楽器への取り付けを前提としたAudio-Technicaの最新マイクATM355VFを、実際の生楽器でチェック!
ATM355VF
ATM355VFは、最大音圧148.5dB SPLを誇るバックエレクトレット方式の小型コンデンサー・マイク。通常はカーディオイドだが、オプションで全指向やハイパーカーディオイドに切り替えることもできる。
80Hzでのローカットを備えたパワーモジュール AT8543付きのワイヤード・モデルATM355VF(市場予想価格76,230円前後)と、ワイヤレスcHコネクター仕様のATM355VFcH(市場予想価格:64,130円前後)がラインナップ。
“VF”の名の通り、バイオリンとフルート専用のマイク・マウントが付属する。また、同梱のジョイントアダプタAT8493を介することで、アコースティック・ギターやドラムなどさまざまな楽器にマウントすることも可能となっている。
ATM355VFレビュー
楽器にクリップできる “普通のコンデンサー・マイク”。リズムの入った編成に最適です
レビュアー:Nagie
レコーディング・エンジニア/プログラマー/作編曲家。aikamachi+nagie、ANANT-GARDE EYESとしても活躍している。Vocaloid『IA-ARIA ON THE PLANETES』の開発や、現代音楽のライブ・エレクトロニクスなど、その活動範囲は多岐にわたる
安定した音を生むカプセルとグースネック
若手作曲家が中心となったアンサンブル団体、Ensemble Marblingの公演を収録しましたので、そのリハーサルで演奏家の協力を得てATM355VFを試用してみました。
私がライブ・エレクトロニクスの仕込みでよく使うのは、ダイアフラムが小さなラベリア・マイクやクリップ・マイクです。ライブ・エレクトロニクスの場合はサウンドを加工する前提なので、音質はそこまで重視していないということもありますが、それらと比べるとATM355VFは、普通のペンシル型コンデンサー・マイクと遜色のないサウンドで収録できる点に驚きました。
その分、従来のラベリア・マイクやクリップ・マイクと比べると、ATM355VFはステージでの存在感が大きいと感じます。とはいえ、ペンシル型コンデンサー・マイク+スタンドに比べたら目立つことはありませんし、ステージ上で動くことを想定する場合にも対応できます。テストに協力してくれた奏者に聞いてみたところ、ATM355VFが演奏の邪魔になることはなかったそうです。
また、ラベリア・マイクやクリップ・マイクでは、例えばバイオリン属の楽器の場合はブリッジやサウンドホールに仕込むような形になりますが、ATM355VFの場合はある程度発音点から距離を取ることができ、それが音質にもつながっていると思います。グースネックも安定していて、楽器を動かしてもマイク・カプセルの位置が動くことはありませんでした。
バイオリンやフルート以外にも使える
クリップ・マイクやラベリア・マイクの場合は、ある程度レンジを制限していますが、ATM355VFの場合はフルレンジで集音できるため、フルートはキー・タッチの音が低音としてマイクに乗ってきました。これにはローカットを入れるなどの対策をするのがよいと思います。
フルート用マウントのAT8491Fは汎用性が高く、今回チェロの譜面台に取り付けて収音してみましたが、これもレンジが広く弦が生々しいサウンドで録音できました。
筆者の仕事のフィールドとは異なりますが、こうした特性を考えると、リズム・セクションとアクリル・パーティションで仕切った弦カルテットがいるようなステージで、弦一人一人にATM355VFを取り付けてもらうと、ドラムや電気楽器に負けないような生き生きとしたストリングスが表現できるのではないかと思います。
撮影用楽器協力:黒澤楽器店
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