音楽制作に挑戦したい18歳のRIKO(写真右)。でも分からないことがたくさん……。アーティストであり、音楽プロデューサーとしても活動するJUVENILE先生(写真左)に教えてもらいましょう! 目指せDTMマスター! 今回はモニターヘッドホンの選び方について学びます。
- Text : Yuki Komukai Photo:Chika Suzuki
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Bluetoothではなく有線のものを選ぶ
なぜヘッドホンが必要かというと、レコーディングするときに音を流しながら録ったら、マイクにその音が入っちゃうから。できればスピーカーもほしいけど、どっちかを買うならヘッドホンだね。
ヘッドホンは普段から使っています!
それってケーブルがあるもの?Bluetooth?
Bluetoothです!
Bluetoothは便利でいいんだけど、一つ落とし穴があって、それが“遅延”なんだよね。
あ!確かに動画とかを見るときに気になります。
この遅延が、レコーディングする場合に致命傷になるんだよね。だからBluetoothじゃない方がいい。
パソコンにBluetoothでヘッドホンをつなげて録音してみたことがあったんですけど、録音したものを聴いてみたら、なんか遅れている感じがありました。
そうそう。だから有線がいいんだよね。その遅れを詰める方法もあるけど、そんなことをするよりはるかに早いから。
なるほど!
そして、いい音で録れたか、あんまりだったかを判断するのもヘッドホンだから、ちゃんとしたものを使った方がいい。でも難しいよね、機材って全部が全部そうだから(笑)。
JUVENILEさんのスタジオで録音した曲を家に持ち帰って、自分が普段音楽を聴くときに使うヘッドホンで聴くと、全然違うように感じます。自分のヘッドホンだといつも通り普通に音楽を聴いている感覚なんですけど、こういうところで聴くとなんか……“周りに音がいる”って感じがする。
距離感とかが分かりやすい?
そうです!距離感が分かります。
実際、楽曲の中で距離感ってないようでいてあって。レコーディングするときに、マイクの近くで歌うのと遠くで歌うのでも結構違うんだけど、いいヘッドホンじゃないとその違いが分かりにくいんだよね。
レコーディングには“密閉型”
ヘッドホンって2種類あって、横の部分が開いているものと、閉まっているものがあるんだよ。
????
何言ってるの?って感じだよね(笑)。閉まっているものは“密閉型”と言って、ハウジングの表面がつるっとしていて何もないんだけど、開いているものは“開放型”って言って、穴が開いていたり網状になっていたりするんだよね。
あー!ほんとだ!
音の傾向としては、密閉型は音が近く聴こえてディテールが分かりやすい。開放型は音が少し離れる感じで広がって聴こえるかな。スピーカーって前から音が出てきて部屋全体で鳴るけど、イヤホンやヘッドホンは耳の中に直接入れているから、音が近いんだよね。そういう意味では開放型の方がスピーカーに似ていて、空気感や距離感は分かりやすい。
へー!
だけど開放型には弱点があって、音がすごく漏れるんだよね。だからレコーディングするときに使うと、ヘッドホンから漏れた音がめっちゃマイクに入っちゃう。だから、レコーディングするなら密閉型がいい。長時間曲を作るときは、開放型の方が疲れにくいんだけどね。でもどっちかだけなら、まずはレコーディングにも曲作りにも使える密閉型の方がいいと思う。
聴き比べしてみたいです!
そうだね、今聴き比べてみようか!この赤い線が入っているヘッドホンが、どこのスタジオにも置いてある密閉型ヘッドホンのSONY MDR-CD900ST、通称900STってやつ。で、こっちが同じSONYで背面開放型のMDR-MV1ね。
わー!違う!
これがULTRASONE Signature MASTER。密閉型の中でも結構良いやつですね。また違うでしょ。
違いますね!
で、これがPHONON SMB-01L。密閉型と開放型の中間にあたるセミオープン型で、イヤーパッドが分厚い。
あーーー違う!ULTRASONEの方が音がずっしりしてる。
密閉型の方が音が近いっていうのが分かるでしょ。ちなみに開放型は、試しに鳴らしてみると分かるけど、かなり音が漏れちゃう。電車だったらあり得ないくらい。だからレコーディングでは使えないんだよね。ちなみにどれが好きでした?
これ!
ULTRASONE Signature MASTER!お目が高いですね!13万円くらいです。
わ!いきなりは買えないですね……(笑)。
そうだよね〜。俺は家ではAudio-TechnicaのATH-M50xを使ってるよ。
私が使っているのは、それのBluetoothバージョンです!
そうなんだ!じゃあこれいいと思う。音の傾向も大体一緒だと思うし。俺はDJのときも使っています。
PHONON SMB-01L
ULTRASONE Signature MASTER
SONY MDR-CD900ST
“モニターヘッドホン”を選ぶ
あと注意しないといけないのは、ここまで見てきたヘッドホンのように“モニターヘッドホン”って書いてあるやつを選ぶことですね。
モニターヘッドホンと普通のヘッドホンの違いは?
まず、“モニターする”ってどういうことかというと、その音がどんな音なのかを理解することなんだよね。リスニング向けのイヤホンやヘッドホンって、よくパッケージに“重低音がすごい”みたいな文言が書いてあったりするじゃん。それがだめなのよ。俺たちは、ヘッドホンに勝手にそういうことしてほしくないんだよね。ヘッドホンで音が変わっちゃったら、その音が本当はどういう音なのかが分かんないじゃん。そのヘッドホンでいい感じに聴こえても、別のヘッドホンで聴いたらスカスカっていうようなことが起きちゃう。
なるほど〜。
だから出ている音がそのままフラットに鳴ってほしい。これを追求しているタイプのヘッドホンのことをモニターヘッドホンっていうんだよね。ただ、モニターヘッドホンはどれもフラットをうたっているけど、聴き比べると結構違うじゃん。だから厳密にはフラットではないんだよね(笑)。
そうなんですね。確かに結構違いました。
そしてもちろん歌いやすいかどうかも選ぶ基準の一つ。例えばローからハイまで音の情報量が多いヘッドホンだと、曲作りには向いていても自分の声が埋もれるように感じてしまって歌いにくいかもしれない。それよりは、自分の声が聴きやすいものを選んだ方がいいかも。かといって歌ばっかり聴くわけじゃないだろうし、モニターヘッドホンにもそれぞれの用途に向いているものがいろいろあるんだよね。最初の1個目がどれがいいかっていったら、900STとかATH-M50xとかがおすすめかも。あんまり高価なものだとオーディオインターフェースも良くないとポテンシャルを発揮しきれないっていうのもあるから、バランスを見ながら選ぶといいと思う。
次週はいったん最終回。MIDIキーボードの選び方について学びます!
JUVENILE(写真左)
独自のCity musicを発信する音楽プロデューサー/アーティスト/トークボックスプレイヤー。RADIO FISH「PERFECT HUMAN」の作編曲をはじめ、手がけた楽曲のYouTube総再生数は一億回を越える。2020年より“愛”をテーマにアルバム『INTERWEAVE』プロジェクトを始動。2023年11月29日に日中韓のアーティストをフィーチャリングした第3弾『INTERWEAVE 03』を配信。トークボックスプレイヤーとしても『INTERMISSION』をリリース、精力的に活動している。映画『バックトゥザフューチャー』をこよなく愛す。
Official Site:https://juvenile-tokyo.com/ X:https://x.com/juveniletalkbox
RIKO(写真右)
沖縄県出身。2006年9月29日生まれの18歳。女優/ホリプロ発ガールズユニットHUNNY BEEのメンバー。特技はダンス、ギター、三線、ラップ。音楽制作を勉強中!
Official Site:https://www.horipro.co.jp/riko/
JUVENILE×RIKO(HUNNY BEE)による3部作プロジェクトが進行中!
『Blue Hour』JUVENILE feat.RIKO(HPI Records)
作詞:児玉雨子 作編曲:JUVENILE
これからの一歩を踏み出そうとする人の心象をとらえたナンバー!JUVENILEが生み出すの爽快なビートは負けずに歩いて行けるような勇気を聴き手に与えてくれる。RIKOの儚くも美しい等身大の女性像を美しく描き、自信に満ちた強さが表現されている。
『Vintage Record.feat.RIKO』JUVENILE feat.RIKO(HPI Records)
作詞:RYUICHI 作編曲:JUVENILE
JUVENILEのアルバム『INTERWEAVE 03』に収録されている韓国人アーティストCIKI曲のリバイバルナンバーが2作目に登場!RIKOがCIKIの世界観とはまた違ったムードを醸しだし、新しい物語へと変貌を遂げた作品。
\10月30日(水)に3作目がリリース!/
『Whisper』JUVENILE feat.RIKO(HPI Records)
作詞:児玉雨子/RIKO 作編曲:JUVENILE/RIKO
トリを飾るのは、夜をテーマとしたアップテンポナンバー!!初挑戦となるRIKOのラップも聴き所。爽快なビートに乗せて歩みを進めネクストステップを刻んだ今作は、JUVENILE、RIKO、作家の児玉雨子の3名が交わる集大成。