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IK MULTIMEDIA iLoud Micro Monitor Pro 〜Rock oN Monthly Recommend vol.75

IK MULTIMEDIA iLoud Micro Monitor Pro 〜Rock oN Monthly Recommend vol.75

 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回はIK MULTIMEDIAが新たに発売したコンパクト・モニター・スピーカーのiLoud Micro Monitor Proについて、同社CTOのダビデ・バルビ氏とプロダクト・マネージャーのロレンツォ・イオリ氏、ROCK ON PROの清水修平氏に話を聞く。

Photo:Yusuke Kitamura(メインカット)

iLoud Micro Monitor Pro

96,800円(ペア+ARC MEMSマイク)、48,400円(1本)

iLoud Micro Monitor Pro

 1インチ・ツィーターと3インチ・ウーファーを備えた、2ウェイ・バイアンプのモニター・スピーカー。1本あたり106(W)×206(H)×158(D)mm、1.37kgと小型・軽量ながら、搭載されたDSPによる信号処理や筐体設計により、スタジオ・クオリティのサウンドを再生可能。音響補正機能のARCに対応し、接続したARC MEMSマイクで4ポイントまたは1ポイントを測定することにより、使用環境に合わせたDSP処理でフラットな特性へと補正を行える。

背面には、ボリューム・コントロール、XLR入力端子、RCA入力端子のほか、音響補正用ボタン(MODE/HF/LF/LF EXT)、USB接続端子、電源ボタン、電源アダプター端子を備える

背面には、ボリューム・コントロール、XLR入力端子、RCA入力端子のほか、音響補正用ボタン(MODE/HF/LF/LF EXT)、USB接続端子、電源ボタン、電源アダプター端子を備える

●2016年に発売されたiLoud Micro Monitorは、多くのクリエイターやエンジニアに支持されてきました。まずは当時の開発コンセプトについて教えてください。

バルビ “iLoud”という名称のプロダクトは、ポータブル・ステレオ・スピーカーとして2013年に登場しました。当時、あのサイズ感で音の信頼性が高いスピーカーはほかになく、“市場に存在しないなら自分たちで作ろう”と開発をスタートしたんです。また、そのころはiRigなどのモバイルをコンセプトにした製品を多く製作していたという理由もありますね。その初代iLoudはかなり小さなスピーカーであるにもかかわらず、プロがスタジオでサブ・モニターとして使っているケースも見受けられました。それであればより本格的なモデルを作ろうとしたことがiLoud Micro Monitorの開発動機となったんです。

 

●iLoud Micro Monitorは小さい口径のスピーカーながら豊かな響きを持ち、それがプロにも評価された理由の1つだと思います。そのサウンドを生み出す秘密は何なのでしょうか?

バルビ 我々は長年にわたってプラグインなどのデジタル・オーディオ製品を開発してきました。そうして蓄積された技術がiLoud Micro Monitorを形作ったと思っています。AmpliTubeやT-RackSなどの開発でハードウェアをシミュレートする研究を行っているわけですが、そこで培ったデジタル信号処理技術をうまく使うことで、小さいサイズでも豊かなサウンドを生むスピーカーを作ることができたんです。

清水 最初にiLoud Micro Monitorが登場したとき、その音像の大きさには驚きました。低域の表現はもちろん、音のクリアさも持っているんです。だからこそ、さまざまなプロがサブモニターとして利用するようになり、こんなに定着したアイテムはほかにないんじゃないかというくらいヒットしたスピーカーだと感じていますね。

 

●日本の住環境もiLoud Micro Monitorが評価された理由につながっていそうです。

清水 そうですね。お客様からは“小さいスピーカーがいいけど、しっかり低域まで聴こえてほしい”という、なかなか難しい要望をいただくことも多くて。iLoud Micro Monitorはその気持ちに応えてくれるモニター・スピーカーになっているからこそ、幅広く受け入れられたのだと思います。

バルビ 音のクリアさについては、タイム・アラインメントが大きく関係しています。ツィーターとウーファーは、そのままではツィーターの音が先に耳へ届き、遅れてウーファーの音が伝わるので、それが音の濁りにつながるのです。私はハイファイ・オーディオ・マニアでもあるのですが、ハイエンドなスピーカーではその問題を解決するために、ツィーターは少し奥まった位置に組まれていることがあります。しかし、iLoud Micro Monitorのサイズではその設計が難しいので、デジタル上でツィーターとウーファーの音の到達速度をコントロールしました。加えて、クロスオーバーの設定、曲面を描いた筐体の設計もこだわることで、クリアなサウンドを生み出しているのです。

 

●今回iLoud Micro Monitor Proが登場したわけですが、iLoud Micro Monitor 2としてではなく、新しいラインナップとして加えた理由はなぜでしょうか?

イオリ よりプロの方に使ってもらえるスペックを持ったスピーカーが必要だと考え、別のラインナップとして加えたんです。“そこまでの性能は必要ない”“もう少し安く手に入れたい”というユーザーのためにも、iLoud Micro Monitorは継続して発売します。

 

●プロに向けたスペックとはどのようなものになっているのでしょうか?

イオリ インプットがXLR端子になっていたり、L/Rをリンクするのではなく個別に入力するようになりました。これは、イマーシブ・オーディオ制作をする人にとっては1つずつ独立した入力があったほうが便利なためです。また、iLoud MTMなどに搭載されている音響補正テクノロジーのARCに対応したことも特筆すべきポイントでしょう。プロだけでなく、制作環境がしっかりと整っていないアマチュアの方にとっても役立つ機能です。

 

●ウーファー径はiLoud Micro Monitorと同じ3インチですが、ツィーターのサイズは3/4インチから1インチへと大きくなっていますね。

バルビ ウーファーのサイズは一緒ですが、ドライバー自体は進化しており、より大きな振幅を得られて豊かな低域が出せるようになっています。ツィーターは1インチと大きくなったことで、担える周波数帯域が広がりました。クロスオーバーのポイントが下がることでスウィート・スポットが拡大され、部屋の影響を受けにくくなるんです。もちろんARCによる補正が可能ですが、やはり部屋からの影響が少ないことに越したことはないですよね。iLoud Micro Monitor Proは、固定された位置で聴き続けるというよりも、比較的自由に動きながら制作するようなシーンでの利用が多いと思われるので、スウィート・スポットの拡大はテーマの1つでした。

 

●ほかにもハードウェア面の進化はありますか?

バルビ パワー・アンプは圧倒的に改善されています。パワーが向上しただけでなく、デジタル・アンプになったことでA/Dコンバーターを通ってDSP処理されたあと、デジタル信号のままアンプへと音が送られます。余分なD/Aが行われないため、DSP処理が意図したまま表現され、ノイズ・フロアも低くクリアな音を届けることができているんです。

清水 実際にiLoud Micro Monitor Proを聴いてみたところ、よりスタジオ・モニターとしての音に進化したと感じました。iLoud Micro Monitorは、どちらかというとサブモニターとして活用している方が多い印象で、小さいフィールドで全体を俯瞰できるという良さがあると思います。iLoud Micro Monitor Proはスピーカーの小ささを感じさせず、目を閉じると大きなスピーカーが鳴っているようにも感じるんです。この音像を表現できることに一番驚きました。

イオリ “箱の小ささを感じさせない響き”というコメントをいただけて、開発者として冥利に尽きます。そこは我々としても目指したポイントなんです。スピーカーの開発というのは物理法則との戦いであり、筐体が小さいほどチャレンジしなければいけない点が多くなります。iLoud Micro Monitorから少しだけサイズは大きくなっていますが、それでもこのサイズ感を超えた響きを生み出せたのは、長年のスピーカー開発の賜物です。

清水 サイズが大きくなったのは、改良したパワー・アンプなどのパーツのためでしょうか?

イオリ パーツ・サイズのせいということではなく、これも物理法則のためなんです。低域の再生能力は−2dBで50Hz、−10dBで42HzとiLoud Micro Monitorよりも拡張されており、この低域を出すための最低限のサイズとして少し筐体を大きくしました。

清水 サブベースの帯域の信号を出す際、iLoud Micro Monitorでは“バフッ”とバスレフ・ポートが鳴っている印象があったんですが、iLoud Micro Monitor Proではそういったことがなくなり、計算し尽くされて設計していると感じていました。その話を聞けて納得しましたね。

 

●ソフトウェア部分についても教えてください。先述のとおりARCによる補正に対応し、X-Monitorソフトウェアを使った詳細なコントロールも実現していますね。

イオリ 本体のリア側にあるボタンでもARCのキャリブレーションや高域/低域の調整などが行えますが、それらをリモートでできるだけでなく、さらなる詳細なコントロールがX-Monitorソフトウェアで可能となります。ちなみに、本体リア側のボタンでのキャリブレーションは1ポイント、X-Monitorでのキャリブレーションは4ポイントの計測です。最初はどちらも4ポイントにする予定でしたが、移動先のホテルでの作業だったり、エンジニアが限られた時間の中でセッティングするような場合に素早くキャリブレーションできるよう、1ポイントでも計測可能にしました。

清水 X-Monitorでは、有名なモニター・スピーカーやテレビ、スマートフォンのスピーカーの音をシミュレートできるVoice機能があるのも便利です。このサイズでさまざまな口径のスピーカーを聴き比べられるなんて製品はほかにありませんし、これも日本のユーザーにはハマる機能になっていると思います。

iLoud Micro Monitor Pro/iLoud Precision/iLoud MTM MKII用のコントロール・アプリケーション、X-Monitor(Mac/Windows対応)。スピーカーとコンピューターをUSB接続するだけで使用でき、ARCキャリブレーションのほか、著名なスピーカーの音をシミュレートするVoice、独自の周波数レスポンス・カーブを作成できるContourといった機能を設定可能だ。スピーカー本体のファームウェア・アップデートもX-Monitorで行える。

iLoud Micro Monitor Pro/iLoud Precision/iLoud MTM MKII用のコントロール・アプリケーション、X-Monitor(Mac/Windows対応)。スピーカーとコンピューターをUSB接続するだけで使用でき、ARCキャリブレーションのほか、著名なスピーカーの音をシミュレートするVoice、独自の周波数レスポンス・カーブを作成できるContourといった機能を設定可能だ。スピーカー本体のファームウェア・アップデートもX-Monitorで行える。

X-Monitorを使ったARCキャリブレーションでは、音響補正の手順を視覚的にサポートしてくれる。また、X-Monitorで補正前後の特性カーブを視覚的に確認でき、補正のオン/オフで聴き比べることも可能だ

X-Monitorを使ったARCキャリブレーションでは、音響補正の手順を視覚的にサポートしてくれる。また、X-Monitorで補正前後の特性カーブを視覚的に確認でき、補正のオン/オフで聴き比べることも可能だ

 

●IK MULTIMEDIAのスピーカーのラインナップが多くなってきましたが、それぞれどのようなユーザーにお薦めできるでしょうか?

バルビ 基本的には作業スペースに合わせて選んでいただくとよいと思います。デスクや部屋の広さが限られていて、壁と近い位置に設置しなければいけないような場合、iLoud Micro Monitorはベストな選択肢でしょう。ARCによるキャリブレーション効果も実感いただけると思います。iLoud MTM MKIIは少し大きめの部屋で、レコーディングやミキシングのための余裕がある場合に最適なモデルです。プロの環境であればiLoud Precisionがメイン・スピーカーとして活躍してくれます。

清水 iLoud Micro Monitor Proは、僕の感覚としては1mほどの距離感で使うモニター・スピーカーとしてベストだと感じています。そうすると、大きなサイズのスピーカーを適切な距離で聴けている感覚を得られるんです。もう少し離して設置するような環境であれば、iLoud MTM MKIIのほうが良いかもしれません。

バルビ おっしゃるとおり、スピーカーの設置位置はとても重要です。使用環境やレイアウトも考慮して、iLoudシリーズを検討いただければと思います。


左から、ROCK ON PROの清水修平氏、IK MULTIMEDIA CTOのダビデ・バルビ氏、プロダクト・マネージャーのロレンツォ・イオリ氏

左から、ROCK ON PROの清水修平氏、IK MULTIMEDIA CTOのダビデ・バルビ氏、プロダクト・マネージャーのロレンツォ・イオリ氏

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