プロがあなたの楽曲にコメントやアドバイスをしてくれる、サンレコWeb会員限定企画『Send & Returnラボ』。一流のミュージシャンや音楽クリエイター/エンジニアが会員読者から送られた楽曲を聴き、具体的なコメントやアドバイスなどをお返しいたします。ゲストにはパソコン音楽クラブを迎え、あなたの楽曲にフィードバックをお戻しします!
今回の応募曲について
- アーティスト名&曲名:未リョウ(Caicos...)「Q.E.D」
- 楽曲のイメージ:2024年にCaicos...というユニットをボーカルの方と結成し、先日EPをリリースしたのですが、こちらのQ.E.D.という曲はその中の1曲です。勢いは出しつつ、ユニットのテーマである「どこか懐かしく、少し新しい、わずかに妙」を表現した一曲になっています。
- お悩み:制作担当である私はもともと音楽系の学校出身ですが、在学中は演奏や理論を中心に学んでいたため、DTMを本格的に学び始めた(独学)のは2024年の夏ごろ。そして、アレンジは推測や感覚を頼りに行っております。 そのため、グルーヴ感や迫力が足りなかったりアレンジに面白みが欠けていたりするのが現在の悩み。 今はそれを補うために音数が増えて、足し算ばかりの音楽になってしまうのをどうにか解消したいです。 自分の性格上、感覚ばかりを頼りにしてしまうのがどうしても苦手なため、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
- 試聴音源:下記をクリック↓
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※記事におけるアーティスト名や音源については、“非公開”でも対応可能です。
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倍音や残響が生む「存在感」の重要性
パソコン音楽クラブから西山が担当させてもらいます『Send&Returnラボ』。今回は未リョウ(Caicos...)さんの「Q.E.D」という楽曲を選ばせていただきました。「どこか懐かしく、少し新しい、わずかに妙」をテーマにされているユニットとのこと。応募していただきありがとうございます!
先に言っておきますが、アドバイスできるようなことは特にないのでは?と悩むくらい素晴らしい曲でした。理論的な編曲によりさまざまな音が気持ちよく絡み合っており、ユニットのテーマなど表現したいことも伝わるクオリティの高い楽曲です。正直、コメントするのも恐縮なのですが、素敵な曲を紹介するという意味も込めて選ばせていただきました。
未リョウさんはフィーリングでアレンジしていることに不安を持たれているようですが、この問題の原因がそもそもアレンジにあるのか、という角度から考えてみてもいい気がします。
DTMの場合、楽器隊が基本的にプラグイン/ソフト音源になる場合が多いかと思います。例えば、打ち込みドラムは音源にもよりますが、生のドラムに対して倍音や残響の豊かさに欠ける場合が多いです。またその他の楽器も音源によっては同じような音色でも音が細く弱いものがあります。もし倍音が乏しく、いわゆる「細い音」を使うと、同じアレンジでも各パートの存在感が小さく、音が足りないように聴こえる場合があります。そうなると不要な音数が増えてしまいがちです。
「太い音」だけが正解ではない! 音作りの多様性
一方で各音源の存在感が大きいと、少ない音数でも十分に迫力が出せます。より存在感のある音源を選択してみる、あるいはサチュレーションやリバーブといったプラグインで音を調整する、実際に生の楽器を録音するなど、音選び・音作りの手法も無数にありますので、ぜひいろいろ試してみてください。
一応補足しておくと、プラグイン/ソフト音源より生音が優れているとか、音は太ければ太いほどいいとかいうことではありません。かつては嫌われた「打ち込み臭さ」を個性としてオリジナリティあふれる音楽を作っている方もたくさんいらっしゃるからです。そもそも音数が増えてしまうという悩みも、音数が非常に多いことがかっこいいと思えるならそれで良く、その場合むしろ一つ一つの音が太すぎないほうが使いやすい場合もあります。あくまで、その音が「自分の目指したいスタイルにフィットしているかどうか」で考えればいいでしょう。未リョウさんは高いアレンジ能力をお持ちなので、音作りに関しても一層興味を持たれるとさらにDTMが楽しくなると思います。
DTMにおいては、どんなジャンルでも作曲・編曲から音作り・ミックスまでのフローが地続きですし、それはコンピューターミュージックだからこその強みだと思います。この楽曲のミックスは外部のエンジニアの方が担当されているようですので、一人で完結する制作よりは分業的かと思いますが、ある程度音作りやミックスの知識も理解したうえで制作に臨むとイメージを形にしやすいでしょう。また、エンジニアさんに相談しながら進めるのも面白いかもしれません。というわけで今回はここまでとさせていただきます! 引き続き、ご応募お待ちしております。