上位モデルAUDEZE MM-500と同様に、グラミーを18回受賞したエンジニア、マニー・マロクィン全面監修のもと開発された平面駆動型ヘッドホンAUDEZE MM-100。既にMM-500を愛用しているエンジニア檜谷瞬六と佐々木優に、その実力を評価してもらった。
MM-100の方が少しだけ音が近い
——MM-100の上位モデル=MM-500を導入したきっかけは?
檜谷 まず、ハイエンドのヘッドホンを導入してみようと思い、気に入って購入したのが密閉型のAUDEZE LCD-XCでした。それを長く使用していたのですが、よりフラットな音色のヘッドホンがいいなと思っているところにMM-500がリリースされ試聴したところ、自分の求めているものにとても近いと感じ導入しました。昔は開放型のヘッドホンだと音が散りすぎてミックスの判断がつかない気がしていたのですが、MM-500にはその違和感がなく、スムーズに移行することができました。
佐々木 僕は当時勤めていたスタジオを辞めて、自宅でミックスする機会が増えて。本来ならスピーカーで判断するレンジ感をヘッドホンで確認するために、高価格帯のヘッドホンを導入しようと思ったんです。いろいろ試した中でMM-500が一番フラットに感じて導入しました。
——MM-100を試聴して、第一印象は?
佐々木 MM-500と比較して、やっぱりどちらもマニー・マロクィンがチューニングしているだけあって、周波数特性の印象がかなり近いなと思いました。
檜谷 見た目はMM-500とほとんど一緒ですよね。ヘッドバンドは、穴をネジに差し込んで長さを3段階で調整するタイプに変わっており、装着感は少し違いますが劣るとは感じません。音もMM-500をかなり踏襲していて、兄弟ヘッドホンと言えそうです。MM-500のほうがやや広がり、奥行きを感じ、MM-100のほうが音が近く聴こえます。こちらのほうがミックスしやすいという人もいそうですね。
佐々木 この価格帯のヘッドホンの中では、かなり音像が広いです。僕は普段自宅でミックスをする際に、MM-500をラージ・スピーカー的な役割で、他社の中価格帯のヘッドホンをニアフィールド・スピーカー的な役割で使っているのですが、MM-100はMM-500のフラットさを受け継ぎながらも少しニアフィールド的な要素もあり、一般の方が聴いている音に近く、それがミックスの仕上がりに良い影響を与えることがあると思います。
左右に差し替えられるケーブルが便利
——そのほかMM-100の音に感じる特徴を教えてください。
檜谷 MM-500はケーブルが左右で独立しているためL/Rの分離が良い一方、MM-100は左右の音像が少し交ざり合う感じがあります。MM-100はMM-500に比べて長年スタンダードとして使われてきたようなヘッドホンに近い感じがするので、こちらの方がイメージがつかみやすいという人もいるかもしれません。単にMM-500を手頃な価格に落とし込んだヘッドホンということではなくて、MM-100にはMM-100の良さがありそうです。
佐々木 片出しケーブルを左右どちらにでも挿し変えられるというのも便利ですよね。
檜谷 便利ですね。スタジオでヘッドホンのケーブルに手や足を引っかけて落としてしまうという事態は結構多発するんですよ。キーボードを弾く際などに邪魔にならないようにできるのもいいですね。
——どんな方にお薦めでしょうか?
佐々木 ミックスにはもちろん、ミュージシャンが制作に使うのもいいと思います。最近の低音をしっかり出す音楽にも向いているのではないでしょうか。若手で、本気で音楽で頑張っていこうとしている方にはぜひ買ってほしいです。この価格帯ではトップクラスに入るヘッドホンだと思いますね。
檜谷 音の存在感があるから、イマジネーションが湧きやすいと思います。フラットなので、音色選びにヘッドホンがバイアスをかけることも少ないと思いますね。もちろんエンジニアにもお薦め。最前線で活躍しているプロの方も実用できるし、AUDEZEの音が好きだけど、今までちょっと手が届かなかったという方にも手に取ってほしいです。もっと高価な製品と戦える、コストパフォーマンスに優れたヘッドホンだと思います。
檜谷瞬六
【Profile】prime sound studio formやstudio MSR を経て、フリーランスで活動するレコーディング/ミキシング・エンジニア。ジャズを中心にアコースティック録音の名手として知られる。
佐々木優
【Profile】NK SOUND TOKYO、Studio Tantaの所属を経て、2021年よりフリーランスのレコーディング/ミ キシング・エンジニアとして活動。BREIMEN、millennium parade、大橋トリオなどの作品に参加。
AUDEZE MM-100
■形式:開放型 ■ドライバー方式:平面磁界駆動型 ■マグネット:ネオジムN50 ■感度:100dB/1mW ■最大SPL:120dB 以上 ■インピーダンス:18Ω ■重量:475g(本体のみ) ■付属品:ケーブル(ステレオフォーンーステレオミニ)、標準変換プラグ(ステレオフォーン→ステレオミニ)、ソフトケース
AUDEZEクオリティのサウンドを、より身近にするため開発された平面駆動型のヘッドホン。上位モデルMM-500と同様に、グラミーを18回受賞したエンジニア、マニー・マロクィンが監修している。高精度&超低ひずみを実現し、アーティストが意図したサウンドを忠実に再現するという。カリフォルニア南部にあるワークショップで1台ずつ手作業で組み立てられ、軽量でありながら高級感のある筐体に仕上がっている。
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