プロ・スタジオ向けのコンソール・メーカーSOLID STATE LOGIC(以下SSL)が、2020年に同社初のオーディオ・インターフェース、SSL2とSSL2+をリリースし、注目を集めたのは記憶に新しい。そして今回その両機種が、ユーザーの声を取り入れアップデートを果たし、SSL2 MKII、SSL2+ MKIIとなった。最高32ビット/192kHzのAD/DAコンバーターを搭載し、アナログ/デジタル回路ともにダイナミック・レンジが向上。さらにはHi-Z入力やヘッドホン端子を手前側に配置するなど、ユーザー・インターフェースも改良されている。宅録向けの機材を多く試してきたというシンガー・ソングライターの碧海祐人に、その実力をひも解いていただこう。
Overview
SSLのオーディオ・インターフェースSSL2、SSL2+の後継機。SSL aPreマイクプリやSSL SL4000シリーズ・コンソールのサウンドを再現する4Kスイッチなどを継承しながら、AD/DAは最高32ビット/192kHz対応のものにアップデート(前モデルは最高24ビット/192Hz)。回路もデジタル/アナログともに改良され、ダイナミック・レンジが向上している。Hi-Z入力やヘッドホン出力がフロント側になるといった、操作系のアップデートもなされている。
SPECIFICATIONS
■電源:USBバス・パワー ■ビット/サンプリング・レート:最高32ビット/192Hz ■接続:USB2.0(U
SB-C) ■外形寸法:234(W)×159(H)×70(D)mm(ノブの高さを含む) ■重量:860g/SSL2 MKII、900g/SSL2+ MKII
REQUIREMENTS
■Mac:macOS 12以上、OS 標準ドライバーで動作 ■Windows:Windows10/11、SSL が提供するUS
B オーディオ (ASIO/WDM)ドライバーのインストールが必要
演奏のニュアンスを細部まで収めてくれる
“SSL”という名前はもちろん知っていたのですが、実は僕にとってあまりなじみのあるブランドではなかったので、今回リリースされたSSL2 MKII、SSL2+ MKIIに興味を持ちました。製品を手に取って最初に思ったのは、“パッと見で全部分かる”ということ。オーディオ・インターフェースを使ったことがある人はもちろん、使ったことがない人にとっても相当分かりやすいユーザー・インターフェースだと思います。Macであればドライバーが不要なのもありがたいです。
声をマイクで、エレキギターをHi-Z入力に挿して録音してみました。シンプルな表現になりますが、“すごく良い”です。フラットでダイナミック・レンジが広く、小さい音がきちんと録れるのに、大きい音もつぶれません。マイクから離れていったときの、音が消えていく感じもしっかりと収音されます。特にギターは音の強弱が出やすい楽器ですが、弦を強くはじいても、優しく弾いても、演奏のニュアンスを細部にわたり収めてくれるので、ミュージシャンに優しい機材だと思いました。
そして“4Kスイッチ”ですが、これは楽しいですね! 単体のエフェクターとして販売してほしいくらい(笑)。カラーが出すぎていないのに倍音で押し上げてくれるので、どんなソースにもフィットすると思います。例えばリード・ギターだけ4Kスイッチをかけて録るといった使い分けもできますね。もしもチャンネル数が増やせるのなら、ドラムを、キック、スネア、ハイハットの3点だけ4Kスイッチありで録ってみたらどうなるのか、興味があります。
作り手を“ノせてくれる”出音
出音について一番感じたのは、“作り手をノせてくれる”ということ。ローからハイまで丁寧に押し出してくれて、音に輪郭があるんですよ。1~3万円くらいのオーディオ・インターフェースで多いのが、ローミッドからミッドくらいの帯域がごちゃっとしてしまうことなのですが、SSL2 MKII、SSL2 MKII+にはそれを全く感じず、帯域が整理されているように思いました。キックやベース、ギターのジャリッとしたところが出てきてくれるからR&Bやブラック・ミュージックを聴いたらすごくノれるし、ボカロなど音数多めの曲は、奥行きがよく分かって楽しいです。
総じて、“出音はすごくノせてくれる感じなのに、録り音は精密”という印象。まさにクリエイターにぴったりな製品なんじゃないでしょうか! 機材の価格がどんどん上がっている中で、この高クオリティでこの価格を実現することには、すごく価値があると思うんです。入門機としてはハードルが少し高いのかもしれませんが、SSLが「こっちはこんだけやるから、みんな始めようよ」と言ってくれているように感じました。初心者から中上級者の方まで、ぜひ一度手に取っていただきたいですね。
【碧海祐人(オオミマサト)|Profile】シンガー・ソングライター。メロウでジャジーなムードを携えた情緒的なサウンドと、海外インディーR&Bなどからの要素も感じ取れるような繊細さと気怠さを混在させた歌声で、注目の的となっている。
Recent Work