第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。Nagie氏の今月のセレクトは、セガ・ボデガ『Romeo』、V.A.『Artificial Intelligence Vol. I ~ VVAA』です。
創造性にあふれるボーカルのエフェクト処理
アイルランド出身のセガ・ボデガが発表した2作目。ボーカルのエフェクト処理が気に入った。アルバムを通してとても多彩で、創造性にあふれている。「Effeminacy」は言葉の意味が分からないほど加工された歌のループから、ソフィーのように女声化した歌声が絡み、ところどころフォルマントが変わり面白い。「All Of Your Friends Think I’m Too Young For You」は、フィルター・モジュレーションがかった、唇をブルブル震わせたようなエフェクトが印象的。「I Need Nothing From You」はボン・イヴェールでおなじみのピッチ・シフトを多用したボーカル・ハモ祭りだ。そしてシャルロット・ゲンズブールや、なんとアルカをフィーチャーし、それぞれの民族的な色を付けている。欲を言えば、アルカと共作にしてもっとサウンドをはちゃめちゃにしてほしかったかも。
ベースの扱いが進化したアシッド・ハウス
スペインのアーティフィシャル・インテリジェンスというレーベルが3月に発売するコンピレーションをBandcampで発見。Curiosというアーティストの「Vulnet」が先行曲として公開中だ。ROLAND TB-303サウンドを原点としたビヨビヨなベース・ミュージックが基本の進化したアシッド・ハウスという印象。冒頭は若干エイフェックス・ツイン風、しかしリズムに絡むと、あら、意外とポップ? アシッドなフレーズを混ぜつつも、音楽的なフレーズがとても新鮮に聴こえる。しかもベースのさらに下でサブベースがルートを鳴らしていて、もうアシッド・ベースはベースではない扱いなのだ。
Nagie
【Profile】ANANT-GARDE EYES、aikamachi+nagie、CM、アニメ、劇伴、映像音楽中心に活動。Vocaloidライブラリー開発も行う