何か1本マイクを持つとしたら迷わずお薦めできる。それだけ信頼感のあるマイクです
オーストリアのウィーンで誕生したAKG。スタジオ用のマイクやモニター・ヘッドホンなどで知られ、伝説的な機種から現行の製品まで、幅広くプロに活用されている。この連載では現行の製品にフォーカスし、あらためて魅力を探る。第2回は、青葉台スタジオ所属のエンジニア、中村美幸にコンデンサー・マイクのC414 XLIIとC314を試してもらい、その印象を伺った。
Overview|AKG C414 XLII & C314
C414 XLII:AKGが誇るC414シリーズの最新モデル。指向性は9種類、PADは6dB単位で4段階調節可能。サスペンション付きホルダーやウインド・スクリーンなどが付属する。
C314:C414 XLSと同じダイアフラムを採用。指向性は単一/超単一/無/双指向性の4種類を選択でき、PADは0/−20dBの2段階となっている。ステレオ・セットも用意する。
C314はビンテージ風でまろやか
今回は実際のレコーディングで語り(声)、歌、ギター・アンプ、コンガなどのパーカッションを録ってみました。C414 XLIIは青葉台スタジオも所有しているマイクなので、何度も使ったことがあります。C314を使うのは初めてでしたが、C414 XLSとダイアフラムが同じということで似た傾向のサウンドではありつつも、結構異なるところもありました。
まず声の録音では、C414 XLII、C314ともに声の聴き取りやすい成分をシャープに録れて、輪郭が分かりやすいという印象でした。C414EB、C414B-ULSといった往年のシリーズ機と比べて、どんどんクリアになってきているように思います。
ただ、歌などの音楽的なソースになってくると、より両機種の違いが感じられるようになりました。C414 XLIIで録った歌は、きらびやかで音楽的に今っぽさが感じられる録り音です。一方でC314は思っていたよりもまろやかで、より腰が低くてビンテージ風という印象を受けました。ギター・アンプやコンガのレコーディングでも同じ印象でしたね。
普段ギター・アンプを録るときはC414 XLIIにダイナミック・マイクとリボン・マイクをブレンドしていて、シャープさが欲しいときはC414 XLIIを上げるなどして調整しています。そこで丸みを加える役割としてのリボン・マイクの代わりに、C314を立ててもいけるのでは?と思えるくらいには違いを感じました。
何にでも対応できるC414 XLII
基本的にプロ・ユースのスタジオでボーカル・レコーディングを行う際は、真空管マイクを使うことが多いです。ただ、今は宅録で録った仮歌が良くて本チャンで使うケースもあるし、そのときにC414 XLIIかC314で録っているなら全然問題ないかなと。後で処理するときに“どうしよう、これ……”みたいになっていないだろうという信頼感がある。自分の声に合うほうを選べばよいと思います。
C414 XLIIは本当に何にでも対応できるマイクなので、“どれか1本持つとしたら?”と質問されたら、迷わずお薦めします。今回あらためて、大音量のギター・アンプや、コンガではほかのパートと良い混ざり具合で録音できたりと、万能さを実感しました。9種類の指向性切り替え、6dBずつのPAD、4段階のローカットも便利で、レコーディングではどこかしらに使っていることが多いです。
C314はまだ知らないエンジニアが多いかもしれないけど、もっと名前が聞こえてきてもいいと思います。例えばコンガなら、胴鳴りを太く捉えられたので、ソロで聴かせたい場面などで存在感を出せそうです。指向性切り替えは4種類ですが、それだけあれば十分ですしね。あとは、もし価格的にC414 XLIIをステレオでそろえるのが厳しいなら、C314×2本という選択肢もありではないでしょうか。