課題
今回も楽曲をお送りいただいた皆様、ありがとうございました。今回はccmaiさんの「a size ai」にフィードバックさせていただきます。「a size ai」は、ドラムンベース的な楽曲の中でメロディがいろいろと展開し、ベースやキックもしっかり出ていて聴きどころのある楽曲だと思いました。後半の303(Roland TB-303)っぽいシンセが入るところもうれしいですね。
これまでのフィードバックでも触れていたローの量感の抜き差しなどもあって、聴いていて楽しい楽曲でした! さて、ccmaiさんからは以下のようなコメントと共に楽曲をお送りいただいておりますので、その辺りをフィードバックしていきましょう。
“今回の楽曲は、全体的に左右への広がりが足りないように感じ、ステレオイメージやパン振りなどが上手くできていないように感じています。また、私は取捨選択が苦手なので、同時に鳴らしてしまっている音数が多すぎて一つのメロディなどに対する印象が薄れてしまっているのではと思っています。”
ということなのですが、まず左右の広がりに関してはそこまで自分としては足りていないとは思いませんでした。むしろ、パートによってはガッツリとパンニングされているのが印象的。ローもしっかりセンターから出ている感じもしますし、おそらくどちらかというと後半に書いていらっしゃる音の取捨選択や、音数が増えてきてからの整理、というところにヒントがあるのかもしれません。
メロディを際立たせるミックス術
まず、こういった問題が起きたときに大前提としてステレオイメージャー的なプラグインやパン振りは、多用し過ぎるとミックスがガチャガチャする要因になってしまうことが多いです。DTMで楽曲を作っている場合は位相への対処も基本的にはそこまで必要ありませんので、まずは音量やEQ/コンプといった基本的なところでバランスを取るようにしましょう。そうして縦の列をそろえてから横空間のことを考えていく方が、大きな失敗はしにくいかと思います。
今回ccmaiさんは“メロディに対する印象が薄れてしまっているのでは……”と書いていらっしゃるので、やはりメロディ部分を前に出すことを意識することが解決の糸口になるでしょう。確かに中域辺りは同帯域のメロディがたくさん入っていて、楽曲の主題としてのメロディがどれなのか今一つつかみにくくなっているような気がしました。
個人的には1:49から鳴っている高めの細かいリズムシンセなど、どちらかというと主題のメロではないものがアタックの強い音色かつ音量が大きく、一方で最初から登場している主メロっぽいものはアタックが弱い音色であったり、パートによってはパンが振られていると思います。自分なら主メロのような部分をセンターに定位させ、リズムシンセっぽいものをもう少し奥まった位置や左右に振って配置するかな、と思いました。
また、根本的にリズムに対して全体がウェットな印象を少し受けまして、シンセのプリセットに入っている空間系エフェクトなどがこの感じに作用している可能性もあるなと思いました。リバーブが強かったりリリースが長かったりしますと遠く感じるので、センド&リターンでまとめていらっしゃるならそれらの量を変えてみたり、シンセの内蔵エフェクトがオンになっているならそれのかかり具合を調整してみるのも、もしかするとスッキリとしたミックスへの近道かもしれません。
お送りいただいた機材リストを見る限りヘッドホンで制作されていると思うのですが、ヘッドホンだと雰囲気をドライ目に感じがちですので、小さくてもスピーカーなどでチェックすることも良いのかなと感じました。
というわけで3回目はこのようなフィードバックとさせていただきました。アイデアに富んでいて良い楽曲だと感じましたので、ぜひミックスの方も突き詰めていただいてより魅力的な楽曲にしていただければと思います!