FabFilter Pro-Q 4登場!進化したEQプラグインの新機能を徹底解説

FabFilter Pro-Q 4 〜Rock oN Monthly Recommend vol.78

 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回はFabFilterのEQプラグインの最新バージョン、Pro-Q 4を紹介する。DAWユーザーからプロのエンジニアにまで幅広く使用されているEQは、どのように進化を遂げているのか。代理店を務めるディリゲントの八巻光之丞氏と泉川学氏、Rock oNの多田純氏の話から解き明かしていこう。

Pro-Q 4

Pro-Q 4|通常版:33,000円、アップグレード版:14,850円、エデュケーション版:23,100円

Pro-Q 4|通常版:33,000円、アップグレード版:14,850円、エデュケーション版:23,100円

 2009年に最初のバージョンがリリースされて以来、世界中のエンジニアやプロデューサーから支持され続けているEQプラグイン“Pro-Q”シリーズの最新バージョン。視認性の高いスペクトラム・アナライザー、最大24バンドまで設定可能なEQポイント、M/SやL/Rでの処理、ダイナミックEQ機能、サラウンド・ミックスなど、前バージョンまでで備わっていた機能はそのままに、スペクトラル・ダイナミクス、インスタンス・リストなどの新たな機能が実装されている。


●まずFabFilterはどういったメーカーなのでしょうか?

八巻 オランダにあるプラグイン・メーカーで、2024年に創業20周年を迎えました。エフェクト・プラグインが有名ですが、最初にリリースされたのはインストゥルメントで、ソフト・シンセのOneです。Pro-Qシリーズは2009年に初代のPro-Qがリリースされ、高いクオリティが業界に浸透していき、Pro-Q 2、Pro-Q 3とバージョンを重ね、2024年の12月にPro Q 4が発売されました。

 

●Pro-Qシリーズが高い評価を受けている理由を詳しく教えてもらえますか?

八巻 エンジニアの方々の間で最も評判になったのは、視認性の高さですね。FabFilterのほかのプラグインもそうですが、視認性を第一に開発していて、“音を目で見て触れる”というところが評価されています。またナチュラルで色付けが少ないサウンドなのも支持されているポイントです。さらにそれらとは別に広く知られるようになったきっかけとして、2020年のコロナ禍で配信を行う方が増えたことがあります。“配信ソフトのOBS StudioにVSTプラグインとしてPro-Q 3を挿すと音が良くなる”と話題になったんです。音楽制作者ではない方の間でも“音を調整するならPro-Q 3だよね”と評判になり、幅広い層に浸透していきました。

多田 おっしゃる通り、最近だと配信系の用途も増えていますね。実は私もユーザーですし、Rock oNのスタッフにもユーザーは多いです。動作が軽く、ほかのEQよりもかかり方がすごく自然だし、あとはやっぱり視認性ですよね。“ここの帯域が飛び出てしまっているからカットしないといけない”というのがとても分かりやすい。ダイナミックEQも搭載していたりと、1つのプラグインでいろいろな処理ができるのは本当に手軽で便利だと思います。

 

●Pro-Q 3のリリースが2019年なので、約5年を経てのアップデートですね。

八巻 Pro-Q 4をどういうものにするかという方向性は彼らの中にもちろんあったでしょうし、世界中からフィードバックを受けている。そういったさまざまな意見も開発の中で取り入れているとは聞いています。

 

●それではここから、Pro-Q 4になって実装された新機能を中心に話を伺っていきます。まず、ダイナミックEQの発展系という“Spectral Dynamics(スペクトラル・ダイナミクス)”とは、どのような機能なのでしょうか?

八巻 Pro-Q 3からダイナミックEQが搭載されまして、その機能追加という形で搭載されました。指定した周波数帯域の範囲内において、スレッショルドを超えた個別の周波数をオートで抑えたり、逆に持ち上げたりすることができるというものです。

Spectral Dynamicsは、指定した帯域の範囲全体のゲインを変更せず、スレッショルドを超えるとその帯域内の特定の周波数の処理を行う機能。画面上は緑色の選択範囲に対して、黄色のラインがリダクションされている周波数となっている

Spectral Dynamicsは、指定した帯域の範囲全体のゲインを変更せず、スレッショルドを超えるとその帯域内の特定の周波数の処理を行う機能。画面上は緑色の選択範囲に対して、黄色のラインがリダクションされている周波数となっている

●指定した帯域内において、従来のダイナミックEQよりもさらに細かな処理が行われるようなイメージでしょうか?

八巻 そうですね。特に倍音の処理に向いていると思っています。例えばボーカルの5kHz辺りの倍音を抑えたいときに、発音しているピッチに追従した倍音がリダクションされるので、より自然で音楽的な処理ができるというのが特長です。Qを絞ればピンポイントに処理することもできます。飛び出しているポイントが目で見て分かるので、手動で探さなくて済むようになったのも便利な点です。

多田 ピークを処理したいけれども自分ではなかなか判断できないという場合に、とりあえずQを広くかけてみて飛び出しているポイントを視覚的に確認できるのはすごくいいですね。それこそ配信でかけっぱなしにしておけば、急に大きな声を出した場合でも抑えてくれるので、リアルタイムでの処理にも役立ってくれそうです。

 

●続いて、“Instance List(インスタンス・リスト)”について伺えますか?

泉川 Pro-Q 4を挿しているトラックのEQカーブ、スペクトラム・アナライザーを1つの画面で一覧表示できるようになりました。Instance List上でもEQ調整可能ですし、Pro-Q 3からトラック間で重なっている周波数帯域を赤く表示するマスキング機能が追加されましたが、マスキングも一覧表示から確認できるようになっています。基準のトラックに対して、マスキングが発生している複数のトラックを1つの画面で同時に見ることが可能です。以前は一つ一つトラックを切り替えながら確認していたので、とても楽になりましたね。

多田 僕の中では一番目玉と言える新機能です。ピッチ補正ではトラックを一覧で表示できるものもありますが、EQで同じようにできるものは珍しいと思います。

八巻 EQプラグインですがシンプルにスペクトラム・アナライザーとして活用する方も結構いて、各トラックのアナライザーを一度に表示できるというのもあまりなかったかなと。トラック管理という面でも実用的です。

Pro-Q 4を挿しているトラックのEQカーブを一つの画面上に表示するInstance List。この画面上でもEQ調整が可能となっている。また基準となるトラックを選択すると、ほかのトラックのマスキングが発生している周波数帯域がスペクトラム・アナライザー上に赤く表示される

Pro-Q 4を挿しているトラックのEQカーブを一つの画面上に表示するInstance List。この画面上でもEQ調整が可能となっている。また基準となるトラックを選択すると、ほかのトラックのマスキングが発生している周波数帯域がスペクトラム・アナライザー上に赤く表示される

●EQカーブを線で描写できる“EQ Sketch(EQスケッチ)”も、ほかにありそうでなかった機能かと思います。

八巻 最初にこういうEQにしたいというのを、おおまかにマウスで描いて具現化できる機能です。まさにスケッチとして下書きをして、そこから細かく調整していくのが主な使い方になっています。またローカットを入れる際、ポイントを指定してカーブを選んで……という手間を省くこともできます。先ほど紹介したInstance Listの画面内でもスケッチを描くことができます。

多田 描いたEQカーブは保存できるんですか?

八巻 はい。プリセットとして登録可能です。

 

●サウンド・キャラクターが変更できるCharacter Modes(キャラクター・モード)も搭載されました。

泉川 ひずみを加えるエフェクトです。デフォルトではCleanですが、Subtle、Warmの2種類があって、従来のPro-Qとは違ったサウンド・キャラクターを加えられます。

八巻 EQカーブの設定に左右されずにひずみがかかる。シンプルで使いやすい機能です。

多田 ほかにサチュレーションを挿さなくても、Pro-Q 4の中で完結できるのはいいですね。

画面右下のアイコン(赤枠)からサチュレーションを付加するCharacter Modesを設定できる。CleanはこれまでのPro-Qシリーズらしい透明感のあるサウンド、Subtleはビンテージ・タイプ、Warmは真空管タイプと、それぞれ異なるキャラクターを付与する

画面右下のアイコン(赤枠)からサチュレーションを付加するCharacter Modesを設定できる。CleanはこれまでのPro-Qシリーズらしい透明感のあるサウンド、Subtleはビンテージ・タイプ、Warmは真空管タイプと、それぞれ異なるキャラクターを付与する

●ほかにはどのような新機能がありますか?

泉川 ローカットやハイカットのスロープの値を、これまでは固定の値から選ぶ形でしたが、0.1dB/oct単位で調整できるようになりました。shiftキーを押してドラッグするだけで簡単に数値を変えられます。

八巻 先にSpectral Dynamicsを紹介しましたが、ダイナミックEQ自体も進化していて、アタックやリリースのパラメーターが追加されました。また“フリーサイドチェインフィルタリング”という新機能もあります。これはトラック内で指定したEQポイントをトリガーにして、別の指定したポイントをサイドチェインできるというものです。例えばミックス・バスでスネアが鳴っている帯域をトリガーにして、ボーカルの2kHz辺りをカット、またはブーストできたりします。マスタリングなどでも活躍してくれる機能となっています。

ローカットやハイカットの減衰傾度の値は、6、12、18などの固定値だけでなく0.1単位での調整も可能。赤枠の数値に合わせてShiftキーを押しながら上下にドラッグすれば数値を変更できる

ローカットやハイカットの減衰傾度の値は、6、12、18などの固定値だけでなく0.1単位での調整も可能。赤枠の数値に合わせてShiftキーを押しながら上下にドラッグすれば数値を変更できる

●新機能は総じてワークフローが速くなり、想像力がかき立てられるものに感じました。どういったユーザーにお薦めでしょうか?

多田 昨今のプラグインとしても時短はトレンドですし、“パッと仕上げて早く寝ましょう”と言えるくらいサクサク進められます。基本的な機能はそのままなので、これまでのPro-Qユーザーは変わらず扱えるし、音を聴かなくても調整できると言ったら語弊がありますが(笑)、それくらい分かりやすい仕様なので新しいユーザーにも使ってみてほしい。EQのかかり具合がとても自然な点も強調しておきたいです。

八巻 アップデートでよくあるのが、ボタンの位置が変わったりして、前のバージョンのほうが良かったという意見が出てくること。基本的にそういった心配はないので安心してください。DAW付属EQから次のステップとしてぜひ使ってみてほしいですね。音楽制作を志す学生の方やアカデミックに音を研究している先生のためにも有益なプラグインだと考えていて、エデュケーション版も用意しています。

泉川 Pro-Q 4さえあればいいというくらい万能です。個人的には王道のEQプラグインだと思っています。

 

ディリゲントの八巻光之丞氏
泉川学氏
Rock oNの多田純氏
インタビューに答えてくれた方々。左から、ディリゲントの八巻光之丞氏、泉川学氏、Rock oNの多田純氏

Rock oN NEWS

 Rock oN渋谷店&梅田店でご試聴をご希望の際は、各店舗までお電話いただくか、予約ページへアクセスし、お申し込みください。

Rock oN Shibuya:☎︎03-3477-1756 営業時間12:00-19:00(日曜日臨時定休)
Rock oN Umeda:☎︎06-6131-3077 営業時間12:00-19:00(定休日:日曜日)
※営業時間及び営業日は変更になる場合がございます

製品情報

関連記事