自分の声が遅れて聴こえるのはなぜ? ダイレクトモニターとは? 〜RIKO & JUVENILE先生と学ぼう!はじめての音楽制作

JUVENILE&RIKO

音楽制作初心者のRIKOが、アーティスト/音楽プロデューサーのJUVENILE先生から音楽の作り方を学ぶ『RIKO & JUVENILE先生と学ぼう!はじめての音楽制作』の後編。 なんと今回がいったん最終回です! オーディオインターフェースでRIKOのラップを録音します。

前回はこちら

前編では、ゼロから機材をそろえるポイントを順に紹介しています

 

オーディオインターフェースを使ってラップを録音しよう!

前回でオケが完成しましたね。ここに何かラップしてみましょうか?
 
はい!

▲前回オケが完成した

とりあえず今日は、「Whisper」のラップを録音してみるというのはどうかな。

▲『Whisper』JUVENILE feat.RIKO(HPI Records)。1:47〜RIKOが軽快なラップを披露している

 
やってみます!
では、オーディオインターフェースの接続からRIKOさんにやってもらいましょう! 私は横でニヤニヤしています(笑)。流れはこんな感じです
 
オーディオインターフェースをパソコンに接続
②DAW上(今回はCubase)に、ラップを録るための“オーディオトラック”を作成
試しに録って、音量バランスなどを調整
④本番
 
頑張ります! パソコンでCubaseを開いたまま、オーディオインターフェースをつないでも大丈夫ですか?
大丈夫です。一応現状のプロジェクトデータを保存しておきますね。
 
なんか緊張する......笑(パソコンにオーディオインターフェースを接続するRIKO)
 
笑笑。ドライバーはすでにインストールしてあるから、今回はつなぐだけですぐに使えますね。

ドライバーについてはこちらの記事をチェック!

※オーディオインターフェースを使用するには、パソコンにドライバーをインストールする必要があります(ドライバー不要の製品もあり)

続いて、ラップを録音するための“オーディオトラック”を作りましょう。でもその前に、オケのループが8小節分しかないので、これを増やして、ラップを長く入れても大丈夫なようにしたいですね。
はい!
これまで作ってきたキック、クラップ、ハイハット......全部のトラックをそれぞれコピー&ペーストしていくのって、ちょっと大変じゃないですか。なので、フォルダーにまとめてしまいましょう。後はこれを複製するだけなので簡単です。

▲ビートの各パートをフォルダートラックにまとめて、複製する様子(動画)。まとめたいトラックをすべて選択して右クリック→“選択したトラックを新規フォルダーに移動”をクリック→フォルダーの名前を適当なものに変更→作成したフォルダーを複製
すごい! 後はラップを入れるためのオーディオトラックを追加するだけですね。
 
そうですね。モノラルトラックでOKです。

モノラルとステレオの違いについてはこちらで解説しています

そしてオーディオトラックを作るときの一番の注意点は、オーディオインターフェースでマイクを接続した場所と、DAW上に作成したオーディオトラックの入力を一致させること。今回はマイクを“INPUT1”に接続しているから、オーディオトラックも入力を“INPUT1”に設定する必要があります。

ur12

今回はオーディオインターフェースUR12のINPUT1にマイクを接続したので、Cubase上に作成したオーディオトラックの“オーディオ入力”も、INPUT1を指定する必要がある(INPUT2を指定すると、INPUT1に接続されているマイクの音声を録音することができない)

Cubaseの画面

Cubaseでトラックを追加する際に表示されるダイアログ。赤枠の“オーディオ入力”で、UR12 Input 1を指定する

“ダイレクトモニター”すれば、自分の声が遅れない

それでは、ちゃんと接続できているか確認しましょう。まずはヘッドホンをオーディオインターフェースに挿して、オケが聴こえるか確認してみてください。
 
 
オケの音、聴こえてます! ちょっとうるさいかも......音量はどこで小さくするんですか?
 
全体の音量は、オーディオインターフェースのOUTPUTノブですね。それでは、ちゃんと録れるかどうかも試してみましょう。
 
「あーあーあー」(Cubaseの録音ボタンを押して、作成したオーディオトラックにきちんと録れているかをチェック中)

RIKO

ばっちり録れていますね! 今って、ヘッドホンから自分の声聴こえてる?
 
 
聴こえています!
 
今聴こえているのは、オーディオインターフェースからヘッドホンにそのまま返ってきている音声です。なぜなら、この“ダイレクトモニター”っていうスイッチがオンになっているから。

UR12

赤枠がダイレクトモニター(DIRECT MONITOR)のスイッチ

ダイレクトモニターをオンにしている状態の信号の流れ

ダイレクトモニターをオンにしている状態の信号の流れ。マイクに入った音声はオーディオインターフェースに入力され、パソコンまで届くことなくヘッドホンに直接返ってくる
 
試しにダイレクトモニターをオフにしてみて。
 
 
自分の声が聴こえなくなりました!
 
この状態で、DAW側の“モニタリングスイッチ”を押してみましょう。そうすると、マイクが拾った自分の声がオーディオインターフェースからパソコンに入って、またパソコンからオーディオインターフェースに返ってくる状態になります。聴いてみて。

Cubaseの画面

Cubaseでは、オレンジ色に点灯しているスピーカーのマークが、モニタリングスイッチ(オレンジの状態がオンで、オフにするとグレーになる)

モニタリング中の信号の流れ

DAW側でモニタリングする際の信号の流れ。マイクに入った音声は、オーディオインターフェースからパソコンに入り、そこから再びオーディオインターフェースに戻り、ヘッドホンに返ってくる
 
聴こえます! でも、ほんのちょっとだけ声が遅れている気がする……?
 
そう、これがレイテンシーです。アナログの声がオーディオインターフェースの中でデジタルデータに変換されてパソコンに送られ、それがまたオーディオインターフェースに戻ってきて、またアナログの声になってヘッドホンに返ってくるから、“ダイレクトモニタリング”に比べて、すごく遠回りしているんだよね。どうしてもその“時差”が生まれちゃうんです。
なるほど〜。
 
ダイレクトモニタリング
モニタリング
左の図がダイレクトモニタリングで、右の図がDAWでのモニタリング。右の図の方が経路が長く、自分の声がヘッドホンに戻ってくるまでに時間がかかることが分かる
オーディオインターフェースの設定を見ると、今は音声を入力するときに15ms(0.015秒)、戻ってくるときに18ms(0.018秒)遅れているらしい。トータルで0.3秒くらいなんだけど、これが歌うときに致命的な差になったりするんだよね。
 
そうですね。少し歌いにくい感じがするかもしれません。
 
この遅れを詰める方法もあります。“バッファサイズ”です。
 
バッファ......?
 
YouTubeの動画を見るとき、画面の下のタイムラインのバーで、再生されている地点の先の方にちょっとグレーになっている部分があるじゃん。あれがバッファ。データを先読みしている部分のことですね。
 
分かります!
 

YouTubeの画面

YouTubeの再生画面。左下のが再生されている地点で、その右側に伸びているグレーの部分がバッファ
“バッファが長い=長く先読みしている”ということだから、その分遅れるんだよね。これをめっちゃ短くすればレイテンシーが短くなるんだけど、その分負荷が大きくなるから、トラック数が増えたときに音がブツブツ切れちゃうことがあります(Cubaseの場合は、スタジオ設定>コントロールパネルから調整可能)。そのあんばいを調整しないといけない。でもダイレクトモニターをオンにしておけば、この難しいレイテンシー問題を気にせずに済みます。
なるほど〜!!
 
JUVENILE&RIKO
 
でも、例えばリバーブをかけて、その音を聴きながら録音したいと思いませんか?
 
たしかに!
 
でも、ダイレクトモニタリングの状態だと、リバーブをかけた音を聴くことはできませんよね。なぜならこのオーディオインターフェースの中にはリバーブが入っていないから。
 
そうですよね。
 
リバーブをかけた音をモニターしたければ、DAWの方でトラックにリバーブをかけて、それを聴く必要があります。つまり、パソコンからの音声をモニターしないといけない。
 
でも遅延が......
 
だから、ダイレクトモニターの音声と、パソコンから戻ってくる音声の両方を聴くっていうのもありなんです。ダイレクトモニターで実音を聴きながら、DAWでリバーブがかかった音も聴くっていうことですね。両者の音量バランスを、ノブひとつで調整できるオーディオインターフェースもあります。ちなみにリバーブは、録音した後で外すこともできます。
 
分かりました!

ひずまずに録音できて、しっかりモニターもできる音量を設定する

じゃあとりあえず録ってみましょうか。INPUTのゲイン(マイクのボリュームのこと)がちょっと大きすぎるかな。音が割れてひずんじゃうから、下げましょう。これだと......聴こえる?
 
「あーあーあー」……あんまり聴こえないです。
 
そしたらOUTPUTを上げよう……これでどう?
 
「あー」……聴こえます!
 
そうすると、オケの音量も一緒に上がっちゃっているから、今度はオケが大きすぎる可能性があるね。DAWの方で、オケのトラックのボリュームを下げておこう。聴いてみて。
 
声とのバランス、大丈夫そうです。
 
声、ちょっとひずんでる? そんなことない?
 
 
ちょっとひずんでいるかも。
 
ひずまない状態で録りたいので、INPUTのゲインをもう少し下げましょうか。波形がこれくらいの高さで録れてるのがいいと思います。こうやって音量のバランスを調整する必要があるんですね。

じゃあクリック(メトロノーム)をオンにして、本チャンを録っていきましょうか! 
 
はい!(Cubaseの録音ボタンを押して歌い始める)あ!あれ...? ずれちゃいました。
 
一旦止めましょう。これ、クリックのプリカウントの設定(録音を開始する前にカウントを入れてくれる機能)がオンになってるね。今はラップを入れる2小節前から録音ボタンを押しているから不要です。外してもう一度やりましょう。
 
はい!

JUVENILE&RIKO

ラップを録音するRIKOと、それを見守るJUVENILE
 
これでできましたね! 聴いてみましょうか。
 

▲トラックにRIKOのラップが加わった
 
 
すごい! できました!!!!

RIKO & JUVENILE

今はすでにある曲のラップを乗せたけど、今度はオリジナルラップをひたすら作っていったらいいんじゃない? メロディとかも鼻歌で考えて。
 
はい!
 
あとは元のラップに、語尾だけ同じラップしたものを重ねてみる、というのもあるよね。
 
そうですね! すぐに続きをやりたいです。すごくわくわくしてます! 1曲完成させてみたい!
トラックのアレンジも、意外と簡単なんですよ。ずっと同じビートがループしている中で、ベースとキックだけを抜いてみるとか、トラックの抜き挿しで展開を付けられるんです。だから今回みたいに、まずは全部のパートが入ったループを作るといいです。

▲JUVENILEが例として、トラックの抜き挿しにより展開をつけてみた
 
すごい......!
 
\RIKOは1曲完成させることができるのか...次の更新をお楽しみに♪/

JUVENILE&RIKO

JUVENILE(写真左)
独自のCity musicを発信する音楽プロデューサー/アーティスト/トークボックスプレイヤー。RADIO FISH「PERFECT HUMAN」の作編曲をはじめ、手がけた楽曲のYouTube総再生数は一億回を越える。2025年1月25日には、K-POP界注目の新星”82MAJOR”のメインボーカルであるキム・ドギュンを迎えた「Letter feat. KIM DO GYUN(82MAJOR)」をリリース。TALKBOXプレイヤーとしても、トークボックス界のNO.1プロデューサー”FINGAZZ”の来日公演で共演を果たし、幅広くマルチに活動している。映画『バックトゥザフューチャー』をこよなく愛す。
Official Site:https://juvenile-tokyo.com/
X:https://x.com/juveniletalkbox 
TikTok::https://www.tiktok.com/@oopartz_juvenile

 

RIKO(写真右)
沖縄県出身。2006年9月29日生まれの18歳。女優/ホリプロ発ガールズユニットHUNNY BEEのメンバー。特技はダンス、ギター、三線、ラップ。音楽制作を勉強中!

■2025年7月9日(水)~7月27日(日)
ミュージカル『ジェイミー』ヴィッキー役出演 東京建物 Brillia HALLにて

■HUNNY BEE 2ndシングル「美しき流星」3/19リリース
3ヶ月連続リリースイベント@ヴィレッジヴァンガード渋谷本店 3/16(日)12:30回 14:30回 

■HUNNY BEE 2ndシングル「美しき流星」3/19リリース

▼HUNNY BEE「美しき流星」リリースイベント

  • 2025年3月16日(日) ①12:30〜 ②14:30〜 ヴィレッジヴァンガード渋谷本店 B2Fイベントスペース
  • 2025年3月20日(祝・木) 18:30〜 タワーレコード錦糸町パルコ店 店内イベントスペース
  • 2025年3月23日(日) ①12:30〜 ②14:30〜 ヴィレッジヴァンガード+PLUS(イオンレイクタウンmori)
  • 2025年3月30日(日) ①12:30〜 ②14:30〜 汐留シオサイト地下歩道 特設ステージ
  • 2025年4月13日(日) ①12:30〜 ②14:30〜 ヴィレッジヴァンガード渋谷本店 B2Fイベントスペース

Official Site:https://www.horipro.co.jp/riko/

 

JUVENILE×RIKO(HUNNY BEE)による3部作プロジェクト!

Blue Hour

『Blue Hour』JUVENILE feat.RIKO(HPI Records)

作詞:児玉雨子 作編曲:JUVENILE

これからの一歩を踏み出そうとする人の心象をとらえたナンバー!JUVENILEが生み出すの爽快なビートは負けずに歩いて行けるような勇気を聴き手に与えてくれる。RIKOの儚くも美しい等身大の女性像を美しく描き、自信に満ちた強さが表現されている。

Vintage-Records.-feat.RIKO

『Vintage Record.feat.RIKO』JUVENILE feat.RIKO(HPI Records)

作詞:RYUICHI 作編曲:JUVENILE

JUVENILEのアルバム『INTERWEAVE 03』に収録されている韓国人アーティストCIKI曲のリバイバルナンバーが2作目に登場!RIKOがCIKIの世界観とはまた違ったムードを醸しだし、新しい物語へと変貌を遂げた作品。

Whisper

『Whisper』JUVENILE feat.RIKO(HPI Records)

作詞:児玉雨子/RIKO 作編曲:JUVENILE/RIKO

トリを飾るのは、夜をテーマとしたアップテンポナンバー!!初挑戦となるRIKOのラップも聴き所。爽快なビートに乗せて歩みを進めネクストステップを刻んだ今作は、JUVENILE、RIKO、作家の児玉雨子の3名が交わる集大成。 

JUVENILE楽曲情報

Letter feat. KIM DO GYUN(82MAJOR)

「Letter feat. KIM DO GYUN(82MAJOR)」

作詞:JUVENILE、KIM DO GYUN(82MAJOR)、HWANG SEONG BIN(82MAJOR)

作曲/編曲 : JUVENILE

MIX&MASTERING by JUVENILE

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