Sennheiser インタビュー 〜プロオーディオメーカーが提唱するハイブリッド会議の音響ソリューションとは?

Sennheiserの皆様

左から、ゼンハイザージャパンの山口真宏氏、鎌田良和氏、アジア太平洋(APAC)地域のセールスとマーケティングを担当するSennheiserの副社長、ペッテリ・ムルト(Petteri Murto)氏、ゼンハイザージャパンの川北敏樹氏

今年創業80周年を迎えたドイツのプロ・オーディオ・メーカーSennheiser。マイクやヘッドホンといった音楽関連の製品でよく知られている一方で、近年では会議室の音響システムといったビジネスコミュニケーション分野にも力を入れている。その代表例として挙げられるのが、天井マイクのTeamConnect Ceiling Solutionsや、ビデオバーのTeamConnect Barだ。この度は、アジア太平洋(APAC)地域のセールスとマーケティングを担当する同社の副社長、ペッテリ・ムルト(Petteri Murto)氏と、ゼンハイザージャパンの鎌田良和氏、山口真宏氏、川北敏樹氏にインタビューを敢行。Sennheiser製品のデモを体験できる南青山のエクスペリエンスルームにて、ビジネスコミュニケーション分野における製品の開発経緯や企業理念について話を聞いた。

ハイブリッド会議における“音”の重要性 〜ペッテリ・ムルト氏インタビュー

ペッテリ・ムルト氏

-企業の会議や教育現場において、今日の音響コミュニケーションで直面している課題は何だとお考えですか?


ペッテリ 会議や授業の円滑な進行において、“音”というものは非常に重要です。現在ハイブリッドな会議や、リモートで行う授業などが普及してきており、一対一の小規模なミーティングから、グローバルなタウンホール・ミーティングまで、コミュニケーションの規模が多岐にわたっています。それぞれの規模に合った音響システムの設計や導入の方法が、極めて複雑なものになっていると考えています。

-Sennheiserでは、そういった課題にどのように対処していますか?

ペッテリ 弊社のビジネスコミュニケーション部門は、最新鋭のマイク・システムで会議室や教室の音質を高めるソリューションを提供することができます。ハイブリッドな会議において重要なのは画質であると思われがちですが、映像が見られなくても会議は続けられる一方で、音が聞こえなければ会議を続けることは不可能です。音というものがいかに重要であるかということを、ここでは強調したいと思います。

Petteri Murto

-日本市場におけるビジネスコミュニケーション部門の今後の展望をお聞かせください。
 

ペッテリ 日本には、我々が提供する製品を活用していただける企業や学校が非常に多いと考えています。他国と同様にハイブリッド会議というものが一般的になってきているため、我々のソリューションが会議の質の向上に貢献できるでしょう。Sennheiserは、お客様から非常に信頼されているドイツのプロ・オーディオ・ブランドでして、皆さん、我々が提供する“革新性”に大きな期待を寄せています。実際のところ日本でも多くのお客様からデモの依頼があり、日本のチームが、南青山のエクスペリエンスルームおよびお客様の環境に実際に伺うことで、製品を体験していただいています。Sennheiserは“創業80周年”という節目を迎えましたが、これから先も日本のお客様のサポートを続けて、未来の音というものを一緒に作っていきたいと思っております。

-これまでのSennheiserの歴史の中で、特に印象的な出来事やイノベーションはありましたか?

ペッテリ 私はSennheiserに入ってもう15年になります。これまで数々のイノベーションを目にしてきたので一つに絞るのは非常に難しいのですが、最新のトピックとしましては、話者の口元にマイクの指向性を自動的に向ける技術=ビームフォーミング・テクノロジーをローンチできたことです。また、新しいワイヤレス伝送の規格、WMASを採用した、Specteraというシステムも、業界にとって革命を起こすようなものでしょう。まだ日本では認可が降りていませんが、ぜひお待ちいただければと思います。もう一つはビデオバーのTeamConnect Barですね。近年ではこの3つが極めて印象的でした。そして、製品や技術はもちろんですが、私がSennheiserにとって素晴らしい資産だと思っているのは“人”です。日本にも世界にも、音響への情熱を持っている人々が揃っているので、職場としても素晴らしい環境だと思っています。

-マーケットの課題に対処できるような製品を開発するために、日頃どのようにアンテナを張っているのでしょうか?

ペッテリ 市場が何を言っているのかをよく聞くこと、つまり傾聴が極めて重要だと考えています。我々は、Sennheiserの製品を使ってくださっている方だけでなく、まだ使っていない方の声も時間をかけてよく聞いて、何ができるのかを考えます。2023年には、売上高の8.7% (約6,200万ユーロ)を研究開発やサプライチェーン強化、デジタル化に投資しました。これから80年先も、親しんで使っていただける音響ソリューションを開発していきたいと思っております。

Petteri Murto

“Sennheiserクオリティ” の会議室向け音響システム開発秘話 〜ゼンハイザージャパン インタビュー

Sennheiser日本チーム

左から、ゼンハイザージャパンの鎌田良和氏、山口真宏氏、川北敏樹氏

-このエクスペリエンスルームが新青山ビルにオープンしたのは2023年ですね。経緯を教えてください。

鎌田 コロナ禍後、新青山ビルを所有する三菱地所さんが、テナント向けの貸し会議室をリニューアルするにあたって悩んでいたんです。そこで我々が「Sennheiser製品の体験ができるエクスペリエンスルームを持ちたい」ということを三菱地所さんに提案したところ、貸し会議室 “青山ツイン レンタルミーティングルーム サクサク” 兼、“Sennheiserのエクスペリエンスルーム”として運用させていただけることになりました。三菱地所さんからは、「音響に強い方もそうでない方も使う会議室なので、誰でも簡単に扱えるように分かりやすくしてほしい」というご意見をいただきましたね。

ゼンハイザージャパンの鎌田良和氏

エクスペリエンスルームについて解説するゼンハイザージャパンの鎌田良和氏

Sennheiserのエクスペリエンスルーム

貸し会議室 “青山ツイン レンタルミーティングルーム サクサク” 兼、“Sennheiserのエクスペリエンスルーム”。天井マイクシステムTeamConnect Ceiling Solutionsを体験できる。広さは13×6.2m(92.81㎡)で、40〜60名程度収容可能

Q-SYS

エクスペリエンスルームの機器の操作はタッチパネルで行える

-エクスペリエンスルーム内に展示されている、天井マイクTeamConnect Ceiling 2およびTeamConnect Ceiling Mediumの開発経緯をお聞かせください。

鎌田 発売は2019年の6月でして、コロナ禍に入る前なんですね。その時点ですでに海外では、“大きな部屋ではスピーカーフォンだけでは十分に音を届けることができない” “マイクやスピーカーのケーブルが邪魔になる”といった、会議室の音響システムにおけるさまざまな問題が出てきていたんです。当時日本ではそういった問題はあまり浮上していませんでしたが、コロナをきっかけにさまざまなミーティングの方法が登場し、こういった天井マイクというものが認知されてきたのだと思います。

TeamConnect Ceiling 2

大規模なスペースに向いたTeamConnect Ceiling 2。28個のマイクカプセルを搭載する

TeamConnect Ceiling Medium

中規模なスペースに向いたTeamConnect Ceiling Medium。15個のマイクカプセルを搭載
TeamConnect Ceiling 2
TeamConnect Ceiling Medium
カラー展開はどちらもブラック、ホワイトの2色

-これらの天井マイクに採用されている“ダイナミックビームフォーミング”という技術について教えてください。

山口  話している人の口元に自動的にマイクの指向性を向ける技術です。SennheiserのガンマイクMKH416の技術を応用したもので、部屋のレイアウトを変更したとしても話者に指向性を向けて収音してくれますし、教室で先生が黒板を向いたまま話したり、移動しながら話したりしても、問題なく声を拾うことができます。さらにはその音声をZoomやTeamsなどで繋いだ相手先に届けたり、配信、録音することも可能です。

-“ボイスリフト”という技術も採用されていますね。

鎌田 ボイスリフトとは、まさに今ここで起こっている音響環境を、離れた場所でそのまま再生するという技術です。PAは、マイクで捉えた音をスピーカーで大きくして遠くに拡声しますよね。ボイスリフトというのはPAとは違い、部屋のどこにいても、話し手があたかも目の前にいるかのように再生する技術なんですよ。

鎌田  2020年の4月頃、まさしくコロナ禍にファームウェアが追加されました。当時我々はまだこの機能を天井マイクのシステムで試したことがなかったので、エクスペリエンスルームでいろいろな実験をしました。50回以上の失敗を繰り返して知見を貯め、ようやくお客様の環境でのデモがうまくいくようになり、導入が始まっていきました。

-導入後のお客様からのフィードバックで印象的だったことはありますか?

鎌田 「実際導入してみると、とても便利」という声は多いですね。会議室ではグースネック・マイクやハンド・マイクを使うことが一般的ですが、話し手の姿勢が崩れたときに音を拾えなかったり、ノートパソコンを置く際に無意識のうちによけてしまったりすることがある、という話はよく耳にします。TeamConnect Ceiling Solutionsを導入された方々は、こういった音響の問題をまったく考える必要がなくなり、会議に集中できるようになったと言ってくださっています。

-他社製品でもボイスリフトを搭載している製品がありますが、Sennheiserの強みはどの部分になるのでしょうか?

鎌田 当社のボイスリフトは、他社製品と比較してもよりクリアに音を届けることができ、効果をしっかりと体感していただけるソリューションになっていると自負しています。ぜひ皆様に一度は体験していただきたいです。南青山のエクスペリエンスルームも予約を承っていますし、企業様、学校様の実環境でご希望される方でも、積極的にデモをやらせていただいております。ぜひ気軽に体験して、ご検討いただければと思います。

Voicelift

ボイスリフトのイメージ画像

-ビデオバーのTeamConnect Barも、会議室向けの音響ソリューションとしてラインナップしています。

鎌田 Sennheiserでビデオカメラがついた製品というのは初めてなんです。USBケーブル1本でTeamsやZoomを使用できるのはもちろんなのですが、他社製品との大きな違いがほかに3つあります。一つ目は、Dante接続に対応していることで、Danteを使った拡張マイクを2ch分まで追加することが可能です。また、USBポートが2つ付いているので、本体のほかにUSBカメラを追加して選んで使うことも可能です。二つ目はカメラの機能ですね。まず、画角が水平115度と広角なので、横並びの座席でも広く映してくれます。さらにカメラのモードが、デフォルトモード、オートフレームモード、パーソンタイリングの3つのモードから選択でき、パーソンタイリングモードではAIが顔を認識して、自動で画面を最大9分割します。動いてもバストアップをキープしてくれるんですよ。この機能は、対向先、つまり在宅やほかの場所で見ている人達にとっては、誰が話しているかがはっきりとわかるので、非常に便利とのお声をいただきます。そして3つ目、最大の違いは、マイクとスピーカーの音質ですね。実際にお客様からも、聴きやすい音だというフィードバックをいただいています。

TeamConnect Barの使用イメージ

TeamConnect Barの使用イメージ

山口 TeamConnect Barは、こういったサウンドバー・タイプの製品にはめずらしく、調整できる項目がとても多いです。例えば内蔵マイクのEQやスピーカーのEQをいじることができます。また、天井マイクシステムと同様、話している人の口元に自動的に指向性を向ける機能があるのですが、指向性を向けたくない範囲を指定したり、逆に優先的に指向性を向ける範囲を指定したり、細やかな調整ができるようになっています。もちろんBluetoothにも対応しているので、スマホとTC BARをBaroomで接続すれば、スマホから会議に参加することや、音楽を再生することも可能です。USBケーブルでパソコンに繋げばすぐに使えますが、こだわりたい人のニーズにもしっかりと応えられるようになっています。

山口真宏氏

TeamConnect Barの技術的側面を解説してくれた、ゼンハイザージャパンの山口真宏氏

-サイズはSとMの2展開ですね。

鎌田 Sサイズであれば自宅にも導入しやすいのではないかと思います。リモートで働く方のワーク環境を改善することが可能です。Mであれば、会議室の音響環境を大きく改善できると思います。

TeamConnect Bar

TeamConnect Bar M

-“Sennheiserが作った”という点が、音楽好きの心をくすぐりますね。

鎌田 そうですね。TeamConnect Barは、SennheiserのサウンドバーAMBEOに、カメラとマイクを埋め込んだというコンセプトの製品です。ほかのビデオバーと比較すると、音が抜群に良いですよ。音楽を聴いたり映画を見たりできるクオリティの音質を、会議でもお使いいただけるんです。Sennheiserファンの方には必ず1台持っていただきたいなと思いますね。

 

製品情報

関連記事