注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回はZOOMの新しいハンディ・レコーダー、H5studioを紹介する。2024年にリリースされたessentialシリーズに続いて今年3月に発売されたH5studioは、さらにプロフェッショナルな現場に向いた音質と機能性を実現。“スタジオ・クラスの音質”を謳うモデルとなっている。ZOOMの大迫亮祐氏とRock oN Companyの天野玲央氏に話を聞いた。
H5studio
オープン・プライス(市場予想価格:43,000円前後)
最大4イン/2アウトの入出力を持つハンディ・レコーダー。マイク・カプセル交換システム3.0に対応しており、付属するXYマイクのほか、ショットガン・マイクのSSH-6eや入力拡張ユニットのEXH-6e、来年発売予定のラベリア・マイクWLM-1と換装することができる。32ビット・フロート+デュアルADにより、ゲイン調整不要でクリップのない録音が可能(最高192kHz)。16/24ビットも選択でき、収録シーンや納品形態に合わせたレコーディングが行える。
●天野さんはZOOMのレコーダーにどのような印象を持っていますか?
天野 私はH6を持っていて、主にバンドのリハーサルを録音する用途で使っているんです。コンパクトなのに、大音量のドラムもしっかりとレコーディングできるので重宝しています。さまざまなシチュエーションで活躍してくれるレコーダーというイメージですね。
●ZOOMではどのようなコンセプトを持ってレコーダーを開発しているのでしょうか?
大迫 弊社のレコーダーは長い歴史を持っていますが、特に最近のシリーズでは、“録音エンジニアに失敗をさせない”というのが一つのテーマになっています。32ビット・フロート録音やデュアルADによるクリップしない録音も、その“失敗させない”という目的のための取り組みです。ほかにもさまざまな工夫を最近の機種で盛り込んでいます。
●32ビット・フロートとデュアルADに対応したレコーダーが増えてきました。ユーザーからはどのような反響がありますか?
大迫 製品ごとにコンセプトを明確に分けており、例えばH5studioやH6essentialといった大型機種は、カメラと組み合わせて使う方向けです。一方、H1essentialは初心者の方にも使いやすいよう設計しています。初心者向けモデルでは“ワンタッチで録音ができて、かつ音が良い”と評価していただいています。レコーダーとしての使い勝手をしっかりと持ちながら、スマートフォンの録音アプリのように簡単に操作できる点が好評です。中級者以上の方からは“突発的な音でもクリップしないのが良い”“近くでマイキングできないときでも、後でゲイン調整すれば音がきちんと録れていた”といった声をよく耳にします。
天野 essentialシリーズになってから、ユーザー・インターフェースやボタンの配置が以前と比べて変わっていますね。より片手操作に適したデザインになったと思います。
●2024年にessentialシリーズが登場しましたが、その名称から後にプロ・モデルが出てくる期待感がありました。製品のグレードを分ける構想は、essentialの開発当初からあったのでしょうか?
大迫 studioという名前は後から決まりましたが、essentialのときから上位グレードの構想はありました。
●グレードを分けた目的は?
大迫 一つはユーザー・インターフェースの分かりやすさです。ゲイン・ノブがあるかないかで、初心者と中上級者の使い勝手が大きく変わります。ノブがないと“録音ボタンを押すだけ”というシンプルさがありますが、上級者からすると物足りなさを感じるかもしれません。また、物理的な操作子や機能性が増えると、ボディ・サイズやコストが大きくなってしまう問題もあります。essentialシリーズは操作の明快さ、H5studioではさらに細かな調整ができる上位モデルというすみ分けで開発を進めました。
天野 コンセプトの違いが分かりやすいので、お客様へのご提案もしやすいです。あとは、やはり入力数の違いがモデル選びの大きいポイントになるでしょう。4chのマイクを使いたければH6essential、外部入力が不要で拡張予定もない方にはH1essentialをお薦めします。H5studioはプロフェッショナルの期待に応えるモデルであり、年内の発売を予定しているタイムコード用のアダプターTCA-1が出れば、映像クリエイターの需要がさらに高まるでしょうね。
●“H5”というナンバリングで開発されたのはなぜでしょう?
大迫 H5studioと同じようにショック・マウント機構を持っていた、旧H5を刷新するモデルとして開発したためです。5という数字が入っていますが、入出力数はH4essentialと同じ最大4イン/2アウトとなっています。
●開発で最初にポイントとなったのは?
大迫 マイクですね。H6essentialのマイクよりも大きく、弊社のレコーダーの中でも過去最高スペックとなっています。ハイエンドなスタジオ・マイク・クラスのクオリティを持っているため、製品名もH5studioに決まったんです。
●どのようなマイクの品質向上が図られていますか?
大迫 140dB SPLという高い耐音圧を実現しています。100Hz以下の低域までしっかり録れ、周波数によらず指向性がフラットな点も特徴です。明瞭な指向性も実現しました。
●マイク部分は取り外しができますが、H6essentialとも互換性がありますか?
大迫 H5studioとH6essentialは共にマイク・カプセル交換システム3.0に対応しているので互換性があります。ただ、本体の設計上H6essentialでは140dB SPLの耐音圧に対応しないなど、マイクのスペックを引き出し切れません。もちろん、H6essential純正のマイクと比べるとダイナミック・レンジの広さなどの恩恵は受けることができます。
天野 XYマイクだけでなく、ショットガン・マイクや来年発売予定のワイヤレス・ラベリア・マイクなど、カプセル交換だけでいろいろな現場に持ち出せるのがいいですよね。ZOOMのレコーダーがあれば、“どのようなマイクを選べばいいのか”“どのようにマイクを接続すればいいのか”といった悩みもなくなりますし、これからもさまざまなカプセルが登場するのを期待しています。
●先ほど話に出たように、essentialシリーズではなかったゲイン・ノブが追加されています。なぜ搭載することになったのでしょうか?
大迫 “ゲイン調整が不要で、ボタン1つで録音を開始できる”という、32ビット・フロートとデュアルADを生かしたシンプルな操作性は好評です。しかし、“現場でレベルをある程度決め込みたい”というクリエイターも多い。特に映像系では録音するファイル数も多いため、後からゲイン調整を行う手間も増えてしまいます。ゲイン・ノブを備えることで、マイク入力と外部入力、それらをミックスした2ミックスをすぐに納品できる音量にして書き出せるのは大きな利点です。また、納品先が24ビットしか受け付けないという場合もあるため、32ビット・フロートだけでは完結しないケースもあります。そのため、16/24ビットの録音モードも用意してゲイン調整できるようにしました。まだ今は32ビット・フロートの過渡期だと思っていますので、納品先に合わせて24ビットで録音する、失敗できない重要なレコーディングでは32ビット・フロートを選択するなど、さまざまなニーズを満たせるようにH5studioを設計しています。
●プリアンプ部分もessentialから向上していますか?
大迫 ハイエンドなFシリーズと同じクラスであり、弊社製品の中で一番性能の良いプリアンプを搭載しています。映像クリエイターの中にはFシリーズのクリアさやノイズの少なさを求めている方も多いので、ハンディ・レコーダーにも搭載することにしました。
●音のキャラクターはどのようなものになっているでしょうか?
大迫 色付けの少なさは意識して開発しています。それはプリアンプだけでなくマイク部分にも言えることですが、レコーダーは素材を用意するもので、その後の料理がしやすいように素直な録り音であることを目指しています。
●プロフェッショナルに対応する音質と機能性を実現した、上位シリーズとしてふさわしいレコーダーですね。
天野 高音質と優れた可搬性を両立しているのが魅力だと思います。どんな録音シーンでも活用できる、まさにスイス・アーミー・ナイフのような存在ですね。
大迫 私が一番推したいのはマイクの音質です。開発中、弊社の経営陣へのプレゼンがあったのですが、そこでグランド・ピアノをH5studioで録音したところ、低域までフラットに録れる性能に皆が驚いていました。これまでのハンディ・レコーダーでは録りづらかった音までカバーできるので、広い周波数帯域を含むあらゆる音を録る方に使っていただきたいと思います。


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