OEKSOUND Bloom 〜Rock oN Monthly Recommend vol.72

OEKSOUND Bloom 〜Rock oN Monthly Recommend vol.72

 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞くRock oN Monthly Recommend。今回はOEKSOUND Bloomについて、代理店を務めるクリプトン・フューチャー・メディアSONICWIREチームの岩出龍馬氏と、メディア・インテグレーションの伊部友博氏に話を聞いた。

OEKSOUND Bloom

36,000円前後(為替によって変動)

●OEKSOUNDはどのようなメーカーなのでしょうか?

岩出 他社とは違った形でミックスの問題点にアプローチするプラグインを開発している、インパクトの強いディベロッパーです。これまでに、トランジェント・ツールのSpiffとレゾナンス・サプレッサー&ディエッサーのSoothe2をリリースしており、どちらも人間の手ではできないような調整を簡単な操作で行えるという、革新的なプラグインになっています。

伊部 OEKSOUNDのプラグインはサウンドがとてもクリアなのが特徴です。ミックスで必要な調整を透明度高くしっかりと行ってくれるので、音のバランスが崩れるようなことがありません。エンジニアの方々から好評なのも納得です。

トランジェント・ツールのSpiff。EQのようにカーブを作り、帯域ごとにトランジェントをコントロールすることが可能だ

トランジェント・ツールのSpiff。EQのようにカーブを作り、帯域ごとにトランジェントをコントロールすることが可能だ

レゾナンス・サプレッサー/ディエッサーのSoothe2。Spiffと同じく、EQライクな操作で帯域ごとの効果のかかり具合を調整できる

レゾナンス・サプレッサー/ディエッサーのSoothe2。Spiffと同じく、EQライクな操作で帯域ごとの効果のかかり具合を調整できる

●操作性も新しさがありますよね。EQのような画面でトランジェントやレゾナンスのコントロールができることに驚きました。

岩出 今までにありそうでなかったユーザー・インターフェースですよね。必要なパラメーターが一画面にまとまっているのも分かりやすさにつながっています。

伊部 画面がすごく軽量に動いてくれて、その見た目のシャープさと音のクリアさ、シンプルな操作性がとても現代的な印象を作り出しています。

 

●そんなSpiffとSoothe2の流れを汲んで新たにリリースされたのがBloomです。“適応型トーン・シェイパー”と謳っていますが、具体的にはどのような処理を行えるプラグインになっているのでしょうか?

岩出 実際に動いている画面を見ていただくと分かると思いますが、持ち上げた帯域がそのまま上がるというEQ的な動作ではなく、ソースやサウンドを聴く人間の耳に合わせて処理が行われます。アップワードとダウンワード・コンプを組み合わせたようなダイナミックEQというイメージでしょうか。

伊部 4つの帯域の調整量をコントロールできるスライダーがあり、それらを使ってパライコ的に扱えるのですが、上げ下げしていても音が破綻することがありません。岩出さんに聞いたところ、等ラウドネス曲線も考慮してトーン・シェイピングがされているそうで、そこもポイントだなと思いました。プラグインが人間側に判断を委ねるわけでなく、“人間の耳にはこう聴こえる”という体感部分も把握したものになっているので、“単純に低域を持ち上げるのではなく、高域へアプローチして低域を聴かせる”ようなことがBloomで行われるんです。

岩出 極端な例ですが、キックの余韻部分にある100Hz辺りをぐっと上げてみたとしても、通常のEQのような処理にはならず、キック自体の存在感が自然に出てくるんです。そういった処理結果が得られるのは、等ラウドネス曲線を考慮したプログラミングがされているゆえだと思います。

 

●実際の使い方ですが、amountを上げていくだけでトーン・シェイピングが行われるのですか?

岩出 はい。“ここは出すぎているから抑えて、この帯域はもう少し持ち上げよう”と、ソースに合わせてBloomが判断して調整します。どの帯域が上げ下げされているのかは、画面右下のアナライザー部分で確認可能です。そこから、自分の好みに合わせて4つのスライダーで帯域ごとの調整量をコントロールできます。

amountはBloomのトーン・シェイピングの反映量をコントロールするパラメーター。数値が7.1以上になるとsquashという機能がオンになり、マルチバンド・コンプのような効果を得られる。アタックとリリース・タイムも設定可能だ。4つのスライダーでは、帯域ごとのトーン・シェイピング効果を増減でき、音作りを追い込める。この画面はM/S処理ができるM/S splitというモードを選択した状態で、各スライダーのハンドルがMとSに分かれ、同一スライダー上でミッドとサイドのトーン・シェイピング効果を個別にコントロールできるようになっている

amountはBloomのトーン・シェイピングの反映量をコントロールするパラメーター。数値が7.1以上になるとsquashという機能がオンになり、マルチバンド・コンプのような効果を得られる。アタックとリリース・タイムも設定可能だ。4つのスライダーでは、帯域ごとのトーン・シェイピング効果を増減でき、音作りを追い込める。この画面はM/S処理ができるM/S splitというモードを選択した状態で、各スライダーのハンドルがMとSに分かれ、同一スライダー上でミッドとサイドのトーン・シェイピング効果を個別にコントロールできるようになっている

●“ソースに合わせて処理”というと、AI機能を想像してしまいますが、BloomはAIを搭載しているわけではないのですか?

岩出 そうなんです。AIを使用したプラグインだと、使用対象が限られてくるという側面があります。AIは学習結果を元に処理を加えていくので、結果がどれも近しいものになりがちだったりするんです。また、学習したものと使用するソースが乖離していると、思うような結果が得られないこともあります。一方、Bloomは人の耳でどう捉えられるのかを重視した処理なので、ソースを選ばずに良好な結果を得ることができるんです。

 

●4つのスライダーでは周波数帯域と調整量がコントロールできますが、この調整量で表示される数値の単位はdBではないようですね。

岩出 dBではなくトーン・シェイピングへの反映量の参考値という程度のものでして、上げ下げすれば選択された帯域への効果が増減しますが、もちろんソースに合わせてBloomが自動で調整するようになっています。音楽ジャンルや使うソースによって出したい/引きたい帯域は変わると思うので、そこまで追い込んでいける機能も有しているんです。

 

●このスライダーは、XYパッドのように周波数帯域と調整量を同時にコントロールできます。明快な操作性で優れたデザインになっていると感じました。

伊部 Bloomはステレオ・リンクとL/Rスプリット、M/Sスプリットのモードを備えていて、例えばM/Sを選ぶと、同じスライダー内にミッドとサイドの2つのハンドルが表示され、それぞれをコントロールできます。複雑なM/S処理を視覚的にとても分かりやすく行えるのも魅力的です。

 

●トーン・シェイピングされる範囲も、EQのようにコントロールできるようですね。

岩出 画面右下のアナライザー画面で範囲を決めることができ、処理対象を設定範囲の内側/外側で選ぶことも可能です。ローパス/ハイパス・フィルターを設定することもできて、細かいところまで手が届く機能になっています。

アナライザーの画面では、左右にあるハンドルを移動させてトーン・シェイピング効果の範囲を設定可能。範囲の内側/外側のどちらに効果を付加するのかも選択できる。また、左右の隅にあるマークを動かして、ローパス/ハイパス・フィルターを使うことも可能だ

アナライザーの画面では、左右にあるハンドルを移動させてトーン・シェイピング効果の範囲を設定可能。範囲の内側/外側のどちらに効果を付加するのかも選択できる。また、左右の隅にあるマークを動かして、ローパス/ハイパス・フィルターを使うことも可能だ

●amountにはsquashと書かれた範囲がありますが、これはどういう効果を得られるのですか?

岩出 squashはいわゆるコンプレッションで、amountを7.1以上にするとオンになります。こちらも、人間の聴覚に合わせて動作する、マルチバンド・コンプ的な処理です。

 

●4つのスライダーはsquashにも影響するのですか?

岩出 いえ、スライダーはあくまでトーン・シェイピングへ反映されるものです。squashはamountの下にあるattackとreleaseのほか、画面下にあるsqaush calでは、インプット・ゲインを調整することでスレッショルド的な動作をコントロールでき、mixでドライ/ウェット・バランスも変更できます。

伊部 処理したサウンドをmixで原音にうっすらと重ねることができ、パラレル・コンプやパラレルEQのような使い方が可能です。“アタック部分だけ少し強調したい”というような細かな音作りにも対応できる、気の効いた機能ですね。

 

●スマートな機能と操作性を兼ね備えたBloomは、使うユーザーや音楽ジャンルを選ばないプラグインだと思いますが、特にどういった方に、どんな使い方でお薦めしたいですか?

岩出 手軽に音のバランスを整えられるツールとして、トラック/バス/マスター問わず活用いただけると思うので、まだエフェクトに慣れていないけどミックスに興味を持ちはじめたというビギナーの方にも試していただきたいです。また個人的に便利だと感じたのは、プロジェクトは残っていないけれど2ミックスだけあるという昔の楽曲も、リマスターのような感じで調整が行えることですね。そんな使い方もできる汎用性の高いツールになっています。

伊部 Bloomはプリセットが充実していることも特徴で、その使い勝手もすごく良いんです。“何か物足りない”“パワーが欲しい”などと感じた際、まずBloomを挿してみてほしいですね。最近のプラグイン音源はとても質が良いのですが、それらを幾つも混ぜたときにマスキングなどの問題が起こってしまいます。そういう部分をクリアしたい人はぜひBloomを導入してみてほしいです。


クリプトン・フューチャー・メディアSONICWIREチームの岩出龍馬氏(写真左)と、メディア・インテグレーションの伊部友博氏。Rock oN Company公式YouTubeチャンネルでは、2人がBloomを紹介するインタビュー動画が公開されている。

クリプトン・フューチャー・メディアSONICWIREチームの岩出龍馬氏(写真左)と、メディア・インテグレーションの伊部友博氏。Rock oN Company公式YouTubeチャンネルでは、2人がBloomを紹介するインタビュー動画が公開されている。

Bloomを紹介するインタビュー動画が公開中!

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