MOTU M2、M4、M6 〜初心者にオススメのオーディオインターフェース

motu m2/m4/m6

 サンレコWeb編集部がおすすめする、初心者が買って間違いのないオーディオインターフェース。今回はMOTU MシリーズのM2、M4、M6をピックアップします。

Digital Performerだけじゃない!MOTUの実力

 MOTU(モツ)はDAWソフト、Digital Performerでも知られているアメリカのブランド。ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)を抱える先進技術の街、マサチューセッツ州ケンブリッジで1981年に創業。最も有名な製品はDAWソフトのDigital Performerで、40年にわたってコンピューターと音楽制作の架け橋として、先進的な製品をリリースしてきました。ちなみにブランド名は旧社名Mark of The Unicornの頭文字を取ったものです。

 MOTUは1990年代末からオーディオインターフェースも手掛けており、大規模なスタジオやアミューズメント施設、クリエイターのプライベートスタジオなど、シーンに合わせた製品を多数リリースしてきました。現在も828やUltraLiteシリーズなど多彩なラインナップを備える中、パーソナル向けに開発されたのが今回紹介するMシリーズです。

数十万円クラスのプロ機と同等のESS Sabre32 Ultra DACを採用

 Mシリーズの最大の特徴は、数十万円クラスのオーディオインターフェースで使用されているESS Sabre32 Ultra DACを採用していること。この高品質DACを惜しみなく採用することで、スタジオ環境と遜色のない音質を確保しています。これにより、120 dBのダイナミックレンジを持つ高解像度の音声出力が可能です。

 また、Mシリーズは−129 dBu EINという超低ノイズ性能を実現。クリアでひずみの少ない音声入力が行えます。さらにクラス最速のレイテンシーを実現し、リアルタイムでの音声モニタリングや録音に最適とのこと。Mac/Windows/iOSに対応し、ループバック機能も備えています。

MOTU Performer LiteとAbleton Live Liteが付属

 Mシリーズを購入すると、同社のPerformer LiteとAbleton Live Liteという2つのDAWのライセンスが無償提供されます。

 Performer Liteは、同社Digital Performerの機能制限版。主な特徴として、16トラックまでの録音・編集が可能で、チャンク機能やV-Rack機能といったDigital Performerの核心的な機能を継承しています。また、クリップウィンドウ、ZynaptiqTM ZTX PROTMストレッチオーディオ機能、コンテンツブラウザなどの最新機能も搭載。高品質なエフェクトや100種類以上の楽器を含むバーチャルインストゥルメントが付属しています。

motu performer lite

MOTU Performer Liteのプロジェクト画面

 一方のAbleton Live LiteはAbleton Liveの機能制限版。フル版のワークフロー、インストゥルメント、エフェクト、録音など基本的な機能を提供します。直感的なインターフェースと使いやすさが特徴で、ユーザーはMOTU Mシリーズのオーディオインターフェースを購入後すぐに音楽制作をスタートすることが可能です。

Ableton Live Lite

Ableton Live Liteのプロジェクト画面

Performer Liteに含まれるバーチャルインストゥルメンツは100種類超え

motu performer lite VSTs

Performer Liteに含まれるバーチャルインストゥルメンツ

 MOTU Mシリーズ=M2、M4、M6に付属するPerformer Liteは、豊富なバーチャルインストゥルメントを提供。ピアノ、ギター、ドラム、シンセサイザー、オーケストラ楽器など、100種類を超える楽器の音色を収録しています。

6GBのサンプルパックを無償提供

 さらにM2、M4のオーナーは、Big Fish Audio、Lucidsamples、Loopmastersといった主要サンプルコンテンツ・プロバイダーのサンプルパック(6GB程度)を無償で入手することが可能。これらのサンプルパックは幅広い音楽ジャンルを網羅しており、ユーザーはDAWプロジェクト画面にドラッグ&ドロップするだけで楽曲制作を容易に開始することができます。

 Big Fish Audioは、1986年からサンプルライブラリーを制作しているアメリカのメーカー。同社のサンプルは、何百ものチャートイン楽曲や映画のサウンドトラックで使用されています。またLucidsamplesは、EDMやトランス音楽に強いサンプルパックを提供することで周知されています。イギリスを拠点とするLoopmastersは、サンプルパック・メーカーおよびオンライン販売プラットフォーム。自社製品だけでなく、100社近くの他メーカーのサンプルパックも取り扱っています。

左からBig Fish Audio、Lucidsamples、Loopmasters

★MOTU Mシリーズ付属ソフトの内容

  • MOTU Performer Lite(DAW)バーチャルインストゥルメント100種以上を収録
  • Ableton Live Lite(DAW)
  • Big Fish Audio、Lucidsamples、Loopmastersなどのサンプルパック6GB

Mシリーズのラインナップ

 Mシリーズのラインナップには、以下の3つが用意されています。

M2

 M2は、2イン/2アウトの入出力を持つエントリーモデルです。コンパクトなサイズ=重量0.61 kg/外径寸法:19.05(W)×4.5(H)×10.8(D)cm ながら、シリーズ共通の高品質コンポーネントを搭載。初めてのオーディオインターフェース購入を検討している初心者や、予算を抑えつつも音質に妥協したくないユーザーにとって、理想的な選択肢となるでしょう。ボーカルからギター/ベースといった楽器の録音のほか、ポッドキャストやゲーム配信などにも最適です。

  • 入力×2系統
  • マイクプリ×2基
  • 出力×2系統
  • ヘッドフォン出力×1系統
  • 35,970円

M4

 M4は、M2の機能を拡張し、4イン/4アウトの入出力を備えるミドルレンジ・モデル。注目すべきは、M2にはないINPUT/MONITOR MIXコントロールノブを搭載している点で、これによりインプットのダイレクトモニターとPC再生音のバランスを調整できます。M4は、バンドの録音や複数人が出演するポッドキャスト/配信など、複数の同時録音に理想的です。

  • 入力×4系統
  • マイクプリ×2基
  • 出力×4系統
  • ヘッドフォン出力×1系統
  • 47,960円

M6

 2022年に登場したMシリーズ最上位モデル=M6は、6イン/4アウトの入出力構成。2セットのモニター出力をボタン一つで切り替えられるA/Bスイッチを備えているのが特徴です。また、独立したボリュームコントロール付きのヘッドフォン出力×2系統を持ち、うち1系統はラインアウト(3-4ソース)に切り替えも可能。さらに、電源アダプターを使えばスタンドアローンでの動作も可能という柔軟性を持っている。

  • 入力×6系統
  • マイクプリ×4基
  • 出力×4系統
  • ヘッドフォン出力×2系統(片方からはラインアウト3-4の信号もモニター可能)
  • 74,800円

MOTU M2/M4/M6 Review by 山木隆一郎 〜プロ仕様の音質を備え、ループバック機能で制作から配信まで幅広く対応できます

【Profile】安室奈美恵や鈴木愛理、東方神起など数多くのアーティストのプロデュース、作曲、アレンジ、リミックスを手掛ける。クラブ/ダンス系を得意とし、近年はジャンルを超えた作品も多数制作。スパム春日井とのユニットRYPPHYPEとしても活動中。

ヘッドフォン出力も妥協なし! Mシリーズの高音質設計

 筆者はM2とM4を発売当初から使用しつづけており、M6の使用経験もある。Mシリーズの音質は解像度がとても高く、低域から高域までしっかりと聴こえる。安価なオーディオインターフェースでよくある“リミッターがかかったような音”に聴こえてしまう感じがこのMシリーズにはない

 さらに、その音質がメイン出力だけでなく、ヘッドフォン出力からも同様の印象を受ける。これはなかなか珍しいのではないだろうか。メイン出力とは別に、ここにもESS Sabre32 Ultra DACが搭載されているため、単体のヘッドフォンアンプを使用したのに匹敵する音質だ。

 マイク入力の音質は、透明感があり“音の抜け感”も良い。とても使いやすい音でレコーディングができるのが特徴。ボーカルレコーディングでもナレーション録りでも、とてもナチュラルな音質である。入力換算雑音(EIN)が−129dBuもあるというのも、すぐにひずんでしまうような安っぽい感じがしないことにつながっている。

 パソコンとの接続はUSB-Cケーブルで行える。USBクラスコンプライアントに対応しているため、WindowsやMac、iOSデバイスなどにつなぐだけですぐに使用できる。専用ドライバーを使用すれば、96kHz/32サンプル時で2.5ms以下という低レイテンシーで動作。さらにループバック機能を用いれば、パソコンの音声(例えばApple MusicやSpotifyなど)とマイクや楽器入力をまとめてOBS Studioなどの配信ソフトに送ることができる。筆者の場合、このループバックをDAWへ送り、DAW内で外部音源と自身の制作した音源を1つのアナライザーで比較できるようにしている。これはミックスやマスタリング時、非常に便利な機能でもある。

 付属するソフトウェアやバーチャルインストゥルメントなどは豊富で、買ったその日から音楽制作を始められる。これは、初心者にとっても魅力だろう。

用途に応じた最適な1台を見つけよう 

 最後にM2、M4、M6のお薦めポイントを紹介しよう。M2は、DAW上のソフト音源しか使わない、または配信者でマイクを2本しか使わないなど“必要最小限でOK”という方にお薦めだ。筆者は出張先のホテルなどスタジオ外で作業をするときや、配信番組に出演するときなどに活用している。頑丈でまったく壊れないところも良い。

 M4は、アウトボードへ音を入力して戻したいなど機材に少し詳しくなってきたが“省スペースを重視したい”という方、電子ピアノやシンセが1台あるという方などにお薦め。筆者はAPPLE Mac miniに接続し、マスター鍵盤にしているシンセをM4のLINE IN(3-4)に入力。Mac miniとシンセの電源を入れたらすぐに音が出るように設定し、思いついたとき、すぐにスケッチができる環境を整えている。

 M6は、単純に入出力が増加しただけのモデルではないのがポイント。ヘッドフォン出力が2系統必要な方、マイクプリが4系統必要なバンドや配信者4名での同時録音をする方にお薦めだ。またM6ではバスパワーではなく電源アダプターを採用したため、M2/M4よりも余裕を感じさせるサウンドとなった。これにより、コンピューターを介さずにスタンドアローンのミキサーとして活用できるのもありがたい。

 上記を参考に、自身の用途に合った最適なモデルを選んでみてはいかがだろうか。

 

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