この連載では、BTSからEXILE、CHEMISTRY、May.Jといったアーティストの楽曲に携わった経験を持つシンガーであり作詞/作曲/編曲家の和田昌哉が、メロディ作りに役立つ知識を一問一答形式で分かりやすくお伝えします。
【Q】 曲のメロディを作る際、事前に準備しておくことはありますか?
【A】曲のゴールはどこか、それをしっかり考えておきましょう。
【解説】
インスピレーションのままに曲を作るのは楽しいですが、それだけでは“思っていたのと違う”曲になることも。重要なのは、曲のゴールを明確にすることです。
例えば、その曲を誰が歌うのか。自分で歌う場合は、声質や響きが最も良くなるキーを見つけることが大切です。高すぎたり低すぎたりすると、パフォーマンスに影響します。逆に、他のアーティストに提供する場合は、歌う人の音域やファルセットの切り替えポイントを考慮しなければ、実際に歌えないメロディになってしまうことも。
シンガーソングライターであれば、自分自身の歌の力量や表現力に合わせて柔軟に調整することができますが、特に意識しておきたいのは“歌えるキー”ではなく“一番声やメロディが響くキー”を探すことです。
カラオケで原曲キーにこだわって無理をした経験はありませんか? 高音が出ないのに挑戦して自爆したり、“高音を出さなきゃ下手だと思われる”と考えたことがある人もいるでしょう。しかし、聴く側にとって大事なのは、高い/低いではなく“気持ちよく響くメロディ”です。パフォーマンスの質を高めるためにも、自分の声を最大限に生かすキーを選ぶことが重要です。
さらに、キー設定一つで曲の雰囲気が大きく変わる点にも注意しましょう。例えば、かなりおおざっぱですが、DやF#はオシャレな印象、CやFはシンプルで落ち着いた響きに感じませんか? この微妙な違いに気づくことで、メロディや曲全体の理解が深まり、表現の幅が広がります。
つまり、曲のゴールをしっかり見据え、“誰が歌うのか”“何を表現したいのか”を考えることで、自分や歌い手の声を最大限に生かした楽曲が生まれるのです。
【補足コメント】
作曲中に迷ったら、録音して聴いてみるのがお勧め。歌っていて体感的に“心地よい”と感じることより、聴いて“心地よい”と感じることにフォーカスする曲作りを心がけてみましょう。
講師:和田昌哉
【PROFILE】Instagram & X:@masayawada
作詞作曲からアレンジ/ボーカル/プロデュース/レコーディング/ミキシングまで自ら手掛ける音楽的センスと深い知識を持ち、“創る才能”と“表現する才能”を併せ持つ稀有なボーカリスト。ソロアーティストとしてAvex Rhythmzoneからアルバム3枚、シングル3枚をリリース。また、XChange、Fixional Cities、Groove Nomad Orchestraのヴォーカルとしても活動している。ソロデビュー前から数多くの作品に作詞/作曲/ボーカル・プロデューサーとして関わり、R&Bをルーツにしたその音楽性は、普遍的なポップスとして幅広い層に受け入れられている。EXILE TRIBE(EXILE/三代目 J SOUL BROTHERS/GENERATIONS/THE RAMPAGE/FANTASTICSなど)やNissy(西島隆弘)への楽曲提供を行うほか、ボーカル・ディレクターとしても活躍。CHEMISTRYのデビュー時やMay J.「Let It Go 〜ありのままで〜」、BTSをはじめとする韓流アーティストの作品にも多く携わっている。