MINIMAL AUDIO Wave Shifterを徹底解説! 〜個性的かつ多彩なサウンドを生み出すプラグインエフェクト

MINIMAL AUDIO Wave Shifter 〜Rock oN Monthly Recommend vol.80

 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞く、Rock oN Monthly Recommend。今回は気鋭メーカーのMINIMAL AUDIOがリリースしたプラグイン・エフェクトWave Shifterを紹介する。エレクトロ・ミュージックのリフやビートの味付けとして、個性的かつ多彩なサウンドを生み出す本プラグインについて、輸入代理店の銀座十字屋 ディリゲント事業部の八巻光之丞氏、ライターの内藤朗氏、メディア・インテグレーションの竹内宗大氏に話を聞いた。

MINIMAL AUDIO Wave Shifter

8,250円

MINIMAL AUDIO Wave Shifter

 MINIMAL AUDIO Wave Shifterは、独自の周波数変調により個性的なサウンドを生み出すエフェクト・プラグイン。画面上部には、定位の変化や左から右に音が流れる様を時間軸で視認できるグラフィックを備えており、直感的にサウンドをイメージできる。同社のバーチャル・インストゥルメントCurrentの内蔵エフェクトとして使用できるほか、スタンドアローンとして各種DAWにも対応する。Mac/Windowsに対応し、プラグイン形式はAAX、AU、VST2、VST3で動作する。


●MINIMAL AUDIOは近年誕生したブランドですね。まずはその成り立ちから伺えますか?

八巻 2021年にスタートしたブランドで、ユーザー・インターフェースの良さと操作性、シンセとの相性に優れたエフェクトが高く評価されています。また、新興ブランドらしく、最新の音楽トレンドに対応するよう設計されています。

竹内 ビート・ミュージックやエレクトロ・ミュージック系のクリエイターが使っている印象ですね。初心者というよりは、中級者以上の音楽制作者の方が、バリエーションを広げるツールとして導入するケースが多いと感じています。

 

●Wave Shifterはどういったプラグインなのでしょうか?

内藤 簡単に言うと、周波数をさまざまな方法で変化させてエフェクトを生み出すプラグインです。例えばフランジャーやコーラスは、デジタル・ディレイの回路を利用して生成可能なエフェクトですが、Wave Shifterのベースとなる仕組みも同じと考えてもらってよいと思います。それに加えて、FM変調で倍音成分を変え、ピッチや音色の変化を一つのエフェクトで作ることができます。オーソドックスなフランジャーからスタッター・ディレイのような音まで、通常2つ以上のプラグインで作るようなリング・モジュレーターやビット・クラッシャーも一つのエフェクト内で、同一のユーザー・インターフェースとパラメーターにて調整可能です。

 

●画面はどのようなセクションに分かれているのでしょうか?

内藤 まず画面右上にあるSTYLEは、3つのモードを切り替えられます。それぞれ、全体に周波数を均等に加算/減算する基本モードのFREQ SHIFT、元の信号を除去し、新たに周波数を加算して金属的な効果やひずみを作るRING MOD、元の信号を残しながらリング・モジュレーション的な効果を付加するAMP MODとなっています。中央のFREQUENCYノブもポイントで、隣接するFM変調のセクションとリンクしています。FMのモードは7種類あり、かかり具合をRATIOとAMOUNTの2つのパラメーターで調整し、FREQUENCYノブを動かすことでさまざまにサウンドを変化させることができます。これらのセクションで周波数変調を行った後、画面右下のフィルターと画面左のMODULATIONで、周期的な変化を加えていきます。ほかにもDRY/WETでエフェクトの量やバランスを取れるほか、右下のOUTPUTの右に備えるソフトクリップ・ボタンで、全体的な音の質感の調整もできます。

画面左がMODULATION。上部のグラフィックはMOD DEPTHのパラメーターに応じて変化する。下部4つのツマミの中央にあるのはSTEREO RANDOMIZEボタンで、ステレオ・チャンネルに個別のランダムが適用され、音の“揺れ”を演出する

画面左がMODULATION。上部のグラフィックはMOD DEPTHのパラメーターに応じて変化する。下部4つのツマミの中央にあるのはSTEREO RANDOMIZEボタンで、ステレオ・チャンネルに個別のランダムが適用され、音の“揺れ”を演出する

 

●FREQUENCYノブにもモードがありますね。

内藤 周波数の設定別に4種類あります。FASTはいわゆるオーディオ・レート、TUNEDはMIDIノート、SLOWはLFO的な低域の周波数、BPMはテンポ・シンク的な同期を使用するものです。

 

●音作りはどのような手順で行っていきますか?

内藤 ループを鳴らしつつパラメーターをイジりながら、どうやって音を変化させたいのかをつかんでいくのがよいと思います。FMとフィルターのセクションは分かりやすく音が変化するので、まずはこの辺りを触ってみて、どんな質感になるのか、求めている感じに近いのかを判断するのもお勧めですね。その後でモジュレーションを加えて、さらにどんな変化が起きるのかを探ってみる。音を聴きながら、少しずつ操作してみてもらえたらと思います。

竹内 アプローチがシンセサイザー的ですよね。それにプリセットもたくさん用意されているようなので、それらを切り替えながら音を出すだけでも、曲のインスピレーションが湧いてくるように感じました。プリセット・ライブラリーは何種類ありますか?

内藤 全部で70種類ほどあり、4つのカテゴリーに分かれています。Essentialsは主にベーシックな空間系、Movementは音の動きが大きなエフェクト、Distortedはその名の通りひずみ系で、ビット・クラッシャーやリング・モジュレーションの効果です。Abstract SFXは飛び道具的なプリセットとなっています。

プリセットは4つのカテゴリに分かれている。“Essentials”はWave Shifterの基本的なエフェクトで、“Movement”は音の動きが大きいエフェクト、“Distorted”はビット・クラッシャーやリング・モジュレーション、“Abstract SFX”はより過激な飛び道具系を内包する

プリセットは4つのカテゴリに分かれている。“Essentials”はWave Shifterの基本的なエフェクトで、“Movement”は音の動きが大きいエフェクト、“Distorted”はビット・クラッシャーやリング・モジュレーション、“Abstract SFX”はより過激な飛び道具系を内包する

 

●Wave Shifterが得意とするサウンドや、お勧めの使い方はありますか?

内藤 好みもあるかと思いますが、私の場合はFREQUENCYノブとFM変調のパラメーターを使って作る音が好きですね。例えばFREQUENCYのスピードを、0.2Hzのように極端に低い値にするとコーラスやフェイザー風の変調を生み出せます。また、左右に動かすことで金属的な響きになったり複雑な倍音を含んだ音色になったり、さまざまに変化し、それに合わせてカットオフ・フィルターやモジュレーションでリズムとシンクしたサウンドを作ることができたりもします。あらゆる変化を楽しむことができますね。

竹内 同種のマルチエフェクト・プラグインの場合、ワイドで派手な音になる傾向もありますが、Wave Shifterは良い意味でタイトな印象です。物足りなくもないし、使いづらさも感じないですね。あとはシンプルに音質も良いなと。派手なサウンドのEDM系や、ストイックなビート系のクリエイターにも向いていると思います。

内藤 Wave Shifterの一番面白いところは、リング・モジュレーションの変調をしていたら空間系エフェクトのようなサウンドになったり、逆に空間系の音を作ろうとしていたら飛び道具的なひずみになったりもする。自分が意図しないような変化を、パラメーターを動かしているうちに体感できます。先述の通り、これらの効果を得るには複数のプラグインを使う必要がありますが、Wave Shifterなら、それが一つで完結できる。パフォーマンス的な演出ができたり、その動きをDAWのオートメーションでも表現できます。そういう意味でもかゆいところに手が届くプラグインだと思います。

竹内 リング・モジュレーション機能があることが、数あるマルチエフェクト系プラグインの中でWave Shifterのアドバンテージになっていると感じています。また、マルチエフェクト・プラグインは基本的にパラメーターが多く、いじっているうちに“何がやりたかったんだっけ?”と迷子になることもありますが、Wave Shifterはその辺りも計算され、シンプルなユーザー・インターフェースになっているので使いやすいです。あとは、内藤さんがおっしゃっていたように、ある種の偶発性が得られるのも作り手にとっては刺激になる。使っていて楽しいプラグインです。

 

●シンプルな設計なので、直感的に触るのも楽しそうです。

竹内 マルチエフェクト系のプラグインをあまり触ったことがない方や、エレクトロニックなサウンド・デザインを初めて導入される方にもお薦めできます。もちろん、既にそういった曲作りを行っている方のワークフローの効率化にも良いと思います。

 

●MINIMAL AUDIOのトピックとして、バーチャル・インストゥルメントのCurrentがバージョン2.0にアップデートされ、Wave Shifterも統合されていますね。

八巻 EffectセクションへのWave Shifterの追加のほかに、PlayというGUIが追加されています。これまでCurrentは、Engine、Effect、Streamという3つのビューで構成されていて、Playでコントロールできるさまざまなパラメーターは先述した3つのタブの下部にあったのですが、Playビューとして独立し、デュアルX/Yパッドを使ってコントロールできるようになりました。これによってパフォーマンス性も向上しています。あとはMATRIXビューも加わったことで、シンセ作りの面で操作性が増しています。

竹内 Currentでは、クラウドのブラウザー上で新たなプリセット、サンプル、ウェーブテーブルを見つけられるStreamの機能がいいですね。MINIMAL AUDIOはアップデートも頻繁にしていて、常に新しいサウンドへと更新されている点にメリットを感じます。作りたいイメージに合ったサンプル・パックの設定を読み込んで、少しいじって音を作るという使い方も、今時の制作スタイルにフィットすると思います。

MINIMAL AUDIOのバーチャル・インストゥルメント・プラグインCurrent(33,000円)。5つのサウンド・エンジン、モジュレーション、MIDIエフェクトなど豊富な機能の組み合わせにより、独自のサウンドを生成することができる。画面はバージョン2.0へのアップデートで追加された“Play”ビュー。従来の3つのビュー(Engine、Effects、Stream)のタブの下にあったパラメーターを、画面中央の大きなデュアルX/Yパッドでコントロールできるようになった

MINIMAL AUDIOのバーチャル・インストゥルメント・プラグインCurrent(33,000円)。5つのサウンド・エンジン、モジュレーション、MIDIエフェクトなど豊富な機能の組み合わせにより、独自のサウンドを生成することができる。画面はバージョン2.0へのアップデートで追加された“Play”ビュー。従来の3つのビュー(Engine、Effects、Stream)のタブの下にあったパラメーターを、画面中央の大きなデュアルX/Yパッドでコントロールできるようになった

新しく追加されたモジュレーション・マトリックスのポップアップ・ビュー(黄枠)。モジュレーション・コントロール機能を搭載することで、シンセを構築する際の細かい調整が可能となった

新しく追加されたモジュレーション・マトリックスのポップアップ・ビュー(黄枠)。モジュレーション・コントロール機能を搭載することで、シンセを構築する際の細かい調整が可能となった

銀座十字屋 ディリゲント事業部の八巻光之丞氏
メディア・インテグレーションの竹内宗大氏
ライターの内藤朗氏
写真左から、銀座十字屋 ディリゲント事業部の八巻光之丞氏、メディア・インテグレーションの竹内宗大氏、ライターの内藤朗氏

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