パソコン音楽クラブが解説〜「曲が薄っぺらい?」を解消する方法

pasokon ongaku club

 プロがあなたの楽曲にコメントやアドバイスをしてくれる、サンレコWeb会員限定企画『Send & Returnラボ』。一流のミュージシャンや音楽クリエイター/エンジニアが会員読者から送られた楽曲を聴き、具体的なコメントやアドバイスなどをお返しいたします。ゲストにはパソコン音楽クラブを迎え、あなたの楽曲にフィードバックをお戻しします!

今回の応募曲について

  • アーティスト名&曲名:Super Wunza Boyer「警察呼ぶな!」
  • 楽曲のイメージ:ジャンルは詳しく分からないんですけど、シリアスでかっこいい感じの曲が作りたいです。東方Projectというゲームが小学生の頃から好きで、その辺のゲームミュージックには影響を受けているかもしれません。
  • お悩み:Apple GarageBandで4年くらい作曲して、1ヶ月ほど前にLogic Proを購入してミックスなどを勉強しはじめているところです。スッキリした硬い感じの音が好きではあるんですが、もう少し厚みというか迫力が欲しいと思っています。
  • 試聴音源:下記をクリック↓

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※記事におけるアーティスト名や音源については、“非公開”でも対応可能です。

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メインメロディを邪魔しないアルペジオを入れる

 パソコン音楽クラブから西山が担当させてもらいます『Send & Returnラボ』。
今回はSuper Wunza Boyerさんの「警察呼ぶな!」という楽曲にコメントさせていただきました。ご応募ありがとうございます! 何があったのか非常に気になるタイトルのこちらの楽曲ですが、映像的というか情景が頭に浮かぶような奥行きがあって楽しいです。東方Projectをはじめとするゲーム音楽に影響を受けているとのことで、それもよく伝わってきました!

 さて、今回は「スッキリした硬い感じの音が好きではあるんですが、もう少し厚みというか迫力が欲しいと思っています」というご相談がありましたので、楽曲の厚みに関して注目して聴いていきたいと思います。まず登場するパートは、トップラインとコード感を担当するピアノ、ビートとしてハイハットとキック、808(ROLAND TR-808)っぽいサブベース、その隙間を埋めるパッドや細かいFX、パーカッションという具合でしょうか。

 一般的には低域が弱くて迫力が出ない、といったパターンも多いイメージですが、今回の楽曲はシンプルめな構成ながら、太いベースやアタックの効いたキックもしっかり前に出ていて、低音はパワフルな印象です。
ということで低域以外で頭に浮かぶアプローチを幾つかご紹介したいと思います。

 まず、単純な方法から。楽曲のキモとなるピアノのメロディですが、全体を通してピアノのみでこのトップラインを担当しているため、少し変化や奥行きが欲しいと感じました。
例えば、同じメロディを別の楽器とユニゾンさせるのは簡単な方法ですが、曲をごちゃごちゃさせることなく楽曲に厚みをつけるのにとても効果的です。シンセ、ストリングス、ギター、なんでも合いそうだと思いました。イメージしている世界観に合わせて選んでみると良いと思います。

 また別の方法として、主旋律を補完するようなメロディ、シーケンスを入れてあげるのも良いかもしれません。分かりやすく音程を鳴らしている楽器は基本的にピアノだけですから、その分隙間が空いて寂しく聴こえてしまいます。
しっかりカウンターメロディを作るのも良いですが、今回の楽曲の場合はコードを分解したアルペジオを差し込むのも相性が良さそうです。メインメロディを邪魔しないようにうまくアレンジしてアルペジオを入れてあげると主旋律と絡みあってとても奇麗に厚みを出してくれます。東方Projectはコードアルペジオを多用していて、Super Wunza Boyerさんの好みにも合うかもしれませんね。

ピアノロールにてMIDIでアルペジオフレーズを入力したところ

 また、単純に高速で音程が上下するようなフレーズを挿入するだけでもゲーム音楽的な印象を出しながら展開を装飾できるので、これもいいかもしれません。どのDAWにも基本的にアルペジエイターと呼ばれるツールが用意されていると思います。こういったツールをうまく使うと、紹介したようなシーケンスが手軽に作れて便利です。

MIDIが上下するフレーズを入力したところ

お化粧としてリバーブを各パートに程よくかける

 最後にリバーブエフェクトを使ってあげる方法をご紹介します。
打ち込み音楽をやっているとリバーブが全然かかっていない音源を扱うことが多いですが、残響のない音は非常に地味に聴こえがちです。お化粧としてリバーブを各パートに程よくかけてみてください。特にピアノに関してはリバーブの量でかなり印象が変わると思います。リバーブによって追加された倍音で音の厚みが増しますし、こういった情景を感じさせる楽曲の場合は、立ち上がるイメージがより印象的になると思います
 今回のピアノのような細かいフレーズの場合はあまり深いリバーブをかけると音の立ち上がりやキレを損ねてしまうので、ディケイの短めな華やかな種類が無難かなと思いますが、リバーブの種類やパラメータによって楽曲の印象にも変化が出てくるので自分でいろいろ試してみると楽しいです。

 ユニゾン、アルペジオ、リバーブとパッと思いつく方法を並べてみましたがいかがだったでしょうか? いずれにせよ、どの方法も楽曲の隙間をいかに上手に埋めるかということだと思います。迫力を出そうと思って、ただ闇雲にパートを増やすと今度は音の明瞭さが失われて結局ぼんやりとしてきます
 ごちゃごちゃさせずに音の厚みを出すためには試行錯誤や練習も必要だと思いますが、今回ご紹介したような方法で自分の好みの音楽に近いような方法があればそれをどんどん広げていくと理想のイメージに近づくと思いますので、いろいろ試してみてください。今回はここまでとさせていただきます! 作曲からエフェクトまで一人で触れるのがDTMのおもしろいところ。ぜひいろいろ試してみて、DTMライフを楽しんでください

今回のゲストアドバイザー:パソコン音楽クラブ(西山:写真右手)

【Profile】2015年結成のDTMユニット。 メンバーは⼤阪出⾝の柴⽥碧と⻄⼭真登。アナログシンセサイザーや音源モジュールのサウンドをベースにエレクトロニックミュージックを制作している。他アーティスト作品への参加やリミックス制作も多数⼿がけており、CMソング、劇伴制作、アニメ「ポケットモンスター」のEDテーマ制作など数多くの作品を担当。2024年に5枚目となるアルバム『Love Flutter』をリリースした。
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