サンレコWeb編集部がおすすめする、初心者が買って間違いのないオーディオインターフェース。今回は、steinbergのオーディオインターフェースをピックアップします。
- steinbergはDAWソフトCubaseのメーカー
- steinbergのオーディオインターフェースの魅力
- IXOシリーズ
- UR-Cシリーズ
- IXO 22 Review by 岩井莉子(LAUSBUB)〜クリアでローエンドもしっかりと再現する出音
steinbergはDAWソフトCubaseのメーカー
steinbergは、1984年にドイツ・ハンブルクにて設立されたメーカーです。同社が開発した製品の中で特に有名なのは、DAWソフトのCubaseと言えるでしょう。また同社はプラグインフォーマットであるVSTを策定したことでも知られています。
現在ソフトウェアとしてはCubaseのほかに、映画やテレビ番組、ゲームなどの音楽制作に向いたDAWのNuendoや、楽譜作成ソフトDorico、マスタリング・ツールWaveLabに加えて、さまざまなVSTインストゥルメント(ソフト音源)をラインナップしています。
ハードウェアとしては、ヤマハと共同でオーディオインターフェースを開発。お互いの知見を生かし、手頃な価格と信頼のおけるサウンドを両立しています。現在生産されているのはIXOシリーズとUR-Cシリーズの2モデルです。
steinbergのオーディオインターフェースの魅力
iPhoneやiPadで使用できる
IXOシリーズ、UR-Cシリーズ共に、Mac/Windowsで使用できるのはもちろん、iPhone/iPadで使用するためのCC(Class Compliant)モードを備えます。iPhone/iPadと本体を接続するだけでこのモードに自動で切り替わるため、手動での設定は不要です。さらにはiPhone/iPad対応の音楽制作アプリCubasisの簡易版、Cubasis LEが付属するので、すぐにレコーディングを始められます。
配信に便利なループバック機能を搭載
インターネットでの配信に便利な“ループバック機能”を搭載しているのも、魅力の一つ。本体に入力されているマイクやギターなどの音声と、DAWソフトウェアから再生されている音声を内部でミックスしてパソコンやスマートフォンなどに送り返すことができるので、ストリーミングソフトウェアを用いて配信を行うことが可能です。
またUR-Cシリーズは、“dspMixFx V3”を搭載し、ループバック音声も含めたすべての入力/再生ソースを独立してミキシングできるようになっています。配信に送る音と、自分がモニターする音を別々に調整することも可能なため、より柔軟で高品位な配信環境を構築できます。
Cubaseの簡易版と、即戦力なソフト音源バンドルSteinberg Plusが付属
Cubaseの簡易版であるCubase AIと、iPhone/iPad用の音楽制作アプリであるCubasisの簡易版、Cubasis LEが付属します。さらには、即戦力となるVSTインストゥルメントとループのセット、Steinberg Plusも付属。これは、DAWのメーカーのオーディオインターフェースだからこその魅力と言えるでしょう。
IXOシリーズ
IXOシリーズは、steinbergのオーディオインターフェース最新のモデルです。最高24ビット/192kHzに対応したAD/DAコンバーターを搭載し、USB 2.0に準拠したUSB-C端子でパソコンやスマートフォンなどと接続して使用します。
高性能なIXOマイクプリを一つ搭載するIXO 12(14,300円)と、二つ搭載するIXO 22(19,800円)をラインナップ(どちらも2イン/2アウト)。IXO 12、IXO22ともにブラック、ホワイトの2カラーが用意されています。
オールインワンパッケージを2種類ラインナップ
マイクやヘッドホンなどをバンドルしたオールインワンパッケージも。レコーディングに向けのIXO Recording Pack(34,100円)と、ポッドキャスト向けのIXO Podcast Pack(28,600円)の2種類をラインナップします。
IXO Recording Pack
IXO Recording Packは、IXO22のブラックと、コンデンサーマイクST-M01、モニターヘッドホンST-H01をバンドル。世界標準のオーディオマスタリング・ソフトウェア WaveLab の簡易バージョンWaveLab LEが付属します。
IXO Podcast Pack
IXO Podcast Packは、IXO12のブラックに、コンデンサーマイクST-M01および三脚のマイクスタンド、ポップガードを同梱し、ポッドキャストの作成や SNS コンテンツでのオーディオ作成ができるソフトウェア、WaveLab Castが付属します。
UR-Cシリーズ
UR-Cシリーズは、最高32ビット/192kHzに対応するAD/DAコンバーターを搭載したオーディオインターフェース。USB 3.1 Gen1に準拠したUSB-C端子で、パソコンやスマートフォンなどと接続して使用します。極めてフラットな特性を持つというクラスAマイクプリ、D-PREを備え、ナチュラルな録り音を特徴としています。
すべてのモデルにMIDIイン/アウトを搭載しているので、MIDI入力デバイスや音源モジュール、サンプラーなどを直接接続することが可能です。
ラインナップは2イン/2アウトのUR22C(グレイ&ブラック、レッド&ブラック、グリーン&ブラック)、6イン/6アウトのUR44C(グレイ&ブラック、レッド&ブラック)、16イン/16アウトのUR816Cの、全6種類。
UR22Cはオールインワンパッケージもラインナップ


UR22C Recording Packは、オーディオインターフェースUR22C、コンデンサーマイクST-M01、モニターヘッドホンST-H01のコンプリートパッケージ。UR22Cはグレイ&ブラック、レッド&ブラックの2種類のカラーから選べます。音質、機能などの仕様は同一です。
★IXOとUR-Cの異なる性能を整理!
- IXOは最高24ビット/192kHz、UR-Cは最高32ビット/192kHz対応
- UR-CのみMIDIイン/アウトを搭載
- IXOのUSB-C端子はUSB 2.0に、UR-CはUSB 3.1 Gen1に準拠
IXO 22 Review by 岩井莉子(LAUSBUB)〜クリアでローエンドもしっかりと再現する出音
札幌を拠点に活動するニューウェイヴ・テクノバンドLAUSBUBのSyn, Gt, DJ, Electronics担当。2020年より、作曲, Remix等で活動。3rdシングル「Telefon」がSoundCloudの全世界ウィークリーチャート1位を記録するなど、国内外で注目を集める
UR22Cを5年以上愛用
UR22Cは堅固な作りで、ツアーの際などの激しい移動に5年以上耐えてくれているし、金属のボディについた傷もかっこいい。MIXノブで、オケ(DAWの音声)とシンセサイザー(インプットの音声)のバランスをスピーディに調節できる点や、MIDI端子でさまざまな実機と接続できること、さらには各ノブの適度な重みも気に入っている。
そんなUR22Cの後継機とも言えるIXO 22は、IXOマイクプリアンプの搭載やアウトプットの安定性向上、ミュートボタンの追加などといった機能面のアップデートとともにデザインも刷新され、現代的な進化を遂げている。
生々しい音の質感をよく捉えている
ラインアウトの出音はクリアで、ローエンドもしっかりと再現されている印象。楽器の生音はもちろん、電子音楽の繊細なテクスチャーや、クリックノイズの鳴りも良い。出力レベルを極度に下げても左右差などは感じられず、安定感に驚いた。防音設備の無い部屋など、音量制限のある環境でも安定して作業できるだろう。ヘッドホンアウトはボリュームノブのレンジが広く、細かな音量調節が可能だ。
インプットに関しても、マイクプリとHi-Z入力どちらのクオリティも高く、個人的には、プラスチックを擦る音やテープを剥がす音を録音した際に、生々しい音の質感がよく捉えられていると感じた。
ミュートボタンが搭載されているのもありがたい。ボーカルを録音してすぐにスピーカーでチェックしたいときに、わざわざインプットのゲインを下げる必要がなく、ボタン一つでミュートできる。もう一度録音する際に、ゲインのパラメーターが元と変わってしまう心配もなくなった。
”イラスト”と“記号”で、初心者にも分かりやすい
UR22Cと比較してみると、IXO 22の奥行きは約3分の2に、重量は1,000gから450gと半分以下になっている。片手で持ち運べるため、屋外や旅先でも使用したくなるサイズと重量感だ。音の安定性がありながらこの手軽さというのは、大きな魅力だろう。
私が今回試したホワイトモデルは、部屋に馴染むミニマルなデザインながら適度な存在感を放っている。上面にロゴが刻印されているが、主張は控えめ。全体がマット仕上げのため、照明やレーザーが反射する心配がない点も良い。
フロントパネルには分かりやすくイラストと記号が用いられており、はじめてオーディオインタフェースを扱う人にも優しい設計になっている。背面には、パソコンなどの機器を接続するUSB-C端子と、電源供給用のUSB-C端子を判別できる記号と、メインアウトのL/Rの表記がエンボス加工されており、ユニバーサル・デザインへの配慮が感じられる。手触りで各ポートを判別できるので、ケーブルを抜き差しする際に本体を動かす必要がなく便利だ。
IXOシリーズは、これから宅録を始める人、ライブ用のサブ機を探している人、移動しながら制作を行う人に、長く寄り添えるようなオーディオインタフェースだと思う。初心者にも分かりやすく、必要な性能がしっかりと備わっているため、今後IXOと共に育ち、何年も愛用するユーザーが増えていくのではないだろうか。